リセット

爺誤

文字の大きさ
42 / 44
三章

3-10 苦悩 祐志

しおりを挟む
 健吾から、「説得成功。詳しくは帰ってから」と連絡が来た。
 予定よりもずっと遅くなっている。
 弁護士からの連絡はない。

 健吾はどんな説得をしたのだろう。
 木村永遠、彼はどんな反応をしたのだろう。
 説得成功は素直に嬉しいが、そんなにあっさり終われる話なのだろうか。

 弁護士を同行させたのだから、酷いことにはなっていないはずだ。
 彼が退院する前に話をしに行ったのも、病院なら人目が多く、万一相手が暴れたり自傷してもどうにかなるからだ。


 檻に閉じ込められた動物のように、部屋の中を無駄にウロウロしてしまう。
 健吾。声を聞きたい。
 辛い思いをしなかっただろうか。
 相手に同情しすぎてはいないだろうか。


 弁護士から電話が来た。
『健吾さんから口止めをされていますが、報告しなければならないことが、あっ』
 ブツっと切られた通話。
 すぐに健吾から『俺の話が先』と連絡が来る。
 何だろう。
 弁護士が急いで連絡しようとするような問題が起きたのか?

 その後で、和久から連絡が来た。
『……すまん。健吾が迷惑、いや心労をかける』
 詳しい話は教えて貰えなかった。
 健吾が帰ってくるまであと三十分程だろうか。
 健吾自身は弁護士の話を遮るほど元気そうだが……。


 ◇


「ただいま祐志!」

 満面の笑みで健吾が帰ってきた。
 俺のことをぎゅーっと抱きしめてくれる。
 後ろで弁護士が微妙な表情だ。
 パクパクと声を出さずに、大変申し訳ありません?
 深々と頭を下げている。

 健吾は、空元気とかでもなさそうだ。
 実にスッキリした様子だ。

「弁護士さんは後日改めて、ね」

 健吾がそう言うので、気になったけれど帰って貰った。

「ちょっとシャワー浴びてくる」

 さっさと風呂に消える健吾。
 出てきた健吾は、裸にエプロンだった。俺の好きな格好だ。
 何なの?

「健吾……、真面目な話をしたいんだけど」

 流石の俺もこの状況ですぐに飛びついたりはしない。

「あとで必要になるから」
「そう……」

 とりあえず寒そうなので、上着をかけておいた。
 どこにも怪我がないことを確認しておく。

「まず俺の話を聞いてね。今回俺が弁護士について行ったのは、相手の子、永遠君に俺が何かされたら武器にするためだったんだ」

「は?」

「永遠君が俺に殴りかかってもいいし、罵っても良かった。弁護士の前で彼に非があるような行動をすれば、それを武器にして祐志に近付かないように言うつもりだったんだ」

 健吾が弁護士に同行すると言った時の違和感。
 健吾はあまり自分を大事にしてくれない。分かっていたのに。

「でもさ、永遠君はすごく静かに怒ってた。自分でも良く分かってないみたいだったけど、今回のことは彼にとっても、とても不本意で理不尽だったんだよ。一生懸命それを抑え込んで、俺と二人で話したいって言ったんだ。そこで弁護士には席を外して貰った」

「うん……」

「それなのに、俺に移ってた祐志の香りで軽い発情ヒート状態になっちゃったんだ」

 何をどう言えばいいかわからない。でも先を聞きたくない。
 謝っていた弁護士。

「健吾、嫌だ」
「ごめんね。祐志。俺はそれを利用した。結果的に彼は俺への罪悪感で死にそうだったよ。祐志なんてどうでもいいって言わせることができた。俺からしてみたら大成功だった。でも……祐志、ごめんなさい。浮気、してしまいました」

 健吾が俺に向かって土下座した。
 どうしたら良いのかわからない。

「辛く、なかったのか?」
「番以外とするのが地獄だって、誇張でも何でもなかったよ」
「そんなのは浮気じゃない」
「……ん。俺、祐志がそう言ってくれるって、捨てないでくれると信じて……馬鹿なことした。泣かないで」

 駄目だった。
 何で、健吾がそこまでしなきゃならないんだ。俺が自分でけりをつけられなかったからだ。

「俺が、俺のせいで健吾……」
「聞いて祐志、俺全然気にしてないんだ。祐志が俺を嫌にならないならそれでいいんだ。だから、これ」

 健吾が上着を落とした。
 エプロン……。

「嫌じゃなかったら、抱いて下さい」
「嫌なわけ、ないだろ……」

 健吾をぎゅっと抱きしめて、ベッドに連れて行った。
 酷いことをされてしまったんじゃないか、気が気でない。

「えっと……入れただけだよ?」
「~~だけじゃないだろ」
「ごめん……」

 健吾が俺の機嫌を取るように、顔にキスをしてくれる。
 本当に全然気にしてないのが意味不明だ。

「本当に気にしてないのか?」
「ちょっと……」
「やっぱり」
「じゃなくて、もしかして彼の初めてだったらどうしようって、後から思って」

 悩むところがそこなのか?
 確かに、彼の新たなトラウマになっていなければいいが……今更だ。

「案外喜んでるかもしれないよ。健吾は綺麗だから」
「ないだろ。四十のおじさんだよ? 祐志を諦めてもらうためとはいえ、かわいそうなことしたかなぁ」
「他の奴の話はもういいよ」
「あ……」

