その瞳の先

sherry

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とても目覚めの悪い夢だった。

あの事件のあと、亜蓮は母方の遠縁の親戚に預けられた。
主犯の叔父と伯母は捕まりその後姿をくらました。
今でもあの時の亜蓮の瞳と伯母の声が忘れられない。
湊斗は事件後一部の記憶を失くしていた。

そして俺は今日も湊斗に電話する。

「湊斗~そろそろ起きてくれませんかね~?」

「おはよう零。湊斗は今シャワーしてるよ。」

「亜蓮・・・そう分かった」

電話を切って呆然とする。2人はあの後ずっと一緒にいたのだろうか?
俺は今だ携帯を握ったままその場でただ立ち尽くしていた。

俺と湊斗は高等部に入った頃付き合い始めた。
お互いが何かを埋め合うように体を重ねた。

好きだと言った時湊斗はとても驚いていたけど、俺もと言われたときとても幸せだった。
2人でゆっくりする時間が心地よかった。亜蓮を忘れた訳ではない。ただ亜蓮が居なくなってから2人が当たり前で、そして今亜蓮が帰って来たことでこの関係は終わりを迎えるのだろうか?
亜蓮の事はもちろん大事だ。俺が居なければあんなことは起こらなかった。
だから守らなければ、そして湊斗も・・・もう傷付いて欲しくない。

俺は気持ちを切り替え食堂へ向かった。
そして少しの違和感を感じながら学園へと足を踏み入れた。


その日の昼食、俺は亜蓮を探していた。
教室に行けばもう食堂へ行ったと言われ、急いで食堂へ
しかしそこに亜蓮は居らず、もしかしてと湊斗に電話をかけた。

「もしもし?湊斗?今亜蓮と一緒?」

「ああ、今一緒に飯食ってる。お前が来ないと言っていたが、何してる?」

「えっ?授業終わって亜蓮の教室に行ったんだけど、もう食堂に行ったって言われたから食堂に来たんだけど居なくて、昨日湊斗がまた生徒会室においでって言ってたからもしかしてと思って電話したんだけど、一緒にいるならいいかな」

「はぁ?お前ちょっと無責任じゃないか?自分で誘っといて来ないとか」

何故湊斗にそこまで言われなくてはいけないんだろう
授業終わってすぐ迎えに行ったのに。行ったと言われたから探していたのに。

「ごめん。亜蓮の番号聞き忘れて連絡出来なかった。悪いけど湊斗から亜蓮に番号教えといて」

「はぁ~分かった」

そこで通話は切れた。電話の向こうではとても楽しそうに笑う亜蓮の声と生徒会室にいるのであろう役員達の声が聞こえた。

「零から?」

「ああ、食堂に居るらしい。亜蓮に番号教えといてだと」

「そっか。零やっぱり僕のこと嫌いになったのかな」

「そんなことはない。あいつのことは気にするな。これからは俺がいる」

「ありがとー!湊斗大好き!」

そんな会話が生徒会室で起こっているなんて知るよしもない。

「零とりあえず湊斗は返してもらうね」

「亜蓮どうした?」

「ううん!何でもない」

こうして零と湊斗には見えない溝が深まっていく。
その頃食堂ではいつも会長といるのに1人で食事する零の姿があった。

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