人に好かれない僕が獣人の国に転移したらおかしいくらいモテた話

清田いい鳥

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37 ただいま錐鞘亭

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 ついでに、というノリで騎乗訓練を受けて歩き方から飛行までをマスターしていたオルフェくんは空の上でも余裕だった。余裕過ぎて耳を食んできたり手の動きがおかしくなったりしていたが、落とされてもいいの! と叱ってすぐにやめさせた。ルート号は落としたりなんかしないだろうけど、初めての長距離飛行なのだ。僕は真剣だ。

 空の旅は快適だった。宙を駆けるように脚を動かし、羽根を広げている飛馬ちょうばもやろうと思えば羽ばたきなしでも飛べるらしく、それは何らかの風を操る魔力を使っているからだとライちゃんさんが教えてくれた。

 なるほど、だからか。かなりのスピードで進んでいるはずなのに寒くないし、風が強すぎて目が開けられないなんてこともない。

 ベテルギウス駅が見えてきた。もうすぐだ。マウラさんからの手紙によると、あっという間に庭に厩舎が建ったと聞いていたけど、どんなものだろう。ルート号の新居である。気に入ってくれるといいのだが。

「ねえオルフェくん、あれってさあ……」
「うわ、豪華だな。うちの家より綺麗じゃないか?」

「なんか…、柵も新設されてない…?」
「あそこだけお城の庭みたいになったな。飛馬のくせに」

 ──飛馬のくせにってなんだよ。君は乗せてもらってる身でしょうが。



 なんということでしょう。先端が槍のように尖った、白さが眩しい金属製の柵が見慣れた庭をぐるりと囲み、庭の隅には貴族のお家の一部を持ってきたような、石造りの建物が堂々と建っている。元々外にあった水場も建物と色を合わせたクラシカルな感じに。なんか庭の植物の配置までもがもとからこうでしたけど何か、というくらいにすっきりさっぱり変えられている。物干しが金属製の竿になっている。こんなものまで金色で、意匠を凝らしてオシャレにされてるんだけど。

 いや本当にここなの、よそのお家じゃないよね、と言いながら恐る恐る庭に降り立ってみた。見慣れた店の裏口を見てホッとした。扉を開けてマウラさんを呼ぶと、これもまた見慣れたエプロン姿で出てきてくれた。懐かしくて涙が出そう。 

「カイくん! オルフェ! おかえりー! 見てくれよこの庭、ここだけ別世界だろ。ははは! お昼ご飯できてるから、この子が落ち着いたら中にお入り!」

 マウラさんは興奮したように言いながらサーッとルート号に近づき、可愛いねえ、と首を撫でた。ルート号が緊張しつつも目を細めている。度胸あるなあ、魔獣は大きいから絶対怖がるだろうと思ったけど。

 厩舎は中も広かった。仕切れば二頭は入れるだろう。既に藁を敷いてあるし、資材も全て揃っていた。

「あれ、この機械みたいなやつはなんだろ。何かの入れ物にしては横長だね」
「…温風が出るやつじゃねえか。魔道具の一種だよ。多分これ最新だぞ。いいなお前、飛馬のくせに」

 ──飛馬のくせに。本日二回目である。お高いんだぞ、飛馬って。


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