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獣人コスプレ
しおりを挟む初めての城下町は楽しい半分、怖い半分だった。
獣人が浸透してる国だとしても、こんなに堂々と獣人として闊歩してる人は当然いなくて好奇の視線を集めていた。
しかも尻尾が三本も有るんだ。
どうしよう。 軽率だった。 アスと一緒ならきっと楽しいし大丈夫だと思ったんだ。
どんどん心が萎んで行くのが分かった。
可愛く堂々と歩こうと思っても、見つめる先は数歩先の地面で、自分が目指したものと現実に見られてる事の意味の違いに落胆した。
「その上、浮気されてるし。
は、はは、滑稽だ。
サイアス小公爵様ってちゃんと呼ばないと、新しい人に疑われちゃうな」
まだ僕たちはお試しのお付き合いから恋人のお付き合いを始めたばかりなんだから、まだ大丈夫。
引き返せる。
これ以上、心を……、動かしたくない。
忘れる、とそう決めた。
なら、この国でどうやって生きるのか。
せっかく仕事を得たのに、こんな色恋沙汰で失ってたまるか!
平民として生きて行くしかないのに、宰相の観光事業の下請でも出来るなら、きっと暮らしていける。
いや、暮らしていかなきゃいけないんだ。
そうと決めたら、メソメソしてる場合じゃない。
いじめられっ子のイリエラ・ザンダースじゃない!
僕はコスプレイヤーのシーナなんだから!
昔いた性別不明のモデル、ニーナに憧れてメイクを始めたから、シーナってSNSでも名乗ってたし。
素顔を晒して引退した時も綺麗で、泣いた。
いじめられていたとか聞いた時には、悔しくて涙が出た。
だから、ニーナみたいにメイクをしようって思ったんだ。
好奇の目を向けるなら、どんどん見てくれればいい。
透明な扱いをされるより、余程マシだ。
そう思ったら、顔をしっかり上げて周りを見た。
視線は思った程、好奇では無かった。
美味しそうな屋台で串焼きを売っていたり、可愛い雑貨が売っていたりした。
でもカフェみたいなお店は無くて、イートイン出来るお菓子屋さんは庶民には少し高価な値段設定だった。
「お菓子って意外と高いんだな。
砂糖だってそんなに高価じゃないのに、何でだろう?」
並べられたお菓子は飴の様な物に、クッキーの見た目の物、そしてバカ高いのはバタークリームの様な物で作られたケーキだった。
日持ちがしないから生菓子は全てバタークリームを使用しているみたいだし、高いからわざわざイートインなんかしない。
飴やクッキーなら持ち帰って食べる。
生クリームや卵が貴重なものだったんだ。
例え生クリームがあったとしても、使い方は違うかもしれないし、カフェをやるならもっと下準備が必要だと痛感した。
それなら、利用できるものは全て利用してやらなきゃ!
目標が決まると心も強くなれた。
「そこのお姉さん、獣人なのかい?」
果物を売ってるや台の女性が声を掛けて来た。
「こんにちは。
獣人では無いんですが、こういう雑貨や衣装をこれから扱うお店を出そうと思ってるので、着てみてるんですよ」
「へぇ、変わってるねぇ。
それに随分綺麗だから、高そうだ。
あたしらには縁が無いけど、見てる分にはいいねぇ。
それにアンタ可愛いもんね」
興味はあっても着ていく場所も、お金も無いってなると城下でコスプレの衣装を売るのはまず無理だと思った。
だから、元々観光客相手のレンタルショップにするつもりだった。
「これは、観光の方々に英雄の初代国王様の恩恵を受けた、獣人になってみたいと言う方へ貸し出すんです。
初代国王は虎だったと聞いているので、そちらも準備しています」
上から下まで見て、観光客事業が始まるのかい、と少し期待という希望を表情に見せた。
ドラニスタ―国は交流はあるが、情報が少なく観光事業も今までは無かった。
だが王妃を他国から迎えた事で、外国人を受け入れやすいと諸外国も踏んでいる、そう宰相から聞かされていた。
開国と言うと大げさだけど、観光事業は国益の為にも成功させたいと思った。
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