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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
余裕の戦いにも彼に気は休まらない 2
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「宝箱が出現するかどうかが、気になっていたんでしょう?」
「・・・へ?宝箱?」
しかしケネスが口にした言葉は、カイが恐れていた事実の暴露とは、全く違った内容であった。
彼は部屋を守る魔物が一掃された後に出現する宝箱の事を、カイが探していたと思ったようだった。
確かにこのダンジョンには往々にして、魔物を全滅させた後に宝箱が出現する事がある。
しかしそれはこのダンジョンに挑むための最初の試験となっているこの部屋の事ではなく、それ以降の話であった。
そのため虚を突かれたカイは、ただただ目を丸くして、驚く事しか出来ずにいた。
「そ、そうですそうです!!宝箱が出ないかなーって、探してたんですが、いやぁー!残念残念!!どうやら、今回は出なさそうですね!!」
それでもカイがそれにすぐ反応し、話を合わせられたのは幸運だっただろう。
彼は大袈裟にケネスの言葉に同意する事によって、自らの不自然な振る舞いを誤魔化そうとしていた。
それは果たして、成功するだろうか。
大袈裟なぐらい声を張り上げて、頭を掻き毟っては何かを誤魔化そうとしているカイの姿に、一行は皆一様にポカンとした表情を見せていた。
「宝箱?宝箱とは一体何なのだ?いや、待てよ・・・そうだ!宝箱といえば、コープ嬢から聞いたあれの事か!!ここに出てくるのか!?」
カイの大袈裟なリアクションによって、どこか気まずい空気が漂っていた空間は、エヴァンの無邪気な声によってその雰囲気を一気に塗り替えられる。
カイやケネスが口にする存在の意味を最初は掴みかねていたエヴァンも、アトハース村でアシュリー達から聞いた事を思い出せば、その存在を理解する事も出来る。
このダンジョン特有の仕組みであるその存在を思い出した彼は、その瞳を輝かせるとそれを実際に目にする事が出来るのかと周りに問い掛けている。
そんな彼の姿に周りの者達がどこか気まずそうにしていたのは、何も先ほどまでの空気を引き摺っていた訳ではないだろう。
「期待してるとこ、悪いけどよ。ここではもう出ないと思うぜ、勇者の坊ちゃんよぉ。前来た時に実際に宝箱が出てくるところを見たが・・・出るときゃ、結構すぐに出てきたもんよ。なぁ、ケネス?」
「そうだね。そういう事なので、レオナルド様。残念ですが、ここにはそれは出てこないと思いますよ」
「むぅ、そうなのか・・・残念なのだ」
前にダンジョンに訪れた経験から、ここにはもう宝箱は出てこないという事実をエルトンははっきりと告げる。
記憶が若干曖昧なのか、エルトンは相棒であるケネスにもそれに対する同意を求めていたが、彼もそれには反論の一つもなく頷いていた。
そんな彼らの言葉にエヴァンはしゅんと肩を落とすと、落ち込んだ様子を見せている。
「はははっ、そんな落ち込むなって勇者の坊ちゃん!すぐに見せてやるからよ!」
「っ!?げほっ、けほっ・・・そ、そうだな!アーネットの言う通りなのだ!」
落ち込んだ様子をみせるエヴァンの背中を叩いては、すぐに実際にそれを見せてやるとのたまったエルトンの自信に偽りはないだろう。
それだけの事を言ってのけられる実力を、彼は先ほど披露している。
そんな彼に背中を強かに叩かれたエヴァンは、軽く咳き込んでしまっていたが、その効果は確かにあったようで、すぐに元気を取り戻しては顔を上へと上げていた。
「よし!何とか誤魔化せたな・・・いやぁ、助かった助かった。ありがとうございます、勇者様」
そんな彼らのやり取りを眺めては、カイは一人静かに拳を握り締めてガッツポーズを作っている。
