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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
カイ・リンデンバウムは自らの目的のため暗躍する 3
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「ま、不味いぞアビー!?こ、これは、どうすればいいのだ!?」
「まずは、落ち着きください坊ちゃま。お二人ならば、あの程度の窮地などすぐに・・・お下がりを、坊ちゃま」
頼りにしていた冒険者の二人が拘束されてしまった事に、エヴァンは慌てふためき傍らに佇むアビーへと助けを求めている。
エヴァンから助けを求められたアビーは、こんな状況にありながらも勤めて冷静に振舞っていた。
しかしそれも彼女達の下へと、ケネスが相手をしていたゴブリンが近づいてくるまでだ。
そのゴブリンが何故拘束されている冒険者の二人よりも、戦いに参加していなかった彼女達を優先したのかは分からない。
それは単に、そちらの方が近かったというだけかもしれない。
しかしはっきりと近づいてくるゴブリンの姿に、アビーは静かにスカートの下に括り付けていたナイフを取り出すと、エヴァンを後ろへと下がらせていた。
「あれ?そっちが戦う感じ?不味い不味い!勇者様の力が見たいだけで、コレットさんが傷つく所を見たい訳じゃないんだよ!あぁ、もう!!」
エヴァンを庇うように前に立ち、巨大な斧を両手に構えるゴブリンへと相対したアビーの姿に、カイはそんなの望んでいないと悲鳴を上げている。
実の所、アビーはそのゴブリン相手に多少ならば時間を稼ぐ程度の実力は備えている。
しかしそんな事実を知る由もないカイの視点からは、彼女の姿は主人のために命を投げ打つメイドそのものでしかない。
そんな彼女の事を、彼が見捨てる事が出来る訳もない。
気付けばカイは、無我夢中でそのゴブリンに向かって走り出してしまっていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
カイが自らの立場をはっきりと自覚していたならば、そのゴブリンに命令すればいいだけだったのだと、気付く事も出来ただろう。
しかし目の前の忠義の女性の危機に、無我夢中で駆け出してしまった彼にそんな余裕はない。
そしてそれは、いきなり目の前に現れた彼の姿に、それが自らの主人だと知っても振り下ろした斧を止めることの出来ない、そのゴブリンも同じであった。
「キルヒマン!!」
「えっ!?うおっ、マジか!?」
エヴァンの叫び声に、ようやく自分の身に危険が迫っていると気付いたカイは、今更ながら驚きの声を上げている。
しかしそれに気付いたとして、咄嗟に身を躱せるほどの身体能力をカイは持ち合わせてはいない。
彼が今出来るのは、両手を掲げて目を瞑り、痛みに備えることだけだった。
「・・・ん?あれ?どうなったんだ?」
しかし覚悟した筈の痛みは、いつまで待っても訪れる事はなかった。
それはそのゴブリンが、何とか斧を止めたという事ではない。
その証拠に瞑っていた目蓋を開けたカイの目には、地面へと突き刺さった斧の姿がはっきりと見えている。
その光景に、カイは訳が分からないと首を捻っていた。
彼にはそれをどうやって躱したのか、皆目見当つかないようだった。
もし彼がその理由を探すのならば、目を瞑っている間に僅かに聞こえた、何か金属を滑らせるような物音がヒントになるかもしれない。
「す、凄いのだ!キルヒマン!!一体どうやったのだ?こちらからは、まるですり抜けたように見えたぞ!!」
「え、えーっと・・・い、今はそれ所ではないので!!う、うおぉぉぉ!!!」
一切軌道を変えずに振り下ろされた斧は、その標的であったカイを全く傷つけずに地面へと、その刃を落としている。
その姿に、エヴァンは思わず驚きの声を上げていた。
それもその筈であろう、彼らの視点からだとその斧は、カイの身体をすり抜けたようにしか見えなかったのだから。
それをどうやったのかと聞かれても、当の本人にすらそれは分からない。
エヴァンからの質問に答えることが出来ないカイは、それを誤魔化すように目の前にゴブリンへと飛び掛っていた。
