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25 清廉樹祭4
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お祭りは夜まで続く。あちこちで子供楽団の音楽が聞こえる。今日だけは夜更かししてもいい日なので、屋台を楽しみつつ体力が続く限りお小遣い稼ぎに励む子、きりのいいところで終わらせて遊びに行く子、様々である。
「カイ、疲れただろ。何でも好きなもの食べな」
「うん…ずっとニコニコしてるのって疲れるんだね…ほっぺが痛いよ」
と言いつつ僕は顔の筋肉を使うメニューを食べている。パリパリに焼いた焼きそばのようなもの。端っこの焦げた硬いところが美味しい。結局終わったのは夕方近く、街路灯が灯り始めるころ。最後に大泣きした人がいたので、さすがに泣き止むまでは退出できなかったのだ。
アーリー号は『だからモテないんだよ。好きな子の前でくらいかっこよく去れよ。この(ピ──)野郎』と吐き捨てていた。今日のアーリーさんも容赦がなかった。
「ねえオルフェくん、この怖い顔の人たちの写真ってなに?」
「犯罪者写実紙。一番人気はこいつ」
──は、犯罪者ブロマイド……
一番人気はイケオジだが目の周りがくすんだ色をしている、人相の悪い人間のおじさんだった。不敵に笑っている。金庫破りの名人で捕縛歴が両手で足りないくらいあるらしい。
「こっちのお店は品揃えがバラバラだね、なんか人の顔の写真がついてるけど」
「これは捕縛された奴らの所持品。購入は落札方式だ。今回はこいつの所持品が人気だな」
──は、犯罪者の所持品……
ここに来てから数ヶ月。危険な目には大して遭わなかったけど、なるほど僕の故郷と比較すると、さすがにこちらの方が治安が悪いようだ。品揃えから推察した。
「…ラグーに取られるかと思った。カイがあいつの手を取ったとき、焦った」
「歌が素晴らしかったからね。でもそう思ったのは僕だけじゃなかったみたいね。モテてたよね、急に」
「はは、滅多にみない動揺っぷりだったな。今頃どこかに連れ込まれていい思いしてるんじゃないか」
「なんか可哀想だよー。ちょっと面白いけど……ねえ、あのお店に飾ってるぬいぐるみ、おかしくない…?」
胴長のワンコがぶら下げられているのはいいのだが、縄で複雑に編まれて哀れな感じになっている。拷問…?
「あー、あれは夜に使う色々な道具が売ってる店」
「うわあ…ねえこのロープってまさか…」
「種類が揃ってるな。すげ、これなんかどうやって縛るんだろ」
「いらっしゃい! 兄ちゃん、こっちは漁縄。伸びにくいから肌に食い込まなくて色々な縛り方ができるんだ。ちゃんと前処理してっからそのまま使えるぜ。こっちは白雲縄。伸びるし柔らけェから跡がつかねェけど、安定感はねェから上級者向けだな。しかし何といっても一番人気はこの捕縛縄だな。伸びにくくてしっかり縛れる。こいつは衛兵御用達の本物だぜ!」
「うーん、跡をつけるのは可哀想だから白雲縄にしたいけど、上級者向けか」
「ねえちょっと…何考えてるの…」
ふと思い出した。ラグーさんが前に教えてくれたこと。洗濯物のロープはもっと太い方がいいって言ってた。
「ねえおじさん、一番太いロープってどれですか?」
「お嬢ちゃんにはまだ早えェよ! んー、まあこれかな、大兵縄。建築蜘蛛の糸が混ざってるから丈夫で断トツ千切れにくい。肌触りもいいやつだ」
「肌触りは良くなくてもいいんですけど、太さは丁度いいなあ。うーん、でも高い」
「おい嘘だろ、何考えてんだ、本気か…!?」
「もうちょっと考えます。オルフェくん、行こう。…オルフェくん?」
耳をフラフラさせて考え込み出したオルフェくんを引っ張り、妖しいお店を離れた。まだ顔がお店の方を向いている。僕はそういう趣味には付き合えないからね。凄いなあ、子供も通る道なのに。ここには18禁の概念がないのか。明け透けすぎるよ。
