体育会系の魔法使いは呪文が覚えられない~暴死するか先輩と寝るかの二択です~

清田いい鳥

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「お疲れ様ー。戦場の歌姫ちゃん!」
「公開処刑の傷口に塩!!  あんなもんストリップやる方がまだマシだったわ」

「ん?  それ何?」
「えっ?」

 王城での凱旋パーティーである。正直疲れてるからすぐに寮の部屋でだらけたかったけど、主催が王様だから塩対応するわけにいかない。 

 そこに婚約者が出ない訳がなく、会いたかった先輩と望み通り会えたけど、初めて見た盛装が格好良すぎてリアルにクラっときた。

 あの漫画でよく見るやつ。盛ってねえから。本当にあんなんなるからな。俺、ちゃんと縦に立ってたかな。後ろに仰け反ってたかもしれん。

 基地にいたときは騎士様達にもみくちゃにされて、最終的に天井スレスレまで胴上げされたけど、今度はひっきりなしに魔術師様のおっちゃんやお姉さんがチヤホヤ話しかけてくれるもんだから、悪くない気分になった。俺はそういう奴だ。

 あれこれ着せられ、飾られ、踊れ踊れコールが来る。俺下手くそだから踊りたくなかったけど、先輩にグイグイ引っ張られてブン回された。

 先輩はでかいし、病み上がりだけど人より体力があって、運動神経も良い。男共の、おおー!という野太い声。ご令嬢はキャッキャと黄色い声を上げていた。
 かっこいいだろ。俺のだぞ。 



 ──────



 でもやっぱ疲れてるし、早々にいつもの部屋に帰った。

 さて、今俺の前にはピンクの高級シャンパンがある。ドン・ペルリヲン。高級品なのだ。

 王家御用達であるこのお酒。王家の刻印がキラリと輝き、ボトルはヌード女性のお背中よろしく艶めかしいラインを象っている。

 味は爽やか、フルーティーな中にコクもあり…というのがうちの親父の御酒コレクション無断飲酒常習犯である、へべれけ兄貴の評価だ。

「うーん、よくわかんない」
「こういうのは時間をかけて飲むんだよー。一気にいかないの」

 喉が渇いてたからキューッと一杯飲み干してみた。 やっぱ俺にお酒は向かないかも。

 ところですとりっぷって何、とまた先輩が食いついてきた。(ピ──)人切りの勇者のくせしてなんで知らないんだよ。

「ほんとに見たことない?  もったいぶりながら一枚ずつ服を脱いでく綺麗なお姉さんを眺め────」
「やってみて」

 what’s?

「だからー、綺麗なお姉さんがやるやつで」
「綺麗な声のお兄さんがやってもいいよね」

 ああそっか。……そうか?

 既にワクワク顔で見る体勢を整えている先輩と見つめ合い、五秒で根負けする。これはやらなきゃダメなやつだ。こういうときの先輩はマジでしつこい。

 そうこうしているうちに、妙に笑えてきた俺は『イレネオ入りまーす』とか言いながら靴を脱ぎ捨てソファーの横に立ち、シャツの釦に手をかけた。

 公開処刑再びー、後輩いじめー、俺って歓待される側じゃね? 歓待してね? と言葉をポロポロ零れるままにし、艶めかしい美女を頭の中に思い描いた。

 ギラギラのミニスカートと踵の高いヒールを履いて、色っぽく歌っていた前世のあの歌手になった気分で歌を口ずさみながら、釦を外してゆく。

 いつもと違ういい生地のシャツは釦が多すぎて、自然と焦れた仕草のようになる。身体が温まって声がよく伸び、喉を震わせることが気持ちいい。

 先輩はなぜか頬杖をついて、感情の読めない顔で俺をじっと見ている。なぜ野次を飛ばしてくれない。セクシーな音楽とかピンクの照明とか、キラキラテープを飛ばしてくれよ。もっと熱くなれよ。

 下着一丁で振り返り、観客席へふわっとシャツ投げサービスをしたのに、いるはずの先輩がいなかった。

 トイレかなあ、と思った瞬間気づく。ソファーでふんぞり返っていたはずの先輩に、いつの間にか背後を取られていたことに。

「まだ残ってるよね」

 当たり前のように下着の中に手を入れてくるもんだから、思わずその頼りない布地の上から先輩の手を掴んだ。

「ちょ、踊り子に手を触れないでください!」
「好いではないか」
「お殿様! じゃなくて! いけませんお客様!!」

 先輩はクスクスと柔らかく笑いながらも、手だけは力強く下穿きに侵入させ、中心に向かって無体を働こうとする。頑張って引っ張ったり掴んだりしようとする俺の手なんか端から無視だ。

 口調だけ  いつも通りな  先輩の  
 据わり始めた  その目が怖い

 五七五七七作ってる場合じゃねえ。
 助けて黒服!
 スタッフー! スタッフー!

 あーもう絶対こうなる、と先輩の無茶振りに応えてしまった後悔をしつつ、今は意地でも最後の砦を守りたい気持ちでいっぱいだ。今日の俺は負けねー。

 先輩は痺れを切らしたのか、俺を羽交い締めにしながらベッドの方へ引きずり始め、足を横から払われてあえなくベッドに不時着した。

「ちょっと待って、ずるいって、ん───!」

 いきなり覆い被さられ、手首と顎を掴まれたと思ったら、舌を突っ込まれそういう感じになってしまった。いつも一体どの辺でスイッチが入るのか。わからん。

「は、もう、すぐこういうっ……!んっ……!」
「頑張れ頑張れ。負けちゃうぞー」

「はっ……!あっ、も、もおおおお!」
「いてっ。こら、悪い子だなー」

 蹴られた腹いせとばかりに口蓋をしこたま舐められ、舌を扱かれながら、粘膜から魔力をねじ込まれているのがわかる。

 何も悪いことをしていないはずの胸の突起をギュウッと引っ張られ、起たせて嬲る責め苦を受けるたび、快感を乗せた電流が、何度も何度も全身を駆け巡る。

 先輩に首筋を吸われるたび、何も喋らなくなった彼の荒い呼吸音が耳を犯す。

 いつの間にか後孔は濡れ滴り、指を挿入されれば収縮し、中のしこりに触れられれば強く電流が走る。期待し始めたその箇所に、やがて熱くなった硬い杭を性急に突っ込まれた。

 彼は髪を乱し、息を荒げ、赤く染まった瞼を伏せる。その瞳に俺だけを映している。
 こうなったらもうダメだ。繋がってるのは一部分だけのはずなのに、全て丸ごと奪われてゆく。

「ごめんね。疲れてるのに。悪い奴で、ごめん……。君が生きて帰ってきて、よかった」

 俺が本当に嫌がったら、先輩はやめてくれるだろう。そういう人だ。わかっている。

 快楽が強く打ち寄せ引きずり込まれ、波が引くたび息をする。すぐに次の波に襲われ、懸命にまた息をする。

 それを幾度となく繰り返し、上も下も解らなくなったあと、全てが白く塗り潰される。


 本当はもう、とっくにそれを期待している。そんな俺がわるいのだ。

 引きずり込んで溺れさせたのは彼じゃない。彼の手でしか起こせない波に、入水したのは俺の方だ。
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