『暴れるなよ?だが、適度に抵抗してそれっぽく見せるんだ。いいな?』
カイが目の前のゴブリンへと飛び掛る動きは、その戦闘経験のなさも相まって隙だらけの酷いものであった。
しかし目の間の存在が自らの主人だと認識したゴブリンは、それに対して何も仕掛けることはせず、為すがままにカイに後ろへと回りこまれ、羽交い絞めにされてしまっていた。
『は、ははっ!』
カイがゴブリンの耳元で囁いた声は小さい。
そしてそのゴブリンが返した了承の言葉はゴブリン達の言語であり、それはエヴァン達には聞き取れるものではないだろう。
そのため多くの人の前で繰り広げられた八百長の会話は、誰にも聞き取られる事はなく、今もそのゴブリンは適度な頻度でカイに抵抗を示していた。
「勇者様!!私が押さえておきます!今の内に!!!」
カイは抵抗している振りをしているだけのゴブリンを、必死で押さえ込んでいる演技を振舞いながら、エヴァンへと訴えかけている。
自分がこのゴブリンを押さえているから、今の内にその聖剣を抜いて、このゴブリンを仕留めてくださいと。
「わ、私にか?え、えーっと・・・それはだな」
カイの必死な呼びかけは、意外なほどに真に迫っている。
しかしそんな呼び掛けを受けても、エヴァンの返事は歯切れの悪いものであった。
それも仕方のないことだろう、彼は勇者でもなければ、その背中に背負っている聖剣は張りぼてでしかないのだから。
「勇者様、お願いします!!私も長くは持ちません・・・ぐっ、この・・・お願いします、その剣で・・・聖剣でこの魔物をお倒しください!!」
なにやら歯切れの悪いエヴァンの態度に、カイは畳み掛けるように必死に訴えている。
カイの腕の中で暴れるゴブリンはもはや、彼が率先して動かしているような様相を呈していたが、少なくとも外から見れば激しく争っているように見えるだろう。
「うむむ・・・私も助けたいのは山々なのだ。しかしな、その・・・それは難しいのだ」
カイの再三の訴えかけにも、エヴァンの返事は歯切れの悪いまま。
アビーも隙を窺ってはそのゴブリンに狙いを定めているが、彼女にそれを一撃で仕留めきるほどの技量ない。
それ以上に彼女は、そのゴブリンを押さえているカイの事を信用していないという事情もあった。
スライムに拘束されている二人の冒険者も、ようやくエルトンがその拘束から逃れた所で、残ったゴブリンに襲い掛かられている彼に、そこへと対処するのは難しいだろう。
そんなぐだぐだの状況に変化が訪れるのは、外からの介入を待つしかなかった。
「まずは、落ち着きください坊ちゃま。お二人ならば、あの程度の窮地などすぐに・・・お下がりを、坊ちゃま」
頼りにしていた冒険者の二人が拘束されてしまった事に、エヴァンは慌てふためき傍らに佇むアビーへと助けを求めている。
エヴァンから助けを求められたアビーは、こんな状況にありながらも勤めて冷静に振舞っていた。
しかしそれも彼女達の下へと、ケネスが相手をしていたゴブリンが近づいてくるまでだ。
そのゴブリンが何故拘束されている冒険者の二人よりも、戦いに参加していなかった彼女達を優先したのかは分からない。
それは単に、そちらの方が近かったというだけかもしれない。
しかしはっきりと近づいてくるゴブリンの姿に、アビーは静かにスカートの下に括り付けていたナイフを取り出すと、エヴァンを後ろへと下がらせていた。
「あれ?そっちが戦う感じ?不味い不味い!勇者様の力が見たいだけで、コレットさんが傷つく所を見たい訳じゃないんだよ!あぁ、もう!!」
エヴァンを庇うように前に立ち、巨大な斧を両手に構えるゴブリンへと相対したアビーの姿に、カイはそんなの望んでいないと悲鳴を上げている。
実の所、アビーはそのゴブリン相手に多少ならば時間を稼ぐ程度の実力は備えている。
しかしそんな事実を知る由もないカイの視点からは、彼女の姿は主人のために命を投げ打つメイドそのものでしかない。
そんな彼女の事を、彼が見捨てる事が出来る訳もない。
気付けばカイは、無我夢中でそのゴブリンに向かって走り出してしまっていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
カイが自らの立場をはっきりと自覚していたならば、そのゴブリンに命令すればいいだけだったのだと、気付く事も出来ただろう。