「金魚掬いとかヒヨコ掬いはないんだね」
「金魚って金襴魚のことか? すくうってなんだ、助けるのか?」
「ちょっと合ってる。小さいお魚を水槽にいっぱい泳がせて、それをこれくらいの大きさの網で捕って、いっぱい取れたらその分いっぱい貰えるやつだよ」
「ええ…残酷だな…、まだ子供の魚で遊ぶのか」
「人を縄で縛って鞭で打って、蝋燭の蝋を垂らすのだって残酷じゃない…そこはダメなんだ…」
魚はダメで人はいいらしい。そこは合意があるかないかで決まるとか。『魚は合意が取れないだろ』と言うから、僕と合意があったことってあんまりなくない? と聞いたらオルフェくんは目と耳を逸らしていた。ふーん、都合が悪いんだな。この話は。
街灯の他にも提灯のような黄色い灯りがそれぞれのお店に掲げられ、いくつも街を照らしている。少子化というのが嘘みたいに子供たちが沢山いる。オルフェくんにそう言うと、これでも減った方だと言っていた。
ベテルギウスという地名。こちらでは星の名前ではないそうだが、僕の故郷ではもうすぐ寿命を迎える星の名前だ。半径が太陽の千倍もある超巨大な恒星だが、少しずつ形が歪み縮小している。もうすぐ爆発して寿命を終える星なのだ。いつかいなくなる星と、いつかいなくなってしまう種族。とても偶然とは思えない。
でも、爆発したあとはその場に何もなくなるわけではない。飛び散ったガスで周囲のガスが押しやられ、濃い部分ができて、それが新たな星の形成が誘発される。案外しぶといのだ。尻尾が消えてしまった獣人たちからいよいよ耳まで消えてしまっても、次代の遺伝子の中にしぶとく、ずっと残り続けるのではないかと僕は思っている。
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これのために縄について調べてたらオススメ商品広告として大人の玩具がふんだんに表示されるようになりました。私に買えと。縛れとな。
哀れに思ってくださる心優しいお嬢さんはお気に入り登録お願いしまーす!
© 2023 清田いい鳥
「カイ、疲れただろ。何でも好きなもの食べな」
「うん…ずっとニコニコしてるのって疲れるんだね…ほっぺが痛いよ」
と言いつつ僕は顔の筋肉を使うメニューを食べている。パリパリに焼いた焼きそばのようなもの。端っこの焦げた硬いところが美味しい。結局終わったのは夕方近く、街路灯が灯り始めるころ。最後に大泣きした人がいたので、さすがに泣き止むまでは退出できなかったのだ。
アーリー号は『だからモテないんだよ。好きな子の前でくらいかっこよく去れよ。この(ピ──)野郎』と吐き捨てていた。今日のアーリーさんも容赦がなかった。
「ねえオルフェくん、この怖い顔の人たちの写真ってなに?」
「犯罪者写実紙。一番人気はこいつ」
──は、犯罪者ブロマイド……
一番人気はイケオジだが目の周りがくすんだ色をしている、人相の悪い人間のおじさんだった。不敵に笑っている。金庫破りの名人で捕縛歴が両手で足りないくらいあるらしい。
「こっちのお店は品揃えがバラバラだね、なんか人の顔の写真がついてるけど」
「これは捕縛された奴らの所持品。購入は落札方式だ。今回はこいつの所持品が人気だな」
──は、犯罪者の所持品……
ここに来てから数ヶ月。危険な目には大して遭わなかったけど、なるほど僕の故郷と比較すると、さすがにこちらの方が治安が悪いようだ。品揃えから推察した。
「…ラグーに取られるかと思った。カイがあいつの手を取ったとき、焦った」
「歌が素晴らしかったからね。でもそう思ったのは僕だけじゃなかったみたいね。モテてたよね、急に」
「はは、滅多にみない動揺っぷりだったな。今頃どこかに連れ込まれていい思いしてるんじゃないか」
「なんか可哀想だよー。ちょっと面白いけど……ねえ、あのお店に飾ってるぬいぐるみ、おかしくない…?」
胴長のワンコがぶら下げられているのはいいのだが、縄で複雑に編まれて哀れな感じになっている。拷問…?