 軽口を叩いて気を紛らわそうとしても、やっぱり無理だ。健吾が言葉を返すのに腹が立って、口を塞いでしまう。

 くそ、やっぱりエプロンはいい。
 健吾がこんな発想するはずがないから、……和久の入れ知恵か。
 よくわからない敗北感と無力感に、頭がぐちゃぐちゃになってどうにもならない。

「健吾、見せて」

 健吾がエプロンをたくし上げて足を開いた。
 いつも俺を受け止めてくれるそこは、赤く腫れていた。本当に、ここを……。怒りが込み上げてくる。

「腫れてる。痛い?」
「ん、大丈夫。祐志……ごめんなさい」

 俺の怒りを察して健吾が謝る。

「……くそっ!」

 酷い目に遭わせてしまったのは分かる。俺への怒りがあっても仕方がない。でも健吾にぶつけるなんて。
 健吾も健吾だ。もっと大事にしろよ。畜生。

「あ、あぁ…、ん」

 引き寄せて腰を上げさせて、そこを舐めまくった。
 すぐに濡れて、健吾がもどかしげに腰をよじる。

「ぅ、くそ、濡れてきた。こんな、痛そうなのに気持ちいいの?」
「ん……祐志、だから」

 ヒクヒクと震えるそこに、指を入れてぐいっと開いて中に深く舌を差し込んだ。

「ああっ、はぁ、あん、あ、中は、あっ」

 わざと音を立てて舐め回して、そこを仕上げる。
 他の奴の感触なんて、欠片も思い出せないように。
 健吾が自分で前を触ろうとするのをやめさせて、舌を差し込んだまま、入り口に歯を立てた。

「あああーっ!」

 びゅっと前から白濁を出して、エプロンがそれを受け止めた。

「はっ、ここだけでイクなんて、随分好きなんだな。……俺だけじゃ、足りないんだもんな」

 体を離して、健吾を解放した。
 体を横向きにして、荒い息をついている健吾が俺に尻を向け、自分でそこを開いて見せてきた。

「祐志しか欲しくない。ごめんなさい。お願い、祐志が欲しい」
「っ健吾」
「ああっ、ひ、あ、あぁっ、あ、あーっ、ぅあっ」
「健吾、健吾、馬鹿野郎、っ、あ」

 いつもならもっと優しくできるのに、今日は無理だ。
 勢いよく腰を打ち込みながら、それでも健吾が感じているのが分かって頭がぐちゃぐちゃになる。

「ーっ、は……」

 しっかりはめ込んで、奥に吐き出して少し落ち着いた。しばらくは出続ける。

「ぁ…ぁは…ぁ…ぁ…」

 健吾はヒクンヒクンと震えている。
 エプロンはドロドロだ。
 開いた隙間から乳首を摘むと、後ろがキュッと反応する。

「あっ、あぅ、ぁ…、だめ、あん」

 俺の腕を力なく掴んで、全然駄目じゃなさそうだ。

「こんなとこ、他の奴に……」
「っそんなの、してない。全然気持ち良くなかった。祐志しか、気持ち良くない……」
「他の奴と比べるなんて、くそ」

 俺しか知らないはずだったのに。
 怒りは独占欲だ。
 こんな激しい感情は、健吾にしか向かない。
 他の奴なんてどうでもいい。

 腹は立つのに、エプロンはやっぱり好きだ。
 俺の怒りを宥めるために、健吾が選んだのは正解だ。

 健吾は俺が何に怒っているか、分かっているのだろうか。

 抗えない誘惑に溺れながら、不安が膨らみ出す。
 健吾にとって今回のは浮気でも何でもない。
 必要な手段だったからと、全く気にしていない。

 ……お願いされたら流されるとか、ないよな!?
 自分の容姿にも身体にも無頓着な健吾。
 早く老けて、人目につかなくなってくれと願うしかなかった。





しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

運命だなんて言うのなら

riiko
BL
気が付いたら男に組み敷かれていた。 「番、運命、オメガ」意味のわからない単語を話す男を前に、自分がいったいどこの誰なのか何一つ思い出せなかった。 ここは、男女の他に三つの性が存在する世界。 常識がまったく違う世界観に戸惑うも、愛情を与えてくれる男と一緒に過ごし愛をはぐくむ。この環境を素直に受け入れてきた時、過去におこした過ちを思い出し……。 ☆記憶喪失オメガバース☆ 主人公はオメガバースの世界を知らない(記憶がない)ので、物語の中で説明も入ります。オメガバース初心者の方でもご安心くださいませ。 運命をみつけたアルファ×記憶をなくしたオメガ 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです ※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

処理中です...