しかし目の前の忠義の女性の危機に、無我夢中で駆け出してしまった彼にそんな余裕はない。
そしてそれは、いきなり目の前に現れた彼の姿に、それが自らの主人だと知っても振り下ろした斧を止めることの出来ない、そのゴブリンも同じであった。
「キルヒマン!!」
「えっ!?うおっ、マジか!?」
エヴァンの叫び声に、ようやく自分の身に危険が迫っていると気付いたカイは、今更ながら驚きの声を上げている。
しかしそれに気付いたとして、咄嗟に身を躱せるほどの身体能力をカイは持ち合わせてはいない。
彼が今出来るのは、両手を掲げて目を瞑り、痛みに備えることだけだった。
「・・・ん?あれ?どうなったんだ?」
しかし覚悟した筈の痛みは、いつまで待っても訪れる事はなかった。
それはそのゴブリンが、何とか斧を止めたという事ではない。
その証拠に瞑っていた目蓋を開けたカイの目には、地面へと突き刺さった斧の姿がはっきりと見えている。
その光景に、カイは訳が分からないと首を捻っていた。
彼にはそれをどうやって躱したのか、皆目見当つかないようだった。
もし彼がその理由を探すのならば、目を瞑っている間に僅かに聞こえた、何か金属を滑らせるような物音がヒントになるかもしれない。
「す、凄いのだ!キルヒマン!!一体どうやったのだ?こちらからは、まるですり抜けたように見えたぞ!!」
「え、えーっと・・・い、今はそれ所ではないので!!う、うおぉぉぉ!!!」
一切軌道を変えずに振り下ろされた斧は、その標的であったカイを全く傷つけずに地面へと、その刃を落としている。
その姿に、エヴァンは思わず驚きの声を上げていた。
それもその筈であろう、彼らの視点からだとその斧は、カイの身体をすり抜けたようにしか見えなかったのだから。
それをどうやったのかと聞かれても、当の本人にすらそれは分からない。
エヴァンからの質問に答えることが出来ないカイは、それを誤魔化すように目の前にゴブリンへと飛び掛っていた。
『暴れるなよ?だが、適度に抵抗してそれっぽく見せるんだ。いいな?』
カイが目の前のゴブリンへと飛び掛る動きは、その戦闘経験のなさも相まって隙だらけの酷いものであった。
しかし目の間の存在が自らの主人だと認識したゴブリンは、それに対して何も仕掛けることはせず、為すがままにカイに後ろへと回りこまれ、羽交い絞めにされてしまっていた。
『は、ははっ!』
カイがゴブリンの耳元で囁いた声は小さい。
そしてそのゴブリンが返した了承の言葉はゴブリン達の言語であり、それはエヴァン達には聞き取れるものではないだろう。
そのため多くの人の前で繰り広げられた八百長の会話は、誰にも聞き取られる事はなく、今もそのゴブリンは適度な頻度でカイに抵抗を示していた。
「勇者様!!私が押さえておきます!今の内に!!!」
カイは抵抗している振りをしているだけのゴブリンを、必死で押さえ込んでいる演技を振舞いながら、エヴァンへと訴えかけている。
自分がこのゴブリンを押さえているから、今の内にその聖剣を抜いて、このゴブリンを仕留めてくださいと。
「わ、私にか?え、えーっと・・・それはだな」
カイの必死な呼びかけは、意外なほどに真に迫っている。
しかしそんな呼び掛けを受けても、エヴァンの返事は歯切れの悪いものであった。
それも仕方のないことだろう、彼は勇者でもなければ、その背中に背負っている聖剣は張りぼてでしかないのだから。
「勇者様、お願いします!!私も長くは持ちません・・・ぐっ、この・・・お願いします、その剣で・・・聖剣でこの魔物をお倒しください!!」
なにやら歯切れの悪いエヴァンの態度に、カイは畳み掛けるように必死に訴えている。
カイの腕の中で暴れるゴブリンはもはや、彼が率先して動かしているような様相を呈していたが、少なくとも外から見れば激しく争っているように見えるだろう。
「うむむ・・・私も助けたいのは山々なのだ。しかしな、その・・・それは難しいのだ」
カイの再三の訴えかけにも、エヴァンの返事は歯切れの悪いまま。
アビーも隙を窺ってはそのゴブリンに狙いを定めているが、彼女にそれを一撃で仕留めきるほどの技量ない。
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