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海無し国の海の幸
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滴る血液を他所に液体だか影だか分からない物質は逆流をするようにアリスの左腕に集約していびつな左腕の形をなした。袖が無くなり見える箇所からまるで黒い炎が手の形を成しているようである。
パトリック・ギルガルドだったものも顔の破片を残し辛うじて判別できる有様であった。
この部屋で形を保っているのはアリスとジャックを残し、玉座の横にアリスの影の中から現れた瑠璃色の球体のみである。
「部下に恵まれなかったようだな、そこの塔主様は。まさか主人を守らず、自分の命を優先するような薄情な部下とは」
アリスの問いに、滑らか球体を成していた水は一瞬にして形を戻し床に散らした。
その球体の中から現れたのは動く椅子に腰かけたままのアリス をここまで連れてきた老人であった。
球体の水が崩れるとの同時に水の壁として部屋を作っていた水も止まり辺りが静寂に包まれる。
「そのような老いぼれとなってもまだ、命が惜しいとは」
「所詮、そのものなどギルガルドの性を色あせさせぬだけの傀儡に過ぎんよ」
「ほう、一介の魔術師が言うではないか……ん、もしや貴様、食ったのだな? 『人魚の心臓』を」
ローブから覗くやせ細った手は変化が分かる、魔術を行使した老人の体を這う血管が全て青白く発光していた。
「そこまでお見通しというわけだ、悪魔というものは厄介なものだな」
「その蔑称は好かんな、善悪など立場が決めることだ。それにな、貴様はそれでもまだ人間のつもりか?」
老人に明らかに敵 意を飛ばすアリスは状況が呑み込めずぽつんと立ち尽くすジャックに視線を送る。
「ジャックを喜べ、貴様の元ご主人様でありこの国の民に愛され敬われる絵本の英雄様! エドワード・ギルガルド本人様だっ! 多分な」
「は…?」
アリスは大仰に紹介するように指示し侮蔑を込めた笑みをした。
「なんだ、まだ状況が呑み込めんのか? かつての英雄様は水魔力の源である『人魚の心臓』を利用し無様にも延命措置を行って現在まで生きながらえていらっしゃるのだ」
「如何にも、私はエドワード・ギルガルド。財も力も生も全てを手中に収める男。志半ばで死ぬわけにはいかんのだよ」
エドワード・ギルガルドがそう言い終わらずして血管の発光が強くなる。それとほぼ同時に空 気中から複数の水の円盤が発生しアリスに襲い掛かった。
アリスはそれを地面を蹴って躱し、一枚は背中から延びる羽のような影で弾いた。
「ジャック、下がっていろ。ここからは魔ノ者の領分だ。秘密を知ったからにはどの道、復業は出来なさそうだぞ。まぁ、向こうに着くのであれば止めはせんが私が与えた命だ、無駄にすることはないだろう」
「小僧が、ギルガルドの恩義を忘れたとは言うまい。素性の知れないそなた等のような者が平穏な生活を送れてこれたことをな。暗殺集団の一員として恥じぬ戦いをせよ」
ジャックは両者の言い分は分かる。しかし、ジャックはため息を付いて答えた。
「僕は平穏に生きることを信条にしている。僕はどちらにも付かないず事の顛末を個々 で見届けよう」
ジャックは一歩下がり、ただ立ち、選ばなかった。
「クシシッ、どっちにも付かず生き残った方に付くだと? そういう利己的な選択嫌いではないぞ、私はな」
「恩義を忘れる愚か者め、国に生をかけられぬ者など必要無い」
先ほどのと同様の水の円盤がジャックに飛ぶ。
しかし、それは影によって叩き落されてしまった。
「せっかく観客がいるのだ、楽しまなければ損だろう?」
「知らぬな、ならば共に死ぬがよい」
今度は紐のような水流がアリスに複数襲い掛かる。
アリスもそれを避けるが水流は方向を瞬時に変えアリスを追尾しした。
それを見てアリスの左翼はその水流を纏めて弾く。それと同時に右翼を拳のような形に変化させギルガル ドに向けて放った。
しかし、ギルガルドの椅子は発生させた水圧により瞬時に空中に浮遊し逃れる。
その時外れたフードからは青い血管が走り、目を青く充血させた顔が現れた。
「ッチ、詠唱も無しに魔術を行使できるのがこんなに厄介とは。ますます、人間じゃないな」
弾かれていた水流は方向を即座に戻し、アリスの右足を貫いた。
「ほう、そっちからは赤い血が流れるのだな」
アリスは抉り取られた右足を抑え転がって第二撃を躱す。
「不本意ながらなっ。私もこの血液が影で出来ていればと何度思っこと」
悪態を付きながらアリスは何を思ったか左翼と右翼を部屋の窓から飛び出るように大きく伸ばした。
「遅い」
ギルガルドは迷わずアリスの 心臓を狙い水流で突き刺す。アリスの左胸部に風穴が空いた。
「そこは外れだ」
貫通した箇所からは微かに黒い靄のようなものが散っていた。
と、同時に部屋の高さ部屋の半分を覆うほどの黒い巨人の両椀が轟音を立て左右から押しつぶした。
「はっ! 捉えたぞ。蠅みたいにちょこまかするのはこの手に限るな」
ギリギリと力を強めつつ腕の形をした影の翼の間にはぽつんと先ほどの水球が挟まっていた。
「我が名はアリス・ノックターン。かつてこの世を支配したノックターンの末裔である」
