子豚のワルツ

ビーバー父さん

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少し吸ったのがいけなかったのか。

揺れと吐き気でちょっとだけ、意識がボヤけた。







「おい!
 しっかりしろ!」

「ん、」

灯りを目元近くに当てられて、眩しくなる。
声を掛けて来たのが誰なのか分からないまま、手を伸ばしたら、抱き上げられたところで、また、意識がボヤけた。

次の瞬間、体がひりつくくらいの魔力で、何かが押し流された。

「ふぁ」

「よし、間に合ったな。」

「誰?」

「お前が売られた先の、売春宿のオーナーだ。
 覚えておけ。」

意識がはっきりとしたら、目の前にいる男から聞かされた言葉に呆然とした。

「子供達は!?
 ロゲル!」

「プラチナのは、神殿に売られたな
 旦那はどっかの金持ちに。
 もう一人のちっこいのは、こことは別な部屋にいる」

シュリが神殿!
僕が行かなきゃいけないのに!
態と少しだけ吸ったのに、何でだ?

「お前さん、薬とか魔力に弱いんだなぁ。
 もう少し遅かったら、体のどっかに麻痺がのこったかもな。」

そう言われて、手足を動かしてみると、まだ、あまり力が入らなかったが、問題なく動かせた。
弛緩系の薬は抜けたみたいで、徐々に感覚が戻り始めた。

「エリュは?
 エストゥールに会わせて!」

「そう焦んなよ、まずはお前を仕込んで
 ある人に渡すように言われてんだ。」

「仕込むって…
 何でこんな」

「諦めろ、可哀想だけどな。
 お前さん、綺麗すぎたんだよ。
 この国のやたら偉い人が目を付けちまったんだ、逃げられない。
 少しでも良い暮らしをさせて貰えるように、誑しこめるように、俺も仕込んでやるからよ。
 まあ、おれにとっちゃ、役得だ。」

「ふざけるな!
 やたら偉い奴って、まさか王族?」

「そ、名前は言えないけどな。
 だから、諦めろ。
 王族以上に偉い奴はいねぇ。
 それこそ、神様くらいだ。」

話してる間に、体の自由を取り戻せた。

「嫌だ!」

「そんな事言ってると、こっちは薬漬けにしてでも、言う事を聞かせるぞ」

怒気を含んで睨まれた。

「止めて、じゃないと大変な事になるから」

そう、今だってこれはフロウの力で見られてる。

「どんな大変な事になるのか、むしろ楽しみだわ」

ジリジリと後ずさっていたら、どこかわまらないこの部屋の外から、物が壊れる音やら叫び声やらが聞こえた。

バキッ!!

扉が真ん中から真っ二つになっていた。

そこから見えたのは、エリュの小さくて白い足だった。

「母様~?
 無事~?」

どこか能天気な声で、安否確認をされた。

「エリュ、足、大丈夫なの?」

「全然、へーき!
 フロウ兄様が、“行け!"って言うから、暴れて来た~」

うふふって笑う。
エリュって、こんな強かったのか…。

「なんだ、チビッ子?」

「チビッ子って言って良いのは兄様たちと母様だけ!
 お前嫌い!」

「へぇ~いい面構えだな。
 俺はタナトス、今からお前の母ちゃんを犯してやるから、そこで見とけ。
 無様な自分の無力さに嘆いて諦めろ」

そう言うと、オーナーのタナトスは、エリュの体を魔法で拘束した。

「エリュ!!」

「おっと、アンタはこっち。
 薬にも魔力にも弱かったみたいだしな。
 この薬なら、アンタも楽しめるさ」

タナトスは僕の両腕を掴んで一纏めにすると、薬瓶を無理矢理口に入れて来た。

「ぐぅ、ゥえ、ゴホ」

飲み込まないように必死で抵抗した。

「母様!!!
 だめぇ!!!」

飲み込んでしまった瞬間、どくん!と心臓が跳ねた。

「あぁぁあぁ!!」

心臓が何倍もの速さで鼓動を刻む。
体中の血が巡って、身体の内側から熱を発した。

「熱い、熱いよぉ」

「この薬はな、どんな奴でも淫乱にしてしまう薬さ。
 アンタ、かなり薬に弱いみたいだから、相当楽しめるぞ。
 まぁ、その前に頭がぶっ壊れるかもな」

ガクガクと震えて体に力が入らなくなった。

「い、や、」

「母様、ピアス!!」

そうだ、ピアスを!
外そうとしても指が震えてうまくいかない。

「何だぁ? 
 そのピアスに何か仕掛けがあるのか?」

震える手では間に合わない。
タナトスの手が、僕のピアスを取り上げようと手を伸ばして来た。

「やめ!」

手段は選んでいられない、僕は指先のピアスを留め具を外せないまま、耳たぶごと引き千切った。




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