エヴァンの振る舞いのおかげで彼の適当な誤魔化しは、すっかりうやむやとなってしまっており、今ではもはや誰も気にしていないように思える。
話題の中心となっているエヴァンから徐々に遠ざかり、会話の輪から外れたカイは小声でぶつぶつと呟くと、彼へと感謝を述べていた。
「しかし、特に何も仕掛けてくる様子がないな・・・?あれ、俺ちゃんと計画を遂行するように言ったよな?」
不自然な振る舞いをしていた事をうまく誤魔化せた事に安堵すれば、今度はその警戒していた事態が一向に起こらないことに不審を感じもする。
カイは一向にやってくる気配のない襲撃に首を傾げると、もしかするとヴェロニカ達にうまく意図が伝わっていなかったんではないかと疑い始めていた。
「いや、待てよ・・・そういえば、ヴェロニカも最初は歓迎するとか言ってたような?という事は、最初の内はあんまり警戒しなくてもいいのか?」
ショックの余りヴェロニカ達が話す計画をほとんど聞いていなかったカイも、その冒頭のやり取りだけは憶えている。
彼女達は確か、今回の計画の事を最初は勇者歓迎計画と言っていなかったか。
それは皮肉的な表現だとしても、勇者を確実に抹殺するために、彼をダンジョンの奥深くへと誘うのは有効な手段に思える。
そう考えれば、まだダンジョンの入口に近いこの地点では、危険な襲撃は仕掛けはないものと考えるのが自然なのかもしれない。
「うーん、でもなぁ・・・計画の内容を聞いてなかったから、どこから仕掛けられるかも分かったもんじゃないし、警戒を解く訳にもいかないよな」
道理としては分かる理屈も、計画の詳細を聞いていないという事実の前では、不確かな根拠にしかなりえない。
この場に襲撃がないことは納得出来たカイも、それがどこまで続くかなどという事は分かりようもない。
そのため彼は再び警戒を強めると、頻りに周囲を窺い始めていた。
「・・・キルヒマン様、皆様先に進まれたようですが?」
「す、すみません!考え事をしてて・・・すぐに向かいます!」
会話の輪から外れて考え事に没頭していたカイは、周りの者達が先に進んでしまった事にも気づかずにいた。
一人、一向にその場を動こうとしないカイに対して、冷たい目をしたアビーが声を掛けてくる。
その声にようやく自分が一人、置いていかれそうになっている事に気づいたカイは、慌てて走り始めると先行しているエヴァン達の下へと向かっていく。
「やはり、怪しいですね。ただの商人ではないようですが・・・一体何者なのか」
そんな彼の姿を見送ったアビーは一人、冷たい瞳でその姿を見定めていた。
小声でぶつぶつと呟いていたカイの言葉は、如何に鋭い聴覚を持つ彼女でも不明瞭でちゃんと聞き取る事は出来なかったが、その不自然な振る舞いを目にする事は出来る。
それまでも怪しい振る舞いは随所にみせていたカイだが、このダンジョンに入ってからはその挙動不審さを加速させている。
それらを鑑みれば、彼はまさしく警戒に値する人物であろう。
しかしと、アビーは思う。
果たして彼は、本当にそんな人物なのかと。
「怪しい人物なのは間違いないのですが、あの後姿は余りに無防備・・・これは一体、どういう事なのでしょうか」
エヴァン達の下へと急ぐカイの後姿は忙しなく、とても後ろや周りを警戒しているようには見えない。
ここでアビーが後ろから襲い掛かれば、彼はその命をあっさりと落としてしまうように思える。
彼が醸し出す怪しい雰囲気とその無防備な姿のギャップに、彼女はその人物像をうまく策定する事が出来ずに頭を悩ませてしまっていた。
「警戒だけは、怠る訳にはいけませんね・・・例え、あのような姿を目にしても」
カイがどういった人物であっても、その警戒は怠らないと決意するアビーの目の前で、カイは豪快にすっ転んでしまっていた。
