子豚のワルツ

ビーバー父さん

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侵入者

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キングサイズとは言え、ロゲルとの距離が近い。




「咲季ちゃん、大丈夫
 何もしないから。
 トルクの大事な人に、変な事しないよ。
 それに、このベッドは広いからね」

「ロゲル…」

前に、ロゲルが僕の事を好きだと教えられて、変に意識をしてしまった。
直接ロゲルから好きだとか言われたわけもないのに。

「まぁ、求められたら吝かではないけどねぇ~」

「もう!何って言ってるんですか!」

冗談で変な空気と緊張を払拭しようとしてくれたのが分かって、優しい人だって再認識した。

ふざける様な会話をしていたら、急に真剣な顔をしたロゲルが、来たようだと小さな声で言った。


カチャ

ゆっくりと音を出さないように、扉が開けられた。
内側からの鍵もかかっていたのに開いたって事は、やっぱりホテルぐるみだ。

黒い影が二つそっと動いてきた。

僕が狙いなら直ぐに気付くように、なるべく端に体を動かす。
寝返りをうったようにして、相手の顔を確認すると、いきなり口と鼻を塞がれた。

「っ!ゃ」

少しの抵抗と、少しの声を上げる。
薬が仕込まれているらしく、鼻に付く嫌な匂いがした。
これ、痺れると言うか、弛緩系の薬だ。
少しだけ吸って効いた風に目を閉じた。

すると、僕だけじゃなくロゲルにも鼻と口を塞いで、担ごうとしていた。

「痕跡を遺すなよ
 置いてある物も全てだ!」

あー、そうか、一家なりグループなり、その人に関わりのある物全てを無くして、いなかった事もしくは出て行った事にするのか。
当たり前と言えば当たり前だけど、結構考えてるじゃん。

向こうの扉の開閉音がしたから、シュリもエリュも一緒に運ばれてるんだろう。

「しかし、近くで見ると、更に綺麗だなぁ」

「おい、早くしろ!」

「ソリエス候に渡すの勿体無いなぁ
 味見したくね?」

「バカを言うな!
 首が落ちる!」

こいつ、あの熊男だ。
嗜めてる方は分からないけど。

「くそっ!」

「行くぞ!」

僕は熊男に担がれてる間、あちこちを触られて気持ち悪くて堪らなかった。

「ぐへへ」

我慢、我慢するしか無かった。







荷馬車のような荷台の中で、木箱に詰められて運ばれた。
幸いな事に、四人とも一緒に運ばれているようだった。

かなり道が悪い所を移動しているらしく、かなりの振動で体のいろんな場所が当たって痛んだ。
時折り坂道を使っているらしく、重心が頭の方になったり、足の方になったりしていた。

これは、酔う。
薬の変な匂いに、変な揺れ、船では平気だったのに、この揺れはダメだった。
吐き気との戦いで、声を我慢していたけど一度石に乗り上げた車輪の振動で吐きそうになって、呻き声をあげるとすぐさま、揺れが止まり荷台に男達が入ってくるのが分かった。

「おい、気づいてないか?
 こいつら、殺すか?」

ヤバイ、意識があれば殺されるのだろうか?

益々、緊張で吐き気がする。

意識があるか、爪先で箱を蹴って確かめているようで、僕の箱も揺れた。
もう、だめ。
吐く。

「ぅぇ、っ、う」

「こいつか!」

その瞬間、身動きが出来ない箱の中で、多少吐いてしまった。

「うげっ!
 コイツ!!」

「まさか、薬のせいか?!
 ヤバイ、ヤバイよ!
 ボスが無傷で連れてこいって言ってるのに!
 薬が強すぎたんだ。」

これ、馬車酔いじゃなくて、あの嗅がされた布に使われた弛緩系の薬のせいだったのか。

「治療しないと!
 解毒の魔法が使えるボスの所まで急ぐぞ」

馬車酔いじゃなかったのかぁ。

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