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「あの旦那様、今しがたレイドリー男爵が邸宅に参られましてメリエッダお嬢様を出せと玄関先でわめいておりますが、いかが致しましょう?」

「……ようやく来たな。応接室に通せ、わたしが直接話をつける」

「お父様。ご指名のようですし、私も話し合いの場にご一緒してもよろしいでしょうか?」

「分かった、それならばこの機会にお前もあの男に言いたいことを洗いざらいぶちまけなさい」

「いえ、私はあくまでも傍観に徹して交渉の勉強をさせていただくことにします」

 ダズの案内は我が家の使用人に任せ、私と父はある物を準備をしてから彼の待つ応接室へと足を運びました。

「――おい、なんだあの慰謝料の額は⁉ そこらの平民が一生遊んで暮らせる金額じゃないか、少しふっかけているだろうこの金の亡者め……なんだ一人じゃないのか、この金の亡者どもめ!」

 ダズとは久しぶりに顔を合わせたというのに、開口一番にされたのは挨拶ではなく罵倒でした。
 彼とは過去話に花を咲かせるような楽しい再会になるとは確かに思っていませんでしたが、毎日顔をつき合わせていた相手からこのような対応をされるのはやはり胸にくるものがあります。

「いや一生は遊んで暮らせませんね、節約してもせいぜい半年が関の山ですよ、レイドリー男爵。世間知らずにもほどがありますな、さすがは平民の世情に疎いお貴族様といったところですか」

 この日を待ちわびたとばかりに父は皮肉を口にし、テーブルを挟んでダズと対面しました。
 私も父の横に並んで、イスに座ります。

「それで、今日はあくまでの件で参られたということでよろしいですかなレイドリー男爵」

「ふん、あれから知り合いの弁護士に話を伺ってみたが、やはり慰謝料はこちら側が支払わないといけないらしいからな! 面倒だが、そうだ!」

 父が言ってるのはそういう意味ではなく謝罪の意思があるかどうかを尋ねているのですが、彼はどうもそのことに気が付かれていないご様子。
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