体育会系の魔法使いは呪文が覚えられない~暴死するか先輩と寝るかの二択です~

清田いい鳥

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21 学園長と秘密の相談

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 気持ちいいより恐ろしさが勝った王城での夜を乗り越え、倒れたブルーノ先輩を助け、ついでに俺も倒れ。色々あって、落ち着いてからずっと考えていたことがある。

 俺はあの王子様と魔力の相性がいいと仮定するとしても、ブルーノ先輩から教わった、相性のいい相手はレアなんだという話。本当にそうなのだろうか。

 本当は単に二人共、超絶性技巧者テクニシャンなだけでは?

 君だけだよ、こんなの初めて、みたいなアレ?ピロートーク?  アフターサービス?


 先輩は基本嘘など吐かないと知ってはいるものの、「ニコラウス王子とも相性良かったかも☆」なんて口が裂けても言っちゃダメだということだけは俺にだってわかる。

 婚約者だし、先輩が怒る予感しかしないし、気のせいかもしんないけど監禁? とかされる気がするし、もし先輩の反応が怒りでなく悲しみだったら。

 それは彼に、一番味わわせたくない感情だ。


 それに、先輩の魔力量。俺のあまり敏感じゃない感覚を通して感じたことだけど、確かに魔力を注いだときは沢山持ってかれた感じはあった。俺はすぐ寝て飯食って復活したから問題はないが、もし結構多いとしたら。

 先輩は魔術科に転科しなくて大丈夫なのだろうか。ヤれば解決するとかテキトー言ってたが、暴発の可能性あるって怖くない?


 本を漁っても大した収穫がなかったし(ウソウソ、俺本読むのキライだから)、内容が個人情報なのに加えてアレなもんだから、相談するにも相手を選ぶよなあと悩んだ後、この学園のトップに直接訊きに行くことにした。

 うっかりそこらの先生に訊いたら職員室で噂になるかもしんないし、そしたらどうせ学園長も知っちゃうもん。学園長は生徒の相談に乗ってくれる優しい人だし、内緒にもしてくれるよね。大丈夫だよね。多分。



 俺がそこそこ頑張ったお陰か、学園長は早々に時間を作ってくださった。前々から俺が子供達のヒーローご本人疑惑を抱いているサンタの学園長は、手ずからお茶を淹れてくださり、辿々しい俺の説明をうんうんと聞いてくださった。

 聞き終わった後、「喉が乾いたでしょう」とお茶を淹れ直し、俺がふぅふぅしている間に紙とペンを用意されていた。何か書き込んでいる。何だろう。

 ──それは国家機密です。今から声を出さないようにね。

 ウッホと茶を吹き出しかけて堪えた。

 ──念のため、君が来る前から既に高気密遮音魔術をかけてある。念には念を。

 学園長の危機管理能力パネェ。
 さすが学園のボスだ。行動が早い。

 学園長はせっせとクリスマスカードでも書いているような穏やかさで、俺にわかるように説明してくれた。




 何故ブルーノ先輩と王子様、全く共通点のない二人と相性が合う現象が起こったか。偶然なのか。もしくは何かあるのか。それは俺が請け負った仕事内容に関係している。

 まず、王族の直系だけに発現する外見的特徴がある。青の入った瞳の色だ。でも魔力による色素影響のほうが優勢で、後天的に変わることもあり変わらないこともありで、それだけでは判断がつかない。

