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少年編 第1章
5-主人の枕攻撃
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「レナード!今日はお休みの日じゃないのかい?」
「はい、そうだったのですが、用事から返ってきたら、バンペルノ様が日焼けで肌を痛めているとお聞きしましたので、介抱をしたく参った次第です。」
「いいのに…。葉山は夜まで執務だと聞いていたけど?」
また面倒をかけていると思われるのは嫌だ。葉山がよかったのに、とエリアスは不服そうな顔をした。
「そうですが、軟膏を塗るぐらい私でも出来ます。普段から日焼けには気をつけて下さいとあれほど言っているのに、どうしてパラソルの下で読書なさらなかったんですか!」
やっぱり怒っているよな、そりゃそうだ、僕の自己管理がならないせいで、また彼に世話を焼いてもらう羽目になったんだ。自分が情けなくて謝罪の言葉が口をついていた。
「ごめんね、レナード」
「いえ、今週は天気も悪かったので、土曜日に日に当たりたいお気持ちは分かります。お体を拭いてから薬を塗りますので、どうぞベッドへ」
「うん」
エリアスは言われるがままベッドに腰掛けた。
「ではまず服を脱がせますね。痛いのは両腕・胸元・あと足ですね?」
赤く見えているところを確認してレナードが聞く。
「うん、それと首の後ろもなんだ」
申し訳なくなって、泣きそうなエリアスに気づかないふりをしてレナードは上着のボタンを外すと全て脱がせて、下はパンツ以外を脱いだ状態にした。
脱ぐときは擦れて少し痛い。察知したのか氷が入った洗面器の水で冷やしたタオルを絞りながらレナードが聞く。
「痛いですか?」
「ちょっとだけね。自業自得だよ」
「分かって下さるなら次から気をつけてください」
「はい」
もう、子供ではないんですから、とレナードは少しご機嫌斜めだ。やっぱり自分の世話が大変なのが嫌なんだろうな、とエリアスはケアレスな自分を後悔した。
そっと冷たいタオルを押し当てて肌の汚れと熱を少しずつ優しく拭きとっていく。
「ねぇ、レナード」
「何ですか?バンペルノ様」
「二人で居るときは昔みたいにエリアスって呼んで欲しいな。」
「……いいえ、エリアス・イーデン・バンペルノ伯爵。貴方は正式なバンペルノ家の嫡子。高等部に通う私がファーストネームで主人を呼ぶのは執事としてありえません。社交界にもこの前デビューされたばかりじゃないですか。」
「お願いだよ、レナード。最近僕にとっても冷たいじゃないか。だから僕は寂しくて堪らないんだよ?」
天使のような顔をして、眉根を寄せ、寂しいなどと呟かれると、可愛い願いをかなえてあげてしまいたくなる。
しかし、一般人のレナードがエリアスの傍にずっと居る方法は、唯一執事である事だけだ。
それ以外の方法では貴族の屋敷に居る事が出来ない。この居場所は守りたい。冷たくする事で自分の冷静さを保ちたいとレナードは考えていた。
だがレナードは下着一枚だけのエリアスに、寂しいなどと言われると、理性が吹き飛んでしまいそうだった。
主人は続ける。
「じゃぁ、エリアスは諦めるから、最近冷たい理由を教えてよ。」
エリアスは直球だ。いつも素直な彼は人を疑う事を知らない故に、高等部に入っても屈託なく正直に何でも聞いたり話したりする。そこが愛らしいところでもあった。
「それは気のせいですよ…。私が貴方に冷たく出来るはずがないでしょう。今でもこうして貴方の体を拭いてるじゃありませんか?」
「それはそうだけど。仕事の話じゃなくて、普段の話をしているんだよ、もうっ!」
エリアスはベッドに下着のままうつぶせになっていじけてしまった。
後ろから見ると首元が真っ赤に焼けてしまっている。またタオルを濡らすと、レナードはベッドの端に座り、主人の首元を冷やした。