「あー、あれは夜に使う色々な道具が売ってる店」
「うわあ…ねえこのロープってまさか…」
「種類が揃ってるな。すげ、これなんかどうやって縛るんだろ」
「いらっしゃい! 兄ちゃん、こっちは漁縄。伸びにくいから肌に食い込まなくて色々な縛り方ができるんだ。ちゃんと前処理してっからそのまま使えるぜ。こっちは白雲縄。伸びるし柔らけェから跡がつかねェけど、安定感はねェから上級者向けだな。しかし何といっても一番人気はこの捕縛縄だな。伸びにくくてしっかり縛れる。こいつは衛兵御用達の本物だぜ!」
「うーん、跡をつけるのは可哀想だから白雲縄にしたいけど、上級者向けか」
「ねえちょっと…何考えてるの…」
ふと思い出した。ラグーさんが前に教えてくれたこと。洗濯物のロープはもっと太い方がいいって言ってた。
「ねえおじさん、一番太いロープってどれですか?」
「お嬢ちゃんにはまだ早えェよ! んー、まあこれかな、大兵縄。建築蜘蛛の糸が混ざってるから丈夫で断トツ千切れにくい。肌触りもいいやつだ」
「肌触りは良くなくてもいいんですけど、太さは丁度いいなあ。うーん、でも高い」
「おい嘘だろ、何考えてんだ、本気か…!?」
「もうちょっと考えます。オルフェくん、行こう。…オルフェくん?」
耳をフラフラさせて考え込み出したオルフェくんを引っ張り、妖しいお店を離れた。まだ顔がお店の方を向いている。僕はそういう趣味には付き合えないからね。凄いなあ、子供も通る道なのに。ここには18禁の概念がないのか。明け透けすぎるよ。
「金魚掬いとかヒヨコ掬いはないんだね」
「金魚って金襴魚のことか? すくうってなんだ、助けるのか?」
「ちょっと合ってる。小さいお魚を水槽にいっぱい泳がせて、それをこれくらいの大きさの網で捕って、いっぱい取れたらその分いっぱい貰えるやつだよ」
「ええ…残酷だな…、まだ子供の魚で遊ぶのか」
「人を縄で縛って鞭で打って、蝋燭の蝋を垂らすのだって残酷じゃない…そこはダメなんだ…」
魚はダメで人はいいらしい。そこは合意があるかないかで決まるとか。『魚は合意が取れないだろ』と言うから、僕と合意があったことってあんまりなくない? と聞いたらオルフェくんは目と耳を逸らしていた。ふーん、都合が悪いんだな。この話は。
街灯の他にも提灯のような黄色い灯りがそれぞれのお店に掲げられ、いくつも街を照らしている。少子化というのが嘘みたいに子供たちが沢山いる。オルフェくんにそう言うと、これでも減った方だと言っていた。
ベテルギウスという地名。こちらでは星の名前ではないそうだが、僕の故郷ではもうすぐ寿命を迎える星の名前だ。半径が太陽の千倍もある超巨大な恒星だが、少しずつ形が歪み縮小している。もうすぐ爆発して寿命を終える星なのだ。いつかいなくなる星と、いつかいなくなってしまう種族。とても偶然とは思えない。
でも、爆発したあとはその場に何もなくなるわけではない。飛び散ったガスで周囲のガスが押しやられ、濃い部分ができて、それが新たな星の形成が誘発される。案外しぶといのだ。尻尾が消えてしまった獣人たちからいよいよ耳まで消えてしまっても、次代の遺伝子の中にしぶとく、ずっと残り続けるのではないかと僕は思っている。
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