 一番の判断材料は非常に魔術が効きにくい体質。これはもしバレると大事な直系達が危険に晒されるため、秘匿されている。

 まあ王族って大抵魔力量も多いし、制御も大して教えなくてもすぐ感覚掴んで上手くなるもんだから、もし悪さを企んでも相当強くないと返り討ちに遭うだけだとか。

 そんな天才と言える王族同士が争ってしまったら。一応避ける方法はあるらしい。ある、とだけ学園長は言った。


 外見的特徴、及び一番の判断材料に、バッチリ該当しているブルーノ先輩。

 …………つまり、そういうことになる。末端貴族の俺が知ってしまって良いんだろうか。さっきから冷や汗が凄い。


 血縁があると魔力の質が似る。遺伝というのはランダムだから、全く似ないパターンもある。今回はニコラウス王子とブルーノ先輩、腹違いの兄弟同士で似たパターンだ。

 ちなみに王家直系の子供は王子ばかりが七人だ。長男の王太子様、その下の四人の王子様が自国や他国に婿入りしている。

 現在うちの王城にいるのは王太子様、六人目、七年人目の王子様。計三人。

 うちの国の王様は世襲制。つまりブルーノ先輩は、王位継承権第4位。本来なら王子様なのである。

 俺は第3位の王子様にセクハラされ、第4位の王子様とセックスしたわけだ。やっべマジか。喉カラカラになってきた。お茶飲も。

 めっちゃ冷えてるわ。いや冷えても美味いわ。いいやつだこれ。


 まさかサンタの学園長に向かって「ブルーノ先輩もといブルーノ王子とセックスしました☆」とか言えないからそこは、触ったときビリビリきたのがお二人だけでー、共通点ないのになんでかなって思ったんですうー、ということにして後は黙っておいた。

 だから婚前にデキてるとか関係してるとか、いかがわしいことはご存知ないはずなんだけど、退出するときサンタ先生は俺に言った。

「一番深く交わることを許した者こそ、君の運命たる者だ。幸せにおなり」

 ゆっくり閉まる扉の向こうで、ホッホッホ、とサンタクロースが笑っていた。

 そのとき俺はどんな顔をしていたのだろう。しばらくそこで置物になっていた。



 ──────



 サンタは何でも知っていた。お忙しい合間を縫い、生徒の相談を聞いておられると噂で知ってはいたものの、あそこまで色々把握しているとは思わなかった。やはりトップたるもの、情報を制する者が学園を制するということだろう。

 年に一度しかない日のイベントでもその日が近づけば、「いい子にしてないとサンタさん来ないよ!」という親の一言で、どんなヤンチャな子供も素直に言うことを聞かせられるほど虜にしている敏腕イベントプロデューサー。流石である。


 うんうんと感心していたところで気がついた。ブルーノ先輩のお母様って、あのお方だよな?お母様と先輩はよく似てるからやっぱ実子だよな。

 お母様は王族じゃないはずだし、王家の一親等の誰かと結婚してたとかでもないよな。もしそうだったらただのご近所の俺でも絶対知ってるはずだ。どっちにせよ降嫁したってことになるもん。

 お母様の昔のことって聞いたことあったっけ。駄目だ全然覚えてない。先輩と同じストロベリーブロンドが波打つ豊かな髪に、睫毛バサバサのすっげぇ美人で、長身で脚が長くて、お年を召されても未だお色気ムンムンな美魔女ってことしか知らない。

 えっ……お母様、まさか……!



 お母様の不貞(しかも王様との)を疑ってしまった俺は、聞き辛いけど知りたい方の気持ちが勝った。

 ニコラウス王子のことさえ言わなきゃオッケーだと判断し、思い切って先輩を部屋に誘い、遮音魔道具も持ってきてほしいとお願いした。即オッケーしてくれた。

「んっ…………ちが……、違う違う違う!」
「何が違うの?ここ好きでしょ、ほら」 

「はっ…………話っ…………!」
「ふふ、かわいー。わかってるよ。後でね」

 俺から部屋に誘った挙げ句、遮音魔道具持ち込み指定をしたことをセクシーなお誘いだと解釈した先輩は、入室後すぐにノリノリで俺の身体に火を付けてきた。

 この放火犯!エロテロリスト!!

