世界を喰らうは誰の夢

水雨杞憂

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海無し国の海の幸

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 アリスは話を聞き終えると食器を静に置いた。
 
「魔族の黒騎士か……。貴様の言うそれと同じものか分からんが我が国家に不敗の騎士団長なるものの噂を聞いたことがある」
「本当かい?」
「ああ、私が国を離れてから頭角を表した奴で詳しいことは分からんがな…。確かにそいつの特徴は黒い女物の甲冑に身を包んだ者らしい。剣の腕もさることながら指揮に関してもなかなかの手腕らしいぞ」
「その人に会うことは出きないのかい?」
「我が国はこの地から遥か遠くの地だ、そもそも人間がそう簡単に謁見できるものでは無いぞ」

 アリスは語りながら料理に添えてあった果実酒を楽しんでいる。
 液体をグラスの中で回し、またゆっくり口に運び続けた。

「それに、残念ながら私はそうそう自由に動ける立場でも無いのでな。騎士団長となると私と言えどホイホイ会えるもんでもないな」
「そうか…」

 ジャックは残念そうに漏らした。

「まぁ、我が国にくれば遠目にくらいなら見られるかもしれん」
「それは無理だね、結局僕はこの国から出ることはないだろうから」
「何故この国に拘る必要がある? 外は良いぞ、好奇心を満たしてくれる。転がっている石さえ飽きることはない」
「何度も言うが、この国が僕のすべてだ。この命を救われてからね」
「酔狂なもんだな。まぁ、人には信条があるからこれ以上は言わんぞ。これ以上、飯を不味くされてはかなわん」

 アリスはそう言って残りの果実酒を一気に飲み干した。

「そう言えば、貴様は酒は飲まんのか?」
「そんなに好きじゃない」
「ガキか貴様は」
「君に言われたくは無いけどね」
「なめられるからなこれでも気にしているのだ、見た目はな。これでも貴様の数倍は生きてるぞ」
「はいはい」
「まぁいい。私は飲み足りないからな付き合え。下町に降りるぞ。そっちのほうが貴様の話より酒の肴として期待できそうだ」

 そう言って綺麗に平らげた食器をまとめ、アリスは席を立った。

「お金払うの僕なんだけどな」

 ジャックはぼやき、ランプを手早くしまうとウェイターに料金を払いアリスの後を追う。
 そう言えばこんなに人と話すのはいつぶりだろうか。いつも、仕事の話か挨拶くらいしか声を出すことをしなかった。
 こんなに賑やかな食事をとるのもいつ以来か思い出せないくらいだ。
 ジャックはそんな事を考えながらアリスの案内の元、次の店に向かった。
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