それは彼が警戒に値する人物かどうか判断を迷わせていたアビーの心をさらに迷わせるが、彼女は自戒するように呟きを漏らすと、前へと歩みを進め始めていた。
それは派手に地面へと転び、今だ蹲ってしまっているカイを助け起こしにいくためであろうか。
アビーが伸ばした手を、カイが握るのはこの少し後の事であった。
「・・・へ?宝箱?」
しかしケネスが口にした言葉は、カイが恐れていた事実の暴露とは、全く違った内容であった。
彼は部屋を守る魔物が一掃された後に出現する宝箱の事を、カイが探していたと思ったようだった。
確かにこのダンジョンには往々にして、魔物を全滅させた後に宝箱が出現する事がある。
しかしそれはこのダンジョンに挑むための最初の試験となっているこの部屋の事ではなく、それ以降の話であった。
そのため虚を突かれたカイは、ただただ目を丸くして、驚く事しか出来ずにいた。
「そ、そうですそうです!!宝箱が出ないかなーって、探してたんですが、いやぁー!残念残念!!どうやら、今回は出なさそうですね!!」
それでもカイがそれにすぐ反応し、話を合わせられたのは幸運だっただろう。
彼は大袈裟にケネスの言葉に同意する事によって、自らの不自然な振る舞いを誤魔化そうとしていた。
それは果たして、成功するだろうか。
大袈裟なぐらい声を張り上げて、頭を掻き毟っては何かを誤魔化そうとしているカイの姿に、一行は皆一様にポカンとした表情を見せていた。
「宝箱?宝箱とは一体何なのだ?いや、待てよ・・・そうだ!宝箱といえば、コープ嬢から聞いたあれの事か!!ここに出てくるのか!?」
カイの大袈裟なリアクションによって、どこか気まずい空気が漂っていた空間は、エヴァンの無邪気な声によってその雰囲気を一気に塗り替えられる。
カイやケネスが口にする存在の意味を最初は掴みかねていたエヴァンも、アトハース村でアシュリー達から聞いた事を思い出せば、その存在を理解する事も出来る。
このダンジョン特有の仕組みであるその存在を思い出した彼は、その瞳を輝かせるとそれを実際に目にする事が出来るのかと周りに問い掛けている。
そんな彼の姿に周りの者達がどこか気まずそうにしていたのは、何も先ほどまでの空気を引き摺っていた訳ではないだろう。
「期待してるとこ、悪いけどよ。ここではもう出ないと思うぜ、勇者の坊ちゃんよぉ。前来た時に実際に宝箱が出てくるところを見たが・・・出るときゃ、結構すぐに出てきたもんよ。なぁ、ケネス?」
「そうだね。そういう事なので、レオナルド様。残念ですが、ここにはそれは出てこないと思いますよ」
「むぅ、そうなのか・・・残念なのだ」
前にダンジョンに訪れた経験から、ここにはもう宝箱は出てこないという事実をエルトンははっきりと告げる。
記憶が若干曖昧なのか、エルトンは相棒であるケネスにもそれに対する同意を求めていたが、彼もそれには反論の一つもなく頷いていた。
そんな彼らの言葉にエヴァンはしゅんと肩を落とすと、落ち込んだ様子を見せている。
「はははっ、そんな落ち込むなって勇者の坊ちゃん!すぐに見せてやるからよ!」
「っ!?げほっ、けほっ・・・そ、そうだな!アーネットの言う通りなのだ!」
落ち込んだ様子をみせるエヴァンの背中を叩いては、すぐに実際にそれを見せてやるとのたまったエルトンの自信に偽りはないだろう。
それだけの事を言ってのけられる実力を、彼は先ほど披露している。
そんな彼に背中を強かに叩かれたエヴァンは、軽く咳き込んでしまっていたが、その効果は確かにあったようで、すぐに元気を取り戻しては顔を上へと上げていた。
「よし!何とか誤魔化せたな・・・いやぁ、助かった助かった。ありがとうございます、勇者様」
そんな彼らのやり取りを眺めては、カイは一人静かに拳を握り締めてガッツポーズを作っている。
エヴァンの振る舞いのおかげで彼の適当な誤魔化しは、すっかりうやむやとなってしまっており、今ではもはや誰も気にしていないように思える。