押しつぶす力を強めつつ声高らかに言う。
「まぁ、水球の中では聞こえないか」
アリスがそう呟き終わるとのほぼ同時に「ぱん」っと軽い音を立て水球は不純物を混ぜ飛び散っていた。
パトリック・ギルガルドだったものも顔の破片を残し辛うじて判別できる有様であった。
この部屋で形を保っているのはアリスとジャックを残し、玉座の横にアリスの影の中から現れた瑠璃色の球体のみである。
「部下に恵まれなかったようだな、そこの塔主様は。まさか主人を守らず、自分の命を優先するような薄情な部下とは」
アリスの問いに、滑らか球体を成していた水は一瞬にして形を戻し床に散らした。
その球体の中から現れたのは動く椅子に腰かけたままのアリス をここまで連れてきた老人であった。
球体の水が崩れるとの同時に水の壁として部屋を作っていた水も止まり辺りが静寂に包まれる。
「そのような老いぼれとなってもまだ、命が惜しいとは」
「所詮、そのものなどギルガルドの性を色あせさせぬだけの傀儡に過ぎんよ」
「ほう、一介の魔術師が言うではないか……ん、もしや貴様、食ったのだな? 『人魚の心臓』を」
ローブから覗くやせ細った手は変化が分かる、魔術を行使した老人の体を這う血管が全て青白く発光していた。
「そこまでお見通しというわけだ、悪魔というものは厄介なものだな」
「その蔑称は好かんな、善悪など立場が決めることだ。それにな、貴様はそれでもまだ人間のつもりか?」
老人に明らかに敵 意を飛ばすアリスは状況が呑み込めずぽつんと立ち尽くすジャックに視線を送る。
「ジャックを喜べ、貴様の元ご主人様でありこの国の民に愛され敬われる絵本の英雄様! エドワード・ギルガルド本人様だっ! 多分な」
「は…?」
アリスは大仰に紹介するように指示し侮蔑を込めた笑みをした。
「なんだ、まだ状況が呑み込めんのか? かつての英雄様は水魔力の源である『人魚の心臓』を利用し無様にも延命措置を行って現在まで生きながらえていらっしゃるのだ」
「如何にも、私はエドワード・ギルガルド。財も力も生も全てを手中に収める男。志半ばで死ぬわけにはいかんのだよ」
エドワード・ギルガルドがそう言い終わらずして血管の発光が強くなる。それとほぼ同時に空 気中から複数の水の円盤が発生しアリスに襲い掛かった。
アリスはそれを地面を蹴って躱し、一枚は背中から延びる羽のような影で弾いた。
「ジャック、下がっていろ。ここからは魔ノ者の領分だ。秘密を知ったからにはどの道、復業は出来なさそうだぞ。まぁ、向こうに着くのであれば止めはせんが私が与えた命だ、無駄にすることはないだろう」
「小僧が、ギルガルドの恩義を忘れたとは言うまい。素性の知れないそなた等のような者が平穏な生活を送れてこれたことをな。暗殺集団の一員として恥じぬ戦いをせよ」
ジャックは両者の言い分は分かる。しかし、ジャックはため息を付いて答えた。
「僕は平穏に生きることを信条にしている。僕はどちらにも付かないず事の顛末を個々 で見届けよう」
ジャックは一歩下がり、ただ立ち、選ばなかった。
「クシシッ、どっちにも付かず生き残った方に付くだと? そういう利己的な選択嫌いではないぞ、私はな」
「恩義を忘れる愚か者め、国に生をかけられぬ者など必要無い」
先ほどのと同様の水の円盤がジャックに飛ぶ。
しかし、それは影によって叩き落されてしまった。
「せっかく観客がいるのだ、楽しまなければ損だろう?」
「知らぬな、ならば共に死ぬがよい」
今度は紐のような水流がアリスに複数襲い掛かる。
アリスもそれを避けるが水流は方向を瞬時に変えアリスを追尾しした。
それを見てアリスの左翼はその水流を纏めて弾く。それと同時に右翼を拳のような形に変化させギルガル ドに向けて放った。
しかし、ギルガルドの椅子は発生させた水圧により瞬時に空中に浮遊し逃れる。
その時外れたフードからは青い血管が走り、目を青く充血させた顔が現れた。
「ッチ、詠唱も無しに魔術を行使できるのがこんなに厄介とは。ますます、人間じゃないな」
弾かれていた水流は方向を即座に戻し、アリスの右足を貫いた。
「ほう、そっちからは赤い血が流れるのだな」
アリスは抉り取られた右足を抑え転がって第二撃を躱す。
「不本意ながらなっ。私もこの血液が影で出来ていればと何度思っこと」
悪態を付きながらアリスは何を思ったか左翼と右翼を部屋の窓から飛び出るように大きく伸ばした。
「遅い」
ギルガルドは迷わずアリスの 心臓を狙い水流で突き刺す。アリスの左胸部に風穴が空いた。
「そこは外れだ」
貫通した箇所からは微かに黒い靄のようなものが散っていた。
と、同時に部屋の高さ部屋の半分を覆うほどの黒い巨人の両椀が轟音を立て左右から押しつぶした。
「はっ! 捉えたぞ。蠅みたいにちょこまかするのはこの手に限るな」
ギリギリと力を強めつつ腕の形をした影の翼の間にはぽつんと先ほどの水球が挟まっていた。
「我が名はアリス・ノックターン。かつてこの世を支配したノックターンの末裔である」
押しつぶす力を強めつつ声高らかに言う。
「まぁ、水球の中では聞こえないか」
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