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42 ウマ息子の謝罪
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「……申し訳ありません」
「………………」
「……お詫びのしようもございません」
「………………」
起きたらベッドの上だったし早朝だった。起きた瞬間から喉の痛みと咳が止まらず、ガラガラ声でオルフェくんにトイレに連れて行ってくれと頼み、そのあと部屋についているシャワーを彼に支えられながら浴びているうちに、凄まじい悪寒に襲われた。身体が勝手に振動するのだ。完全なる体調不良である。
熱で朦朧としていたのだろう。僕は体調不良のストレスか、昨夜の刺激的すぎる体験のせいか、自分でもわからないがパニックを起こして火がついたように泣いてしまった。
それを見て僕以上にショックを受けたのは犯人のオルフェくんである。きっと嫌われたと思ったのだろう。今までで一番動揺し、耳をフラフラさせながらごめん、ごめん、としきりに謝っていた。彼のほうも泣きそうだった。
僕は自分が何で泣いているのかがよくわかっていない。しかし嗚咽がしつこく込み上げてきてろくすっぽ話せないのだ。あーあ、そんなに落ち込まなくてもいいのにな。昨夜みたいなのは二度とごめんだが、君ともう寝たくないということではないんだけど。
「ちょ、ちょっ、とまっ、て、とま、とまん、ない、から、」
「俺のこと嫌いになった? ……でも手放したくない、できない、ごめん」
「すこし、じかん、ほし、い、まって、」
「……何か温かい飲み物持ってくる。そこに居な。いい?」
言われずともこのおかしくなった身体では廊下にすら出られない。いやあ、参った。ルート号のお世話があるのに。仕事の依頼来てたらどうしよ。早く収まらないかなあ。
飲み物を受け取って飲もうとはしたのだが、身体の痙攣が止まらず口をつけられない。何故かそのことがとても悔しくなり、またひーんと泣いてしまった。どうしたんだ僕。オルフェくんがもの凄く落ち込んでいるじゃないか。しっかりしろ。大人だろ。
──────
「うん。ちょっと熱は引いてきたね。薬草茶を飲んだから、あとは良くなるだけさね。オルフェが朝っぱらから飛び込んできたときは強盗かと思って驚いたよお! ははは!」
──何をやってるんだ君は。そこでお母さんを頼るとは。可愛いんだか情けないんだか。
「すびばぜん、ごめいわぐを」
「あー、ハナが出てきちゃった。ちり紙ここにあるからね、はいチーンしてえ」
マウラさんは子供にするようにテキパキとお世話をしてくれた。僕も何をやってるんだ。でも身体がだるすぎる。横隔膜が運動しすぎたせいで、まだたまにヒックと痙攣する。
久しぶりに食べるご飯はなんの味もしなかった。またそれが悔しくなり泣きそうになってしまったが、それはなんとか堪えた。味は感じなくても食べないと回復しない。オルフェくんとルート号が心配だ。
「オルフェのやつ、今もんのすごく落ち込んでるよお。使いもんになんないからほっといてるさ。ルート号の方は大丈夫。旦那が色々やってくれたさ! で、カイくん。あんためちゃくちゃされただろ。でもさすが男の子、しっかりしてるわあ。あたしも若いときは似たようなことがあってさあ、コトが終わってからしこたま叱りつけたさね! 限度があるだろ! って!」
「さ、さすが経験者。慣れてますね。僕、初めてだったんで混乱したんだと思います。具合も悪いし」
「こっちの都合もあるんだからさあ、大いに反省させたらいいんだよ。ま、こんなの年に一回あるかないかだから。もう大丈夫だよお」
「年に一回……うーん、耐えられるかなあ」
マウラさんは『仕事で体力ついてるから大丈夫だよ! じゃああたし戻るから、なんかあったらこれで呼んどくれ!』とベルを置いていってくれた。あ、遮音魔道具つけっぱなしじゃないか? 切らなきゃ聞こえないよなあ。
