距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚

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ラーメンゲーセン僕

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 放課後。俺は隆輝と連れ立って、学校近くのラーメン屋に向かっていた。

「で? 今日も何かあった顔してんな」

 開口一番、隆輝が言った。
 やはり友人とは恐ろしいもので、顔を見ただけで察してくる。

「……体育倉庫で巻島から、またしても襲撃を受けてな」
「は!? お前、また行ったの!? 懲りろよ!!」
「いや、俺が行ったんじゃない。誘導されてたんだよ……鍵まで持って」
「鍵……マジのやつじゃん」

 ラーメン屋の暖簾をくぐりながら、俺たちはいつものカウンター席へ腰を下ろす。
 チャーシュー麺大盛り、味玉トッピング。いつもと同じ注文がいつものように通っていく。

「……それで、巻島はなんて?」
「……キスの続きがしたいってさ」
「マジかよ……いや、もうマジかよとしか言えねぇよ俺は」

 思いきりため息をつく隆輝。
 その目には、多分に羨ましさが滲んでいた。

「なあ悟。お前さ、ぶっちゃけ巻島のこと……どう思ってんの?」
「どうと言われても――」

 そこまで言いかけた時、俺のスマホが震えた。
 見ると、『はのん』からのMINE通知。

『れん』
『連絡先教えてくれてありがとう』
『悟くんは、すごく、すごく特別な人だよ』
『ピン留めしてるから、いつでもなんでも送ってね』
『だいすき』

 隆輝が俺の顔を覗き込む。

「どうかしたのか?」
「……その、MINEをな……」
「なるほどな。着々と距離を詰められてるわけだ」

 着々、というレベルじゃない気がするんだが。
 俺の経験の浅さは関係ないはずだ。たぶん。
 そうこうしていると、ラーメンが届いた。湯気と共に、胃と心に沁みてくる香り。
 巻島の言葉は甘すぎて、今はこのしょっぱいスープがありがたかった。

「なあ悟、お前がどんな選択をしても俺は応援するからな。アイドルでもメンヘラでもヤンデレでも、どんと来いだ」
「ありがとう。でも、刺されるのは隆輝じゃなくて俺なんだよ」

 肩をすくめ、俺たちはラーメンをすすった。

「やっぱ、ここの味玉が一番美味いよな」
「わかる。硬すぎず柔らかすぎずの塩梅。完璧過ぎる」

 その時、ふと、背中に何かの気配を感じた。
 誰かに見られているような、落ち着かない感覚。
 俺は何気なく振り返り、そして、見つけてしまった。

(……うそだろ)

 ラーメン屋の外。通りを挟んだ電柱の陰に――東堂先輩がいた。
 制服姿のまま、帽子もマスクもしていない。
 本人は街に溶け込んでいるつもりだろうが、一ミリも馴染めていない。
 逆に、主張が激しすぎて気付かないところだった。
 彼女は俺の方を見ている。じっと、狙いを定めるように。
 十中八九、俺と巻島についてだろう。
 麺が伸びるのも忘れ、東堂先輩を凝視していると、一瞬だけ視線が合った。
 「ヤバい、見られた!」とか「アイツ、なにラーメンなんて食ってやがるんだ!」とか、そういう反応は皆無。
 ただただ無表情にこちらを観察していて、彼女が実は人形だと言われても信じてしまいそうだ。
 しかし、二、三度まばたきすると、彼女の姿はスッと消えていた。
 歩き去ったのか、どこかに隠れたのかは分からない。

「今日、結構並んでるか?」
「……並んでると言えば……並んでるな……」
「ラーメン屋は回転率が命! って誰かが言ってた気がするし、早めに出るかぁ」

 巻島に報告して対処してもらうべきか、それとも。
 二人は俺と隆輝のような、気の置けない親友のはず。

(……しばらくは様子見か)

 たとえ嫌いなヤツだとはいえ、その友情に亀裂が入るのを見たくはない。
 先ほどからピコンピコンなり続けているスマホの通知を無視して、目の前の透き通ったスープに意識を集中することにした。

 ・

 ラーメンを食べ終えた俺たちは、腹をさすりながら店を出た。
 店の前でしばらく風に当たっていると、隆輝が言う。

「……で、どうする? このまま帰るか、それともゲーセンでも寄るか……」
「ちょっと気分転換したいな。格ゲーやろうぜ」
「ウルトラスクリューでボコボコにされることになるのか……」

 そんな他愛のない会話を交わしながら、駅前に向かって歩いていると――。

「……あっれ~? 悟せんぱぁい?」

 聞こえた瞬間、条件反射で足が止まった。
 視線を上げると、そこにはファッション誌から飛び出してきたような髪色とメイクの女子。

「……二兎?」

 どんなエンカウント率だよ。
 ピラミッドの地下で盗みを働いた覚えはないんだが。
 
「何してるんですか~? え、まさか……彼女? デート?」
「違う。友達と飯食ってただけだ」

 揶揄うつもりだったのか探りを入れてきた二兎だったが、俺の横に視線を向けると、すぐに興味のなさそうな顔に戻る。

「ふぅん……そうですよね。先輩に彼女なんて、できるはずないですもんねぇ?」

 口元は笑っているけど、目は笑っていない。

「別に尾行とかしてないですよ? 偶然ここ通っただけですしぃ~」
「何も言ってないけど?」
「えー? ちょっと疑ってる顔してましたよぉ? あ、でも私、ちょっとヒマしてるんですよね。これからどこ行くんですか?」

 隆輝がそっと肘で俺のわき腹をつつく。

(おい、なんだよこの美少女は。巻島さん以外にも、こんな子と知り合いだったのか?)
(二兎は部活の後輩だよ)
(部活のって……写真部だろ!? どっからどう見ても撮る側じゃなくて撮られる側じゃねぇか!)
(知らんわ! ――っておおっ!?)

 小声で言い合っている間に、二兎が目の前まで接近してきていた。

「こそこそなに話してるんですかぁ~? ひょっとしてぇ、えっちなこととか?」
「どうやって二兎を撒くか考えてたんだ」
「酷いですぅ~! 私みたいな可愛い後輩を置いて行こうとしてたんですかぁ?」

 わざとらしく泣き真似をされてしまう。
 ……正直、関わりたくない。
 でも、ここで無理に断ると、逆に盤外のことまで根掘り葉掘り聞かれそうだ。

「……ゲーセン。少し時間潰して帰るつもりだった」
「ゲーセン? へぇ~、じゃあ私も行こっかな? 先輩も元気みたいですしぃ~」
「……好きにしろよ」

 小さくため息をついた俺に、二兎はいたずらっぽく笑った。

「ふふ。じゃあ、悟せんぱいの後ろ、ついて行っちゃお~っと」

 隆輝が小声でつぶやいた。

「……この子もこの子で、巻島と違う意味でヤベぇな」
「そうなんすよ」

 ここ二日、ため息ばかり吐いている気がする。
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