8 / 44
一章
8 あれは俺のものじゃない
しおりを挟む
家に帰ると、仁王立ちの兄がいた。
(ヒィ……)
「そこに座れ」
何となく正座する。お説教を甘んじて受けますのポーズだ。少しでも追及が緩むといいんだけれど。
「諒と俺は二人になるなと言ったよな?」
「ハイ……」
「何で連れ込まれてる」
全然緩くない。俺が兄に媚びたところで無駄なのは分かっていたけどさ。
「あ、連れ込んだの俺。あいつ泣いちゃって、人目が気になって、つい」
「何もなかったのか?」
「う、うん。何もないよ?」
冷汗が出る。ちょっとこれどうしよう。俺女子高生じゃないけど、朝帰りを見つかって父親に怒られてるみたな状況じゃないか。
「じゃあ首のそれは何だ」
「え?」
兄が首の一点を指差す。
諒さんがため息をついて、手鏡を持ってきてくれた。
「虫刺され? 昼メシ、外だったし」
指で押したような赤いのができていた。いつできたんだろう。
「健吾、それキスマークだよ」
「まじで? 初めて見た」
鏡をまじまじと確認した。
あ、祐志が吸い付いてたな。チリっとしたやつ。そうだ。思い出した途端、顔が熱くなる。
兄と諒さんが顔を見合わせて、険しい顔だ。
緩い弟でごめんなさい。俺、こんな風じゃなかったはずだけど……。
「あ、でも番なら仕方ない……て、いうか……」
怖い怖い怖い。
諒さんが笑顔なんだけど、めっちゃ怖い。
もう俺、喋らない方が良いと思う。
「番なら仕方ないって言うようなこと、されたの?」
答えないとやばいと思います!
「い、入れてない! 入れようとしたら、電話、兄さんの電話かかってきたから」
フェラはノーカンだよね? してもらっただけだし。
俺の貞操なんて今更だし、相手が祐志ならちゃんと番だし、誰彼構わずって訳でもないし、駄目かな……。
「俺が電話をしなかったら、入れてた訳だな」
そんなにはっきり言われると恥ずかしいです。身内に下ネタとか、答えられないよ……。
「健吾、僕も和久もあいつが番の立場を利用して、君を体から籠絡するんじゃないか心配してるんだ。僕らオメガは、番相手が優しくしてくれたら嬉しいし、体も反応する。本能みたいなものだ。そこに君の心はあるの?」
俺の心?
そんなものとっくに砕けてどこかに行った。
大事なことが何かも、思い出せないんだ。
今は、ただ周りに流されて生きてる……。
俯いていると、アラームが鳴った。
「あ、双子のお迎え」
俺の希望の光。
あの子達だけが俺を現実に繋ぎ止めている。
「ふぅ、この話はまた今度な」
兄が終わりを宣言した。
迎えに行こうとすると、兄が「車を出す」と言って、諒さんが「たまには僕も行こうかな」と言った。
それなら、俺は行かなくて良いんじゃない?
だって本当の両親が迎えに来てくれたほうが良いし。
二人は俺も行くものだと思っているようだ。
そりゃ迎えに行きたい。
でも、俺は?
俺は、ただ二人の好意に甘えて居候してるだけの。
…………。
二人が話しながら先を行く、
ふと階段が目に入った。
エレベーターは何故かモタモタして来ない。
早く迎えに行ってあげなきゃ。
下りるだけなら階段でいいじゃないか。
気付いたら目の前が真っ赤で、諒さんが俺の名前を呼んでいる。
あれ?
俺倒れたのかな。
俺はいいよ。
双子はまだ小さいんだ。赤ちゃんなんだ。待ってるから。
「お、むか、え、行って、あげて」
何故かうまく出ない声を絞り出すと、兄が「すぐに行くから大丈夫だ」と言ってくれた。
俺は少し疲れただけだよ。
今日は、久しぶりに身内以外と話したからさ。
眠い。
起きたら帰って来てるかな。
最近よく笑うようになって、本当に可愛いんだ。
俺の。
…………。
目が覚めたら兄がいた。
めちゃくちゃ久しぶりに見るな。
「にい、さん……」
「起きたか。……健吾、今日が、何月何日かわかるか?」
「ん? きょう? は、四月……十五日?」
「十月十日だ」
半年も経ってる?
何か事故にでも巻き込まれたのかな?