「ふわぁっ!あっ!冷たくて気持ちいい…。すごく焼けてしまっているんだね…。ごめんね、レナード」
「そうですよ、大事なお体をこんなに焼けさせて」
「別に…、僕の事を大事に思ってくれている家族なんて居ないさ」
刹那にそう答えてしまった主人の顔は見えないが淋しい想いをしているのレナードにはよく分かった。両親から切り離され、大きな屋敷を与えられては居るが体のよい追放状態だ。本人も幼い頃から両親に会いたいと泣く日も少なくなかった。
それを癒すためにレナードもこの屋敷に住むことになったのだ。レナードが来てからエリアスの寂しさは片隅に追いやられたが、それでも両親に見放されたのだという事実が彼を苦しめない夜はなかった。
「それは違います。ご両親にはご両親の理由が御ありです。お辛いでしょうが、私と父と乳母のメラニーは貴方の事を本当に本当に大切に思っております」
「でも最近冷たい」
「冷たくありません。冷たいのはこのタオルです」
そういってレナードは冷たいタオルをわざと背中に被せて、主人をからかった。
「ひやぁ!!!冷たい!!ほら冷たいじゃないかぁ!このぉっ!」
エリアスは笑いながらうつぶせていた枕でレナードを叩いた。
レナードも笑いながら、枕を手で防ぎ、つかの間の若者らしい悪戯で主人の気を紛らわせた。
枕から飛び散る羽毛は明日掃除する。『このままだと風を引かせてしまうな』、そう思いレナードは介抱を終わらせようとする。
「さぁ、薬を塗ってしまいましょう」
「うん」
少しの遊びで主人の寂しさは紛れた様子だ。拗ねていた顔にまた穏やかな笑顔が戻る。
起き上がった彼の腕にゆっくりと軟膏を塗っていくと、エリアスは体を少し捩る。
「どうしたんですか?」
「ちょっとくすぐったいんだよ・・・」
顔を赤くして笑った。そして胸元を差し出す。
レナードは目を逸らしてしまった。ほとんど全裸のエリアスと戯れていたが、こう真正面から胸を突き出されて、少し寒さでとがった二つのピンクの突起を見せられると堪らない。
「ぬ、塗りますね。沁みないとは思いますが、痛ければおっしゃって下さい」
胸に少し冷たい軟膏を塗ると、エリアスの心臓はドキドキしだした。軟膏を塗っているレナードにもそれが分かるほどに…。
「ドキドキしていますね」
「あまり…人に触られた事がないから……。そんなところを触られると緊張してしまうだけさ」
真っ赤になった顔を逸らしたのはエリアスだった。
こんなに意識されると、興奮してしまう。レナードは、自分の腿を強く抓って、意識をそこへ集中させた。
「はい、そうだったのですが、用事から返ってきたら、バンペルノ様が日焼けで肌を痛めているとお聞きしましたので、介抱をしたく参った次第です。」
「いいのに…。葉山は夜まで執務だと聞いていたけど?」
また面倒をかけていると思われるのは嫌だ。葉山がよかったのに、とエリアスは不服そうな顔をした。
「そうですが、軟膏を塗るぐらい私でも出来ます。普段から日焼けには気をつけて下さいとあれほど言っているのに、どうしてパラソルの下で読書なさらなかったんですか!」
やっぱり怒っているよな、そりゃそうだ、僕の自己管理がならないせいで、また彼に世話を焼いてもらう羽目になったんだ。自分が情けなくて謝罪の言葉が口をついていた。
「ごめんね、レナード」
「いえ、今週は天気も悪かったので、土曜日に日に当たりたいお気持ちは分かります。お体を拭いてから薬を塗りますので、どうぞベッドへ」
「うん」
エリアスは言われるがままベッドに腰掛けた。
「ではまず服を脱がせますね。痛いのは両腕・胸元・あと足ですね?」
赤く見えているところを確認してレナードが聞く。
「うん、それと首の後ろもなんだ」
申し訳なくなって、泣きそうなエリアスに気づかないふりをしてレナードは上着のボタンを外すと全て脱がせて、下はパンツ以外を脱いだ状態にした。
