俺を殺す君に!

馬酔木ビシア

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 人が食ってる時に急に話しかけやがって誰だよこら、面貸せやぁ!と声を掛けてきた奴の方を睨む。あ、パンくずは拭ったから。カッコつかないからな!



「こら、人が食ってる時に……」





 説教を垂れながら怒り半分、呆れ半分でそいつの顔を拝むと、まず飛び込んでくる明るめの茶髪。俺も生まれつき茶髪だけど、相手のは染めたっぽい茶髪だ。それを片側だけ編み込んでちょこん、と後ろの方で結んでいる。若干垂れ目で、目元には泣きぼくろがあって色っぽいけど、容姿はチャラ男。





 そして俺はこの美形チャラ男のことも見覚えがある。彼も『破滅』に出てくるからだ。






「わりわり、ついおもろくってさー、悪気はないからさ、ね?許して?」




「……許さんこともない」

 





 一応チャラさは滲み出てるが謝ってはくれたので許すと、彼はゲラゲラと笑った。






「君さ、成瀬クンだっけ?おもろいね。自己紹介でも言ったけど、俺っち夏木なつき由宇矢ゆうやっつーの、よろしくー」






 マジか、何も聞いてなかった…俺の一個前の奴やたら拍手の音でかいし長いなとは思ってたけど。


 ってかなんで自分の椅子を引いて、俺の方向いて座るんだよ。向かい合うの気まずいんだけど。






 ……まぁいいや、今の自己紹介で俺の記憶が間違ってないことが証明されたし。







 簡単に説明すると、今俺の目の前に座っている人物は『破滅の一途』のキャラで、作中まずまず地位がある夏木由宇矢という人物である。




 なんで地位があるかって?それはもちろん、彼が王道学園のスター、生徒会の一員だったから。話し方からなんとなく分かると思うが、いわゆるチャラ男会計である。しかも、語尾伸ばすタイプじゃなくて、百戦錬磨感ある海辺のあんちゃんとかナンパ師みたいなタイプのチャラさ。

 しかし正直、生徒会メンバーといえど、夏木…君(君付け似合わねー…)は作中あんまり出てこないという悲しい現状がある。颯斗の恋人の真澄をナンパして颯斗の独占欲刺激するみたいなダシに使われることくらいである。なのに最終的に他の生徒会メンバーと一緒に殺されるっていう理不尽。だいぶ可哀想な扱いだ。殺される早さでいうと、俺よりはマシかもしんないけど。結局死ぬことに変わりはない。



 そんなわけで俺は夏木…君に対してそんなに注目したことがなかったけど、どうやらこの、生徒会の中でも(作中では)影の薄いチャラ男会計と同じ教室になってしまったらしい。



 わお、それは分かったけどなんで俺そいつに話しかけられてんのー?しかも無駄に顔良いから普通に存在感がありまくってるし。深春なんか突然の美形チャラ男の振り向きに目をまん丸にしている。かわいいね。




 俺のなんだこいつ的な視線を受け取ったのか、夏木…君はへらりと狐みたいに笑ってこちらに身を乗り出した。香水でもつけてるのか、甘ったるい匂いが鼻を掠める。






「まぁそう警戒しないでよ。俺っち、実は昨日からずっとキミと話してみたかったんだよね」





「は?昨日…?」


 





 昨日って入学式じゃん、俺誰とも会話らしい会話した記憶ないんだけど?深春とも知り合ったの今日だし。





「あーいやいや違くて、俺っちが勝手にキミのこと気になっててさ」




「………嘘だろ、こんな教室でナンパ?」




「違うから!!そーじゃなくてさぁ、昨日の入学式でさ、キミがFクラスのヤンキー君に…ブフッ、んふふっ、レ、レッドホットチキンって言ってんの聞いてマジおもろかったから話してみたくなってさぁ……や、ば、思い出したらまた笑えてきた」






 マジでヤンキー君のあの間抜けヅラおもろすぎっしょwwwっと語尾に草を生やしながら腹を抱えるチャラ男に俺は、「あーそういえばそんなこともあったな」と懐かしい気持ちになった。一応昨日俺あいつと会話してたわ。ほぼ口論だけど。





「あ!あん時後ろで誰か笑ったと思ったけど、まさか…」




「いやーそれ俺っちだわ。堪えきれねーってあんなん」






 マジかよ、笑ってたのこいつだったのか。どうしよ、めっちゃどうでもいい情報なんだが。






「普通Fクラスの不良に言い返す奴なんてそうそういないのにさ、その上あんな……ブフッ、マジでサイコー」







 目尻に浮かんだ笑い涙を拭いながら夏木…君がこちらに視線を流す。こいつ顔は良いなやっぱ。作中はただの颯斗の独占欲起爆剤だったけど。そいつより死ぬの早い俺って…やめよう涙出てくる。





「俺っち、おもろい子大好きなんだよね。しかも成瀬クンからは俺の理想の……おっとあぶね。まぁとにかく、仲良くしたいと思ってさ」







 よろしくーと再度手を差し出され、俺は微妙な表情になった。う、うーん、俺はよろしくやっていけるビジョンがあんまり見えないんだけど……まぁ、でも、友達は多いに越したことはない、かな?





「まぁ、友達ならいいけど……あ、深春はいい?その、こいt、この人入っても」



「こいつからのこの人呼ばわりはウケる」



「へっ!?え、えと、ぼぼぼぼ僕は全然!!む、むしろこんなクラスの人気者と僕なんかが一緒にいて良いのかなというか、その……」



「よし、深春がいいなら良いや!!んじゃ、まぁ…よろしく」






 あわあわしながら忙しなく夏木…君(いやもう夏木でいっか)を見る深春がGoサインを出したので、俺はとりあえずこのチャラ男を受け入れることにした。



 まぁこいつが将来颯斗と真澄をくっつけるキューピッドになるかもしんないしな、うんうん。打算塗れだが悪く思わないでほしい。意外と仲良くなれるかもとかも思ってるから。打算は半分しかないから。うん。





 俺が差し出された手を握ると、夏木はへらーと軽薄な感じのする笑みを浮かべて言った。






「そんじゃこれからよろしく、!!」



「おい待て今すぐその変なあだ名やめろ!!」







 友達になって3秒で後悔した。




 なるなるの方が良かった?じゃねー!!知育菓子みたいなあだ名つけんな!!
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