距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚

文字の大きさ
12 / 74

呼び出し

しおりを挟む
「……僕は七里ヶ浜くんの事が好き。人間として、男性として好きなの」

 ゴーーーーーーーーーールッ!
 鋭く放たれたシュートがゴールネットを揺らしたァー!
 バリバリのオウンゴールである。

 ほんの少しだけ時を戻して、スーパーセーブを見せてやる、なんてほざいてた翌日の昼休み。
 俺と巻島は、東堂先輩の宣言通りに呼び出されていた。
 校舎の屋上に続く階段の途中、鉄扉の前。
 俺は、心臓が耳元で鳴っているんじゃないかってくらい落ち着かなかった。

(いや……冷静になれ。昨日、あれだけ考えたじゃないか。これは恋じゃない。感謝だ。感謝。東堂先輩にも堂々とそう説明すれば――)

 ギィ、と扉が開く音がした。
 立っていたのは、もちろん――。

「……来たわね」

 東堂涼。巻島の友人にして、三年生で屈指の影響力を持つ者。
 睨んでるのか、観察しているのか。
 判断がつかないような鋭い目つきで、俺と巻島を交互に見た。
 その目を避けるように、巻島が小さな声で言う。

「……涼、昨日のことは、ちょっとその……」
「話すのは私じゃないわ」

 東堂先輩は、まっすぐに俺を見た。

「まずは七里ヶ浜悟。昨日のこと、説明して」

 風の強い屋上で、制服の裾がはためく。

(よし……落ち着け。ただの誤解の解消だ)

 俺は静かに息を吸い、言葉を選びながら話し始めた。

「昨日のことですね。俺と巻島は、偶然にも体育倉庫に閉じ込められてしまいました。それでちょっとした勘違いがあって……」
「勘違い?」
「はい。実は巻島が――」
「――ここから先は、僕が言うよ」

 巻島の声が割って入った。
 その目は、もうどこか覚悟を決めたような強さを帯びていた。

「……好きな人がいるって話、覚えてる?」
「……えぇ、覚えているけど」

 巻島は俺の方を見ずに、まっすぐ東堂先輩の方を向いたまま続ける。

「それが――七里ヶ浜くんなんだ。……僕は七里ヶ浜くんの事が好き。人間として、男性として好きなの」

 東堂先輩は黙ったまま、じっと巻島の横顔を見つめていた。
 何も言えない俺を見て、巻島は微笑んだ。

「……好きだよ、七里ヶ浜くん」

 俺はなにも応える事ができない。
 
「でも……それはおかしいと思うんだけど」
「え?」
「だって……葉音は今まで教室で、彼を気にする素振りはなかったじゃない。ずっと好きだった相手じゃないの?」
「それは――」

 巻島は言葉を詰まらせる。
 
「――話さなくて良い。自分の心にだけ留めておきたい言葉が、私にもあるから。私が悪かったわ。前に、お互いに詮索しないことに決めたものね」

 何か事情があったのね、と勝手に納得してしまう東堂先輩。

「でも――」

 彼女の視線は、再び俺へと向けられた。

「あなたには、葉音を幸せにする覚悟があるの?」
「ないです」
「なっ……」

 俺の即答に、流石の先輩も面食らっている。
 ここで「もちろんです」と答えられるほど、俺は空気が読める人間ではない。

「俺は巻島と付き合う気はないですし、彼女を作りたいとも思っていません」
「あ、あなたが葉音にアプローチをかけたから、葉音はその気になったんでしょう!? それなのに、その言い方は――」
「俺は何もしてないです。いや、厳密にはしてますけど、邪な気持ちがあってのことじゃない。むしろ、東堂先輩に助けてほしいです。俺はアンタの事が嫌いだけど、利害は一致してますから」
 「葉音、あなたは本当にこんな男を選ぼうとしてるの!?」

 もっともである。
 巻島にオウンゴールを決められてしまった以上、先輩を味方に引き込むしか俺が逃げ切る道はない。
 カスみたいな事を言っている自覚はあるが、あえてだ。
 巻島への断りのメッセージの同時上映である。
 しかし先輩が俺を指さすと、それを遮るように巻島が一歩前に出る。
 
「七里ヶ浜くんの事を悪く言わないで!」
「でも……彼に葉音と釣り合うような部分があるとは――」
「――これ以上は、僕も怒るよ」

 一瞬、東堂先輩が言ったのかと思ってしまったほどに、低く冷えた声。
 間違いなく正しいのは先輩の方なのだろうが、普段温厚な巻島に静かな怒りを向けられて、何も言えないでいる。

「僕は涼と喧嘩する気はないよ。涼は大切な人だから」
「それは、私も――」
「でも、たとえ誰であっても、この恋は邪魔させない。誰であっても――絶対に」

 言い放った巻島は、絶句している東堂先輩との会話が終わったと考えたのか、「行こう」と俺の手を引っ張る。
 そしてそのまま、屋上の扉を開いた。
 彼女の後ろについて階段を降りていると、背後で扉が閉まった音が聞こえた。やけに大きく、耳に残った。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。 その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに! 戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

処理中です...