脱ぐときは擦れて少し痛い。察知したのか氷が入った洗面器の水で冷やしたタオルを絞りながらレナードが聞く。
「痛いですか?」
「ちょっとだけね。自業自得だよ」
「分かって下さるなら次から気をつけてください」
「はい」
もう、子供ではないんですから、とレナードは少しご機嫌斜めだ。やっぱり自分の世話が大変なのが嫌なんだろうな、とエリアスはケアレスな自分を後悔した。
そっと冷たいタオルを押し当てて肌の汚れと熱を少しずつ優しく拭きとっていく。
「ねぇ、レナード」
「何ですか?バンペルノ様」
「二人で居るときは昔みたいにエリアスって呼んで欲しいな。」
「……いいえ、エリアス・イーデン・バンペルノ伯爵。貴方は正式なバンペルノ家の嫡子。高等部に通う私がファーストネームで主人を呼ぶのは執事としてありえません。社交界にもこの前デビューされたばかりじゃないですか。」
「お願いだよ、レナード。最近僕にとっても冷たいじゃないか。だから僕は寂しくて堪らないんだよ?」
天使のような顔をして、眉根を寄せ、寂しいなどと呟かれると、可愛い願いをかなえてあげてしまいたくなる。
しかし、一般人のレナードがエリアスの傍にずっと居る方法は、唯一執事である事だけだ。
それ以外の方法では貴族の屋敷に居る事が出来ない。この居場所は守りたい。冷たくする事で自分の冷静さを保ちたいとレナードは考えていた。
だがレナードは下着一枚だけのエリアスに、寂しいなどと言われると、理性が吹き飛んでしまいそうだった。
主人は続ける。
「じゃぁ、エリアスは諦めるから、最近冷たい理由を教えてよ。」
エリアスは直球だ。いつも素直な彼は人を疑う事を知らない故に、高等部に入っても屈託なく正直に何でも聞いたり話したりする。そこが愛らしいところでもあった。
「それは気のせいですよ…。私が貴方に冷たく出来るはずがないでしょう。今でもこうして貴方の体を拭いてるじゃありませんか?」
「それはそうだけど。仕事の話じゃなくて、普段の話をしているんだよ、もうっ!」
エリアスはベッドに下着のままうつぶせになっていじけてしまった。
後ろから見ると首元が真っ赤に焼けてしまっている。またタオルを濡らすと、レナードはベッドの端に座り、主人の首元を冷やした。
「ふわぁっ!あっ!冷たくて気持ちいい…。すごく焼けてしまっているんだね…。ごめんね、レナード」
「そうですよ、大事なお体をこんなに焼けさせて」
「別に…、僕の事を大事に思ってくれている家族なんて居ないさ」
刹那にそう答えてしまった主人の顔は見えないが淋しい想いをしているのレナードにはよく分かった。両親から切り離され、大きな屋敷を与えられては居るが体のよい追放状態だ。本人も幼い頃から両親に会いたいと泣く日も少なくなかった。
それを癒すためにレナードもこの屋敷に住むことになったのだ。レナードが来てからエリアスの寂しさは片隅に追いやられたが、それでも両親に見放されたのだという事実が彼を苦しめない夜はなかった。
「それは違います。ご両親にはご両親の理由が御ありです。お辛いでしょうが、私と父と乳母のメラニーは貴方の事を本当に本当に大切に思っております」
「でも最近冷たい」
「冷たくありません。冷たいのはこのタオルです」
そういってレナードは冷たいタオルをわざと背中に被せて、主人をからかった。
「ひやぁ!!!冷たい!!ほら冷たいじゃないかぁ!このぉっ!」
エリアスは笑いながらうつぶせていた枕でレナードを叩いた。
レナードも笑いながら、枕を手で防ぎ、つかの間の若者らしい悪戯で主人の気を紛らわせた。
枕から飛び散る羽毛は明日掃除する。『このままだと風を引かせてしまうな』、そう思いレナードは介抱を終わらせようとする。
「さぁ、薬を塗ってしまいましょう」
「うん」
少しの遊びで主人の寂しさは紛れた様子だ。拗ねていた顔にまた穏やかな笑顔が戻る。
起き上がった彼の腕にゆっくりと軟膏を塗っていくと、エリアスは