124 / 128
3
しおりを挟む龍神side
あれから西連寺と俺は完全にすれ違ってしまい、口も訊かない日々が続いていた。俺はどうしても気まずくて、教室に行く頻度が少なくなった。西連寺と顔を合わせると、あの日のことを思い出してしまって嫌だった。
貸してもらって返せていないジャージは、洗濯後紙袋に入ったままずっと風紀室の机の上に置かれている。俺は椅子に座ってそれを眺めながら、溜息を吐いた。頭がぼーっとする。少し根を詰めすぎたのだろうか。
その時、ガチャッとドアが開いて、数十分前に所用で出て行っていた亘が入ってきた。はっとして思考の鈍りを振り払うと、亘がこちらを見て微笑んだ。
「委員長」
「…ん?」
手に持っていた書類を置いて、亘が俺の隣まで歩み寄ってくる。呼ばれて顔を上げると、亘は手を伸ばして俺の顔に触れてきた。
「最近、すごく遅くまでお仕事なさっていますから…今日はもう、休んでください」
そう言って俺の目にかかっている前髪を耳に掛ける。
「……もう、理由は聞かないんだな」
亘は最初、俺の様子を不審がっていたが、今ではもう何も聞かない。何も言わずにいつも通り俺に接して、いつもと同じコーヒーを淹れてくれる。きっと迷惑を掛けているはずなのに、踏み込んでこない亘の様子がありがたくて、けれど同時に後ろめたくもなって俺は思わずそう返した。
「私は、あなたの嫌がることはしませんから」
その瞳には相変わらず優しげな光が浮かんでいたが、何を考えているのかまでは読み取れなくて困惑した。でも確かに頭があまりはっきりしないし、ここは一度言葉に甘えて帰った方がいいかもしれない。
「そ、うか。じゃあ……その、甘えてもいいか?」
「…はい、残りはお任せください」
ふわりと柔らかく笑って亘は俺の荷物を掴むとドアまで見送ってくれた。去り際に一言、声をかけられる。
「委員長」
「っ、嗚呼、なんだ?」
「…………いえ、なんでもありません。また明日」
それを最後に、音を立ててドアが閉まる。亘が何かを言いかけたように見えたが、結局先の言葉は聞けなかった。
仕事を失うと、俺にはもうやることが残っていない。ここは自室に帰って寝るなりゆっくり過ごすなりして休むべきなのだろうが、どうもそんな気分にはなれなかった。きっと寝てもすぐに目が覚めてしまうだろう。しかし俺には帰ることしか、選択肢がなかった。気乗りしないまま、寮に帰ろうと廊下を歩く。
「…………っ?」
校舎の外に出た時、携帯に着信があった。
西連寺かもしれない。
少しの期待と不安を抱きながら携帯を開いて、思わず目を見開く。見覚えのない相手から通知が来ていた。
名前は、『Sumi』。知り合いにそんな名前のやつはいないと思うのだが……怪訝に思ってメッセージを確認すると、こんなことが書かれていた。
『突然すいません、副会長から連絡先教えてもらいました。この間の件なんですけど、いつ会えますか?俺はいつでも良いんで連絡お願いします!』
その文面と読み取った相手の雰囲気で、俺はやっとぴんと来た。
これを送ったのは、藍野だな。
おそらく『Sumi』は彼の下の名前の『純』を名前読みしたもので、あだ名のようなものだろう。うっかりしていたのか何なのか分からないが本名を書き忘れたらしい。この間の件とは、二人で話せないかという誘いのことだろう。
苦笑しながら返信する。なるほど、気分が優れないところだったから、藍野と会って話すことでいくらか安定するかもしれない。
『事情はよく分かった。ちょうど仕事を休ませてもらったから、今からでも良いんだがそっちは大丈夫そうか?』
18
あなたにおすすめの小説
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
牙を以て牙を制す
makase
BL
王位継承権すら持てず、孤独に生きてきた王子は、ある日兄の罪を擦り付けられ、異国に貢物として献上されてしまう。ところが受け取りを拒否され、下働きを始めることに。一方、日夜執務に追われていた一人の男はは、夜食を求め食堂へと足を運んでいた――
自分勝手な恋
すずかけあおい
BL
高校の卒業式後に幼馴染の拓斗から告白された。
拓斗への感情が恋愛感情かどうか迷った俺は拓斗を振った。
時が過ぎ、気まぐれで会いに行くと、拓斗には恋人ができていた。
馬鹿な俺は今更自覚する。
拓斗が好きだ、と――。
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる