不思議なユリが光った時

プロローグ

　晴天に恵まれたこの日、僕は土手に寝転がっていた。土手の上の片道を、息を切らしながらランニングするお兄さん。犬を連れて散歩する中年おばさん。手を繋ぎながら楽しそうに歩いている親子。ボロボロの学生鞄を片手に、話に盛り上がってる男子学生たちと、たくさんの人たちが、この道をよく通る。
　対して、周りは静かで、優しい風が自分の体を包み込みながら吹き通り、近くにある桜の木がその風によって少し揺れ、桜の花びらが空中に舞い上がっていく。たまに電車の音が聞こえるが、それがまた心地よく感じる。そんな土手とは違って、上は人混みが多いから、少しうるさく感じだ。また風がそよいだと同時に、少しため息をする。
　ふと僕はすぐ横に一輪の花を見つけた。ユリの花だった。何故こんな場所に、しかも一輪だけ生えているのか不思議に思ったが、それと同時に、『あの時』の事を思い出す。僕はそのユリを手に取り、匂いを鼻に寄せてから呟いた。
　「………最近つまらないな。」と。
いつもなら、すぐに家に帰るところだが、今日は『僕ら』にとって特別な日だ。だから僕は起き上がり、ユリの花を手にし、ゆったりとした足取りで、『ある場所』へと歩いていった。