僕は少しくらい起き上がれるだろうとベッドから下りてみた。が、甘かった。そのまま崩れるようにべちゃりと伏せてしまったのだ。あ、脚が萎えてる。歩けない。
そのときちょうどオルフェくんが入ってきた。身体を拭くタオルを持ってきてくれたらしい。が、それを放り投げて一目散に飛んできた。しまった、また余計な心配を──
「カイ!! どうした、どこに行くんだ、まだ寝てろ!」
「あ、オルフェくんあの、遮音──」
「カイ、頼む、どこにも行かないでくれ、お前がいないともう生きていけない、本当にごめん、反省してる、だから」
「いや行かないってば、このベルがね、聞こえなくなっちゃうから──」
「頼む、カイ、どこにも」
「魔道具だよ魔道具!! スイッチ切ってって言ってるの!!うえっ、ゲホッ」
ハッとした顔をしたオルフェくんは素早くスイッチを切りに行き、また素早く戻ってきた。ナイス脚力。ナイス馬力の無駄遣い。
「…本当に反省してる? もうしない?」
「…しない。反省してる。…俺と寝るのは、もう嫌になったか?」
「どうだかね。その耳を触らせてくれたら考えてあげるよ」
「……どうぞ」
やった。棚ボタで耳を触れるチャンスを得たぞ。うわあ、すっごくあったかい。マウラさんの耳より分厚いなあ。毛がすべすべしてて気持ちいい。この耳の穴のところはどうなってるんだろ。
「うっ……、んっ、……カイっ、そこはっ」
「気持ちいい? 悪い? どっち?」
「……気持ちいい、けど、変な気分になっちゃうから、そのっ…」
「そっか、じゃあやめとくね」
「えっ」
──なんだその期待でいっぱいの目は。僕はもう無理だぞ。
「ふーん、なるほどー。僕がオルフェくんと寝たいときはそこを触ればいいわけね」
「寝ッ…!! そういうことを言わないでくれ、いたた、股間が痛い」
「めちゃくちゃやった罰だよ。反省して」
「反省してるよ、というか…また抱いていいのか」
「いいに決まって…あっ、今はダメだからね! マウラさん呼ぶよ!」
すかさずベッドに片足を乗せてきたオルフェくんを叱ったらまたシュンとして『ごめん』と謝ってきた。反省してないだろ君。今のそれは口だけだろ。
────────────────────
© 2023 清田いい鳥
「………………」
「……お詫びのしようもございません」
「………………」
起きたらベッドの上だったし早朝だった。起きた瞬間から喉の痛みと咳が止まらず、ガラガラ声でオルフェくんにトイレに連れて行ってくれと頼み、そのあと部屋についているシャワーを彼に支えられながら浴びているうちに、凄まじい悪寒に襲われた。身体が勝手に振動するのだ。完全なる体調不良である。
熱で朦朧としていたのだろう。僕は体調不良のストレスか、昨夜の刺激的すぎる体験のせいか、自分でもわからないがパニックを起こして火がついたように泣いてしまった。
それを見て僕以上にショックを受けたのは犯人のオルフェくんである。きっと嫌われたと思ったのだろう。今までで一番動揺し、耳をフラフラさせながらごめん、ごめん、としきりに謝っていた。彼のほうも泣きそうだった。
僕は自分が何で泣いているのかがよくわかっていない。しかし嗚咽がしつこく込み上げてきてろくすっぽ話せないのだ。あーあ、そんなに落ち込まなくてもいいのにな。昨夜みたいなのは二度とごめんだが、君ともう寝たくないということではないんだけど。
「ちょ、ちょっ、とまっ、て、とま、とまん、ない、から、」
「俺のこと嫌いになった? ……でも手放したくない、できない、ごめん」
「すこし、じかん、ほし、い、まって、」
「……何か温かい飲み物持ってくる。そこに居な。いい?」
言われずともこのおかしくなった身体では廊下にすら出られない。いやあ、参った。ルート号のお世話があるのに。仕事の依頼来てたらどうしよ。早く収まらないかなあ。
飲み物を受け取って飲もうとはしたのだが、身体の痙攣が止まらず口をつけられない。何故かそのことがとても悔しくなり、またひーんと泣いてしまった。どうしたんだ僕。オルフェくんがもの凄く落ち込んでいるじゃないか。しっかりしろ。大人だろ。
──────
「うん。ちょっと熱は引いてきたね。薬草茶を飲んだから、あとは良くなるだけさね。オルフェが朝っぱらから飛び込んできたときは強盗かと思って驚いたよお! ははは!」
──何をやってるんだ君は。そこでお母さんを頼るとは。可愛いんだか情けないんだか。
「すびばぜん、ごめいわぐを」
「あー、ハナが出てきちゃった。ちり紙ここにあるからね、はいチーンしてえ」
マウラさんは子供にするようにテキパキとお世話をしてくれた。僕も何をやってるんだ。でも身体がだるすぎる。横隔膜が運動しすぎたせいで、まだたまにヒックと痙攣する。
久しぶりに食べるご飯はなんの味もしなかった。またそれが悔しくなり泣きそうになってしまったが、それはなんとか堪えた。味は感じなくても食べないと回復しない。オルフェくんとルート号が心配だ。
「オルフェのやつ、今もんのすごく落ち込んでるよお。使いもんになんないからほっといてるさ。ルート号の方は大丈夫。旦那が色々やってくれたさ! で、カイくん。あんためちゃくちゃされただろ。でもさすが男の子、しっかりしてるわあ。あたしも若いときは似たようなことがあってさあ、コトが終わってからしこたま叱りつけたさね! 限度があるだろ! って!」
「さ、さすが経験者。慣れてますね。僕、初めてだったんで混乱したんだと思います。具合も悪いし」
「こっちの都合もあるんだからさあ、大いに反省させたらいいんだよ。ま、こんなの年に一回あるかないかだから。もう大丈夫だよお」
「年に一回……うーん、耐えられるかなあ」
マウラさんは『仕事で体力ついてるから大丈夫だよ! じゃああたし戻るから、なんかあったらこれで呼んどくれ!』とベルを置いていってくれた。あ、遮音魔道具つけっぱなしじゃないか? 切らなきゃ聞こえないよなあ。
僕は少しくらい起き上がれるだろうとベッドから下りてみた。が、甘かった。そのまま崩れるようにべちゃりと伏せてしまったのだ。あ、脚が萎えてる。歩けない。
そのときちょうどオルフェくんが入ってきた。身体を拭くタオルを持ってきてくれたらしい。が、それを放り投げて一目散に飛んできた。しまった、また余計な心配を──
「カイ!! どうした、どこに行くんだ、まだ寝てろ!」
「あ、オルフェくんあの、遮音──」
「カイ、頼む、どこにも行かないでくれ、お前がいないともう生きていけない、本当にごめん、反省してる、だから」
「いや行かないってば、このベルがね、聞こえなくなっちゃうから──」
「頼む、カイ、どこにも」
「魔道具だよ魔道具!! スイッチ切ってって言ってるの!!うえっ、ゲホッ」
ハッとした顔をしたオルフェくんは素早くスイッチを切りに行き、また素早く戻ってきた。ナイス脚力。ナイス馬力の無駄遣い。
「…本当に反省してる? もうしない?」
「…しない。反省してる。…俺と寝るのは、もう嫌になったか?」
「どうだかね。その耳を触らせてくれたら考えてあげるよ」
「……どうぞ」
やった。棚ボタで耳を触れるチャンスを得たぞ。うわあ、すっごくあったかい。マウラさんの耳より分厚いなあ。毛がすべすべしてて気持ちいい。この耳の穴のところはどうなってるんだろ。
「うっ……、んっ、……カイっ、そこはっ」
「気持ちいい? 悪い? どっち?」
「……気持ちいい、けど、変な気分になっちゃうから、そのっ…」
「そっか、じゃあやめとくね」
「えっ」
──なんだその期待でいっぱいの目は。僕はもう無理だぞ。
「ふーん、なるほどー。僕がオルフェくんと寝たいときはそこを触ればいいわけね」
「寝ッ…!! そういうことを言わないでくれ、いたた、股間が痛い」
「めちゃくちゃやった罰だよ。反省して」
「反省してるよ、というか…また抱いていいのか」
「いいに決まって…あっ、今はダメだからね! マウラさん呼ぶよ!」
すかさずベッドに片足を乗せてきたオルフェくんを叱ったらまたシュンとして『ごめん』と謝ってきた。反省してないだろ君。今のそれは口だけだろ。
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