話題の中心となっているエヴァンから徐々に遠ざかり、会話の輪から外れたカイは小声でぶつぶつと呟くと、彼へと感謝を述べていた。
「しかし、特に何も仕掛けてくる様子がないな・・・?あれ、俺ちゃんと計画を遂行するように言ったよな?」
不自然な振る舞いをしていた事をうまく誤魔化せた事に安堵すれば、今度はその警戒していた事態が一向に起こらないことに不審を感じもする。
カイは一向にやってくる気配のない襲撃に首を傾げると、もしかするとヴェロニカ達にうまく意図が伝わっていなかったんではないかと疑い始めていた。
「いや、待てよ・・・そういえば、ヴェロニカも最初は歓迎するとか言ってたような?という事は、最初の内はあんまり警戒しなくてもいいのか?」
ショックの余りヴェロニカ達が話す計画をほとんど聞いていなかったカイも、その冒頭のやり取りだけは憶えている。
彼女達は確か、今回の計画の事を最初は勇者歓迎計画と言っていなかったか。
それは皮肉的な表現だとしても、勇者を確実に抹殺するために、彼をダンジョンの奥深くへと誘うのは有効な手段に思える。
そう考えれば、まだダンジョンの入口に近いこの地点では、危険な襲撃は仕掛けはないものと考えるのが自然なのかもしれない。
「うーん、でもなぁ・・・計画の内容を聞いてなかったから、どこから仕掛けられるかも分かったもんじゃないし、警戒を解く訳にもいかないよな」
道理としては分かる理屈も、計画の詳細を聞いていないという事実の前では、不確かな根拠にしかなりえない。
この場に襲撃がないことは納得出来たカイも、それがどこまで続くかなどという事は分かりようもない。
そのため彼は再び警戒を強めると、頻りに周囲を窺い始めていた。
「・・・キルヒマン様、皆様先に進まれたようですが?」
「す、すみません!考え事をしてて・・・すぐに向かいます!」
会話の輪から外れて考え事に没頭していたカイは、周りの者達が先に進んでしまった事にも気づかずにいた。
一人、一向にその場を動こうとしないカイに対して、冷たい目をしたアビーが声を掛けてくる。
その声にようやく自分が一人、置いていかれそうになっている事に気づいたカイは、慌てて走り始めると先行しているエヴァン達の下へと向かっていく。
「やはり、怪しいですね。ただの商人ではないようですが・・・一体何者なのか」
そんな彼の姿を見送ったアビーは一人、冷たい瞳でその姿を見定めていた。
小声でぶつぶつと呟いていたカイの言葉は、如何に鋭い聴覚を持つ彼女でも不明瞭でちゃんと聞き取る事は出来なかったが、その不自然な振る舞いを目にする事は出来る。
それまでも怪しい振る舞いは随所にみせていたカイだが、このダンジョンに入ってからはその挙動不審さを加速させている。
それらを鑑みれば、彼はまさしく警戒に値する人物であろう。
しかしと、アビーは思う。
果たして彼は、本当にそんな人物なのかと。
「怪しい人物なのは間違いないのですが、あの後姿は余りに無防備・・・これは一体、どういう事なのでしょうか」
エヴァン達の下へと急ぐカイの後姿は忙しなく、とても後ろや周りを警戒しているようには見えない。
ここでアビーが後ろから襲い掛かれば、彼はその命をあっさりと落としてしまうように思える。
彼が醸し出す怪しい雰囲気とその無防備な姿のギャップに、彼女はその人物像をうまく策定する事が出来ずに頭を悩ませてしまっていた。
「警戒だけは、怠る訳にはいけませんね・・・例え、あのような姿を目にしても」
カイがどういった人物であっても、その警戒は怠らないと決意するアビーの目の前で、カイは豪快にすっ転んでしまっていた。
それは彼が警戒に値する人物かどうか判断を迷わせていたアビーの心をさらに迷わせるが、彼女は自戒するように呟きを漏らすと、前へと歩みを進め始めていた。
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