BOYS PICTURES

黒縁めがね

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カシャリ、と音がした。
俺に向けられたカメラの持ち主は、わずかにほくそ笑んでいる。

俺の小学校からの親友、ユウスケは写真が昔から好きだ。いつも、首からカメラをさげ庭や森を駆け回り、撮り回っている。でも俺は、ユウスケが撮った写真を見たことがなかった。何故か見せてくれないのだ。
俺とユウスケはいつも一緒。それは今も昔も同じのようで、高校も同じだった。ユウスケは写真部に入った。その時、ユウスケに「お前も入らないか、写真部」と誘われて俺は特に入りたい部活も無いから、帰宅部扱いされるよりはマシだろうと思って写真部に俺も入った。
 
 俺の高校はすっげぇ海沿いの田舎にあって賞だとか練習だとか、学校祭の出し物だとかでお題に困る事はなかったけど、クーラーが無いわエアコンが付いてないわでとにかく暑い。

昼間に屋外撮影をした時はいつも汗だくで、しょっちゅう水筒のお茶が切れちまう。切れるたびに校庭の水道に寄って、そこで水道水を飲んでた。

 ユウスケが水道の水を飲んでいる。
艶のある唇から流れおちる水はそのまま顎先から滴り落ちた。ギラギラと太陽は光り輝いていると言うのに、シミの一つもない色白な肌が水に濡れる。ふさりとした短い黒い髪に水飛沫がかかり、強い艶を与えている。喉から飛び出る喉仏は、水を飲むたびにゴクリと音を立てながら上下に動く。
ただユウスケが水を飲んでいる、それだけなのに何故か俺はその様に見入っていた。

そしてどれくらいの時間が流れたのだろうか。
ユウスケは水を飲み終え、水道の上に置いてあるタオルとカメラを手に取りタオルで顔を拭く。拭き終えるとこちらを見て言った。
「どうしたん?ぼーっとして。早く飲まないと熱中症ななっちゃうぞ。」
俺はそうユウスケに催促された。俺は何故かぼーっとしていた言い訳を頭の中でぐるぐると考え、つい咄嗟に
「いやぁ、ユウスケの部活以外で撮った写真見た事ないなーって思ってさぁ!」
と、言ってしまった。
ユウスケはその返答を聞くと、ゆっくりとこちらを見て言う。
「…嫌だよ。」
"しまった、やってしまった"、そう思った。
その顔は何処か苦虫を潰したような顔で、何処か体の中の汚い物を吐き出したような、整ったそのは顔立ちとは正反対のユウスケがしてはならないような表情。ユウスケは日頃とった写真をなかなか俺に見せてくれない。そして、その後にいつも決まってこう言う。
「皆んなには、見せれるようなものじゃない。」
「あはは…ごめんごめん!」
そう俺はユウスケに謝った。
ユウスケはそれを聞くと、さっきの表情とは一転、晴れやかな笑顔に様変わり、そして俺に「水道交代」と言い口を腕でぬぐいながら水道から離れた。
俺はその言葉に従い水道によって、水を飲む。

なんで、いつもああ言って見せてくれないのだろう。なんでいつもああ言う顔をして拒否するんだろう。なんで、何も俺に教えてくれないのだろう。なんで、俺を"皆んな"に入れてしまうのだろう。
アイツの隣にいると、いつもそう思ってしまう。

ユウスケが言った。
「ふぇー、あっついから先戻るわ。」
「あ、あぁ」
その言葉に相槌を打つとユウスケは校舎へ歩いて行く。その後ろ姿を、俺は眺めていた。
ユウスケが先程手に持つカメラを首から下げカメラの画面を見ていた。
「ピッ」と言う音と共に画面の中の写真がかわっているのだろうか。押すたびにユウスケはコロコロと表情を変えている。煌めく太陽の光がユウスケのカメラの画面に反射するものだからどんな写真かは、よくわからなかった。

だが、一瞬。
遠巻きでもわかるほど画面が鮮明に、正確に見えた。
画面に映っていたのは___



「___星空……?」
思わずそう呟くほどの夜空を彩る華やかで美しい星の影。はっきりとそれがわかるように、昼の空に負けないほどの奇麗さを持っていた。
ユウスケは、俺のその一言の呟きで全てを察したようで、カメラを隠すように狼狽えながら
あと図祭しながらこちらを向く。
「お、お前、盗み見るなんて…最低だよ!」
必死に捻り出したような、拙い暴言。
優しいやつだから、そんな暴言とも呼べないような雑言を引き出しんだろうな。
俺はそう思った。
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