世界を喰らうは誰の夢

水雨杞憂

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海無し国の海の幸

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耳鳴りのような警告音でジャックは目を覚ました。
 精確な長方形カットされた藍色の魔石は細かく振動し高音の耳障りな音を発している。
 ジャックはそのアラートを魔石を軽く叩き停止させた。
 これはジャックの雇い主からの緊急召集アラートである。時に人の反感も買う職務故に暴動など非常時にそれに対応できる人材を召集する目的で配布されていた。
 しかし、実際に使用されるのは今回が初めてでありジャックは内心驚いている。
 このアラートが使用されるとは一体どんな脅威が発生しているのだろうか。
 ジャックは手早く装備を整えると迅速に家を出た。急いでいて気がつかなかったが、まだ日が出たばかりらしく人通りが少ない。
 なるべく急いでいるはいるもののやはり現場まではもう少し時間がかかってしまうだろうとかんがえつつ、ジャックは国の中央にそびえ立つに急いだ。

 間もなくしてギルガルドの塔に着いた。
 襲撃を受けているかもしれないので少し遠くからひっそりと様子を伺う。
 早朝で建物の周りは人はおらず、かといって荒れている訳でもない。あたりは静まりかえっていた。
 一つしかない入り口はいつもと変わらずにぽっかりと口を開けている。
 出入りするのはちらほら呼び出された同業者が乗り込む姿であった。
 先駆者が潜入しても何も無いことからジャックも注意深く入り口に近づく。
 入り口から入り込むと大きく荒れた様子はないが受付カウンターが砕けて辺りには血溜まりが出来ていた。

 数時間前……
 
 小柄な少女はこの国の中枢に聳え立つ建物の前に立っていた。
「ふむ、なかなか高くて立派な塔じゃないか。足で登るの一苦労だな」
 アリスはそう呟くと塔の入り口に堂々と歩み寄る。
 すると、透明な鉱石でできた扉は人影を感知し勝手に開いた。
 建物の一階ににはだだっ広いロビーが広がっており、ロビーの中央にはポツンとドーナッツ状の受付カウンターがぽつりと構えていた。
 その大理石で囲まれたカウンターの中に一人愛想のよい笑顔をした女性が立っている。
 アリスは憶することなくそのカウンターに近づく。
「いらっしゃいませ、ギルガルド食品流通センターへようこそ。当塔の見学でしょうか?」
「いや、この塔の最高責任者と話がしたい」
「アポイントメントはございますでしょうか?」
「なんだそれは? まぁよい、そのような物は無い。だが緊急な要件だ」
「申し訳ございませんがアポイントメントがないお客様はお通しすることは出来ません。ご了承ください」
 カウンター内の女性は相変わらずの笑顔を崩さずに淡々と答えている。
「私はここより遠くの国からやってきた使者である。もちろん、話を聞いて損はさせんつもりだ」
 アリスのこの一言で女性は堪えきれず、「フフッ」と笑いをこぼした。そして、優しくたしなめる様に言う。
「お嬢さん、ここの人たちは今お仕事中なの。見学ならすぐに取れるから使者さんごっこはそっちでしてね」
「はぁ、やはりこのなりでは不便なことが多いな……」
 アリスはぼやくと頭を掻く。
「仕方ない、このまま平行線よりましか……」
 そう呟くとアリスの背中から二本の影が伸びる。いや、影というよりは黒い霧のような、靄のようなもの。しかし、それはまるで重量があるようにアリスのローブを押しのけていた。
「私は魔の国より使者としてきた者である。貴様らが言う魔人と言うやつだ。貴様が通せぬというのなら実力行使も吝かではないが…、ここは通した方が賢明だと思うぞ。それだけ、我々の要求も譲歩しよう。目的は虐殺などではない、なるべく平和的な侵略だ」
 アリスは耽々と語る。それは先ほどまでの声のトーンとは変わっていなかったが。先ほどとは比べ物にならないほどの威圧を帯びていた。
 受付女性はその殺気を受けながらもカウンターの下に何やら手を伸ばそうとした。
「下手なことを考えるな、貴様は黙って私を通せばそれでよい。そうすればこの場の話は終わりだ」
「……かしこまりました。ギルガルド様におつなぎしますので奥に進んだエレベーターにてお待ちください」
「賢明な判断だ。では、言う通りにさせてもらおう」
 アリスはそう言い残すとカウンターの横を抜け塔の奥に歩みを進めた。
 女性はアリスが通りすぎるのを確認すると再び、カウンターの下に設置してある緊急警報用の魔石を……
 魔石を触ると同時に鈍い音とともにカウンターごとくしゃくしゃとなった。
 黒い塊で、血も飛び散らずじわじわと血が流れ出る。大理石であろうカウンターもゴロゴロとただの破片となった。
「下手なことを考えるなと言っただろうに。利己的なんだよ、私はな。さて、面倒なことをしてくれたものだ。平和的に行きたかったがプラン変更だな」
 アリスは面倒そうに呟くと、エレベータと言うものに歩みを進めた。
 それに近づくとここも勝手に開いた。こちらは、透明な鉱石ではなく水のカーテンのような扉でアリスが近づくと流れ落ちる水の壁が開く。
 その中は上部が開けた四角い小部屋というようなものであった。
「水の魔力で上下する部屋か、なかなか考えたものだ。さて、ギルガルドとやらの居場所は聞けなかったが身分の高い者は高いところを好む習性があるからな。とりあえず、最上階でも目指してみるか。これを押せばよいのだろうか」
 エレベーターの入り口わきにあったボタンの一番上にあるボタンを押す。するとすぐに、この部屋は上に向かって動き出した。
「うむ、これでよかったようだな」
 アリスは満足そうにそう言って頷いた。
 
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