 病み上がりなのに元気過ぎる先輩にしこたま身体を揺さぶられ、声が枯れるまで喘がされ、突っ込まれて出して出されてを繰り返し、何も出なくなったところでシャワーを浴びて、痴漢痴漢、衛兵さんこっちですと騒いだあとのお茶タイムで話を切り出した。

 声カスカスになったじゃねえか。そんで眠い。

「あの、先輩のお母様って王様……」

 俺が声を落としてそう言いかけたところで先輩は、人差し指を俺の唇に当てて封印した。

 先輩は遮音魔道具の出力表示盤を真面目な顔で見つめた後、俺に流し目を寄越し、指をゆっくり離して自分の唇に当て、シ──、と響かせた。

 濡れて無造作な束をつくり頬に落ちた髪と、その隙間から覗く涼しげなブルーグレーの瞳。普段絶対やらない仕草がなんとも色っぽく、さっきまでこの男に抱かれていたことを思い出し、身体がくすぶり始めた。

 クソ、完敗だ。どうしようもない。

 しばらく見つめ合った後、ふっと笑った先輩は俺を抱き寄せて耳元で話し始めた。



「僕の母親は踊り子だったんだよ。他国に遠征している旅団のひとつに所属していた」

 そこでたまたまうちの王様と同じ国を訪問中、閨に誘われた、というか命令されたお母様は仕方なく受け入れた。

 お母様は元々、どこかのご令嬢だったらしい。家が没落したのをきっかけに、貴族社会を嫌っていたお母様は自ら姿を消した。このあたりは先輩も掻い摘まんだことしか知らない。

『しなくて良かった苦労も、して良かった苦労も山ほどあるわ』と猛々しく笑っていたそうだ。

 踊り子として旅団に入り、偶然王様と出会ったお母様。

 舞台映えする優れた体格と美しい容姿、若くても泰然とした振る舞いができるお母様に目をつけた王様は、外遊の開放感の勢いのまま手を出したらしい。子供を七人も作った人だ。推して知るべし。

 しかしお母様を狙う男は一人ではない。

 二度目はねえぞと旅団をさっさと辞めて姿を眩ませたお母様とその後、心を交わした男がいた。先輩のお父様である。そのお父様が先にお母様と婚姻を結んだ。お父様にとっては後妻さんだ。

 魔力の相性でいえばそこそこだったが、人間性の相性は抜群に良かった。豪快な王様とお母様は似たもの同士だが、それを良しとするかは個人の好みだ。

 しょっちゅう家を飛び出していた弾丸のような少年の父をやっていたお父様は鷹揚な人で、お母様は自分と正反対なお父様がドストライクらしい。

 おそらく魔力の相性だけは良かった王様との一度きりの婚前交渉で身ごもっていたお母様を、かまへんかまへんと家に迎えた。
 先輩は、産み育てた親と本人しか知らない隠れた王族としてこの世に生を受けたのだ。   

 会話がどことなく途切れた後、ふわりと腕を伸ばして少し離れた先輩は、俺の髪を指で梳きながら囁くように言った。

「産みの父と俺の母様はさ、権力行使がキッカケだったんだろうけど、相性が良いことは会ったときから分かってはいただろうね。人間だって動物だからね。そういうこともままある。でも、育ての父の実子として産まれてみたかった気持ちもあるなー」
「…先輩もそうだったり?  それで俺と?」
「最初はね。野生の令嬢の息子だもん」

 ──野生の令嬢って何だよ。

「でさ、僕と相性が良いってことは、他の直系である王子とも相性が良い可能性があるわけで……お前、王子の寝室に行ったよな?」

 ひい。話し方が変わった。俺の腕に沿わせていた先輩の手に力が籠もり、ぐっと顔を近づけてくる。怖い怖い。

「あーいや、何もなかったよ? シテマセンヨナニモ」
「そんなのわかってる。それ以外のことはしたんだろうな?」

「シテマセンヨ、ホントニ」
「魔力がべったりくっついてんだよバカタレ。混ざるほどじゃねーけどくっついてたの。ほんと腹立たつ」

 そうだった。先輩は王族の直径なわけで、王様と王子様たちと同等のでかい魔力と天性の制御力がある。わかる人にはわかる、のわかる人側なんだった。

 じゃあ今まで俺が言わずともバレバレだったってことか。終わったな。先生の次回作にご期待下さい。

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