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海無し国の海の幸
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「ああ! せっかくの食事が不味くなる!」
最初に沈黙を破り、声をあげたのはアリスであった。
ジャックは変わらず、慣れていると言わんばかりに涼しい顔で食事を取っている。
「まぁ、私のことばかり話してもしょうがないな。貴様の話を教えろ! そうだあれだ、魔物に恩があるとか言っていたが何があったのだ? それくらいなら話してくれても良いだろう?」
アリスはフォークから奪い取った肉を噛みしだきながら言った。
「そうだね、もしかしたら君なら何か知ってるかもしれないからね」
ジャックは少し考えた後に静かに言った。
「実は僕はこの国の生まれじゃないんだ。ここからそう離れていない小さな村、そこが僕の故郷でね。森のなかにある静かでいい村だったよ。それがある日、その村で禁忌を研究してる魔術師がいたらしくそれが聖都の教皇の耳に入り粛正を受けてしまったんだ」
食事に手を動かしたままであったがアリスは考え込むように黙って聞いていた。それは、過去の記憶と話の内容に合致するものがあるかしきりに探しているのだろう。
「村丸ごとの粛正だよ。大人数の聖騎士が送り込まれてきてね、男だけでなく女子供構わず皆殺しさ。中には殺す前に慰みものにされる人もいた。僕は物心ついたばかりの歳で、もちろん対抗する術なんてなかったよ。出来たのは必死で逃げ回り隠れることだけ」
ジャックはまるで見ていただけのように淡々と語る。
隠れながら色々な光景を見たよ。
あまり思い出したくないけどね。
そして、村に火が放たれていよいよ終わりかと思ったときに聖騎士とは違う黒い鎧の騎士が現れたんだ。
その騎士は次々と襲い掛かる聖騎士を切り捨てたんだ。
一振り、一振り確実に急所を狙い、命を奪う剣技は見事だったよ。
僕は逃げるのを忘れてその光景に釘図けになってしまったんだ。
今まで敵だったものがあっささりと倒される、子供心に救世主に見えてしまったんだろうね。
その騎士は辺りの聖騎士を全て殺すと僕に気が付いたようでこちらに近づいてきたんだ。
僕はハッとしたけどもうそれ以上逃げる気力も無くなっていた。それに、この人に殺されて家族の所に行ってもいいかなとかも思っていた。
なんでだろうね、『彼女』が『悲しげに』見えたんだ。顔も体も全て甲冑で覆っているのに彼女って印象を受けたんだ。
その後の彼女の行動のせいかもしれないね、彼女は立ち呆ける僕の前にしゃがみこむと僕を抱き寄せたんだ。甲冑の冷たさしか伝わって来なかったけど小刻みに震える甲冑はまるで謝っているような気がした。
少しの時間立つと彼女は僕を離し、座ったまま指で逃げ道を教えてくれた。言葉は甲冑に反響するうなり声でしかなかったけど多分そのような内容だったのだろうね。
僕はひたすら彼女に教えてもらった道を歩き続けてこの国にたどり着いたってわけさ。
ジャックは話終えると一息ついて水を口に含んだ。
最初に沈黙を破り、声をあげたのはアリスであった。
ジャックは変わらず、慣れていると言わんばかりに涼しい顔で食事を取っている。
「まぁ、私のことばかり話してもしょうがないな。貴様の話を教えろ! そうだあれだ、魔物に恩があるとか言っていたが何があったのだ? それくらいなら話してくれても良いだろう?」
アリスはフォークから奪い取った肉を噛みしだきながら言った。
「そうだね、もしかしたら君なら何か知ってるかもしれないからね」
ジャックは少し考えた後に静かに言った。
「実は僕はこの国の生まれじゃないんだ。ここからそう離れていない小さな村、そこが僕の故郷でね。森のなかにある静かでいい村だったよ。それがある日、その村で禁忌を研究してる魔術師がいたらしくそれが聖都の教皇の耳に入り粛正を受けてしまったんだ」
食事に手を動かしたままであったがアリスは考え込むように黙って聞いていた。それは、過去の記憶と話の内容に合致するものがあるかしきりに探しているのだろう。
「村丸ごとの粛正だよ。大人数の聖騎士が送り込まれてきてね、男だけでなく女子供構わず皆殺しさ。中には殺す前に慰みものにされる人もいた。僕は物心ついたばかりの歳で、もちろん対抗する術なんてなかったよ。出来たのは必死で逃げ回り隠れることだけ」
ジャックはまるで見ていただけのように淡々と語る。
隠れながら色々な光景を見たよ。
あまり思い出したくないけどね。
そして、村に火が放たれていよいよ終わりかと思ったときに聖騎士とは違う黒い鎧の騎士が現れたんだ。
その騎士は次々と襲い掛かる聖騎士を切り捨てたんだ。
一振り、一振り確実に急所を狙い、命を奪う剣技は見事だったよ。
僕は逃げるのを忘れてその光景に釘図けになってしまったんだ。
今まで敵だったものがあっささりと倒される、子供心に救世主に見えてしまったんだろうね。
その騎士は辺りの聖騎士を全て殺すと僕に気が付いたようでこちらに近づいてきたんだ。
僕はハッとしたけどもうそれ以上逃げる気力も無くなっていた。それに、この人に殺されて家族の所に行ってもいいかなとかも思っていた。
なんでだろうね、『彼女』が『悲しげに』見えたんだ。顔も体も全て甲冑で覆っているのに彼女って印象を受けたんだ。
その後の彼女の行動のせいかもしれないね、彼女は立ち呆ける僕の前にしゃがみこむと僕を抱き寄せたんだ。甲冑の冷たさしか伝わって来なかったけど小刻みに震える甲冑はまるで謝っているような気がした。
少しの時間立つと彼女は僕を離し、座ったまま指で逃げ道を教えてくれた。言葉は甲冑に反響するうなり声でしかなかったけど多分そのような内容だったのだろうね。
僕はひたすら彼女に教えてもらった道を歩き続けてこの国にたどり着いたってわけさ。
ジャックは話終えると一息ついて水を口に含んだ。
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