体がうまく動かない。
「色々あってお前はずいぶん長く意識がなかった。色々については、おいおい話す。とりあえず寝ろ」
いつになく優しい兄が不思議だったけど、逆らうこともできずに意識が消えて行く。
(ヒィ……)
「そこに座れ」
何となく正座する。お説教を甘んじて受けますのポーズだ。少しでも追及が緩むといいんだけれど。
「諒と俺は二人になるなと言ったよな?」
「ハイ……」
「何で連れ込まれてる」
全然緩くない。俺が兄に媚びたところで無駄なのは分かっていたけどさ。
「あ、連れ込んだの俺。あいつ泣いちゃって、人目が気になって、つい」
「何もなかったのか?」
「う、うん。何もないよ?」
冷汗が出る。ちょっとこれどうしよう。俺女子高生じゃないけど、朝帰りを見つかって父親に怒られてるみたな状況じゃないか。
「じゃあ首のそれは何だ」
「え?」
兄が首の一点を指差す。
諒さんがため息をついて、手鏡を持ってきてくれた。
「虫刺され? 昼メシ、外だったし」
指で押したような赤いのができていた。いつできたんだろう。
「健吾、それキスマークだよ」
「まじで? 初めて見た」
鏡をまじまじと確認した。
あ、祐志が吸い付いてたな。チリっとしたやつ。そうだ。思い出した途端、顔が熱くなる。
兄と諒さんが顔を見合わせて、険しい顔だ。
緩い弟でごめんなさい。俺、こんな風じゃなかったはずだけど……。
「あ、でも番なら仕方ない……て、いうか……」
怖い怖い怖い。
諒さんが笑顔なんだけど、めっちゃ怖い。
もう俺、喋らない方が良いと思う。
「番なら仕方ないって言うようなこと、されたの?」
答えないとやばいと思います!
「い、入れてない! 入れようとしたら、電話、兄さんの電話かかってきたから」
フェラはノーカンだよね? してもらっただけだし。
俺の貞操なんて今更だし、相手が祐志ならちゃんと番だし、誰彼構わずって訳でもないし、駄目かな……。
「俺が電話をしなかったら、入れてた訳だな」
そんなにはっきり言われると恥ずかしいです。身内に下ネタとか、答えられないよ……。
「健吾、僕も和久もあいつが番の立場を利用して、君を体から籠絡するんじゃないか心配してるんだ。僕らオメガは、番相手が優しくしてくれたら嬉しいし、体も反応する。本能みたいなものだ。そこに君の心はあるの?」
俺の心?
そんなものとっくに砕けてどこかに行った。
大事なことが何かも、思い出せないんだ。
今は、ただ周りに流されて生きてる……。
俯いていると、アラームが鳴った。
「あ、双子のお迎え」
俺の希望の光。
あの子達だけが俺を現実に繋ぎ止めている。
「ふぅ、この話はまた今度な」
兄が終わりを宣言した。
迎えに行こうとすると、兄が「車を出す」と言って、諒さんが「たまには僕も行こうかな」と言った。
それなら、俺は行かなくて良いんじゃない?
だって本当の両親が迎えに来てくれたほうが良いし。
二人は俺も行くものだと思っているようだ。
そりゃ迎えに行きたい。
でも、俺は?
俺は、ただ二人の好意に甘えて居候してるだけの。
…………。
二人が話しながら先を行く、
ふと階段が目に入った。
エレベーターは何故かモタモタして来ない。
早く迎えに行ってあげなきゃ。
下りるだけなら階段でいいじゃないか。
気付いたら目の前が真っ赤で、諒さんが俺の名前を呼んでいる。
あれ?
俺倒れたのかな。
俺はいいよ。
双子はまだ小さいんだ。赤ちゃんなんだ。待ってるから。
「お、むか、え、行って、あげて」
何故かうまく出ない声を絞り出すと、兄が「すぐに行くから大丈夫だ」と言ってくれた。
俺は少し疲れただけだよ。
今日は、久しぶりに身内以外と話したからさ。
眠い。
起きたら帰って来てるかな。
最近よく笑うようになって、本当に可愛いんだ。
俺の。
…………。
目が覚めたら兄がいた。
めちゃくちゃ久しぶりに見るな。
「にい、さん……」
「起きたか。……健吾、今日が、何月何日かわかるか?」
「ん? きょう? は、四月……十五日?」
「十月十日だ」
半年も経ってる?
何か事故にでも巻き込まれたのかな?
体がうまく動かない。
「色々あってお前はずいぶん長く意識がなかった。色々については、おいおい話す。とりあえず寝ろ」
いつになく優しい兄が不思議だったけど、逆らうこともできずに意識が消えて行く。
42
あなたにおすすめの小説
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
落ちこぼれβの恋の諦め方
めろめろす
BL
αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。
努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。
世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。
失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。
しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。
あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?
コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。
小説家になろうにも掲載。
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
【完結】選ばれない僕の生きる道
谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。
選ばれない僕が幸せを選ぶ話。
※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです
※設定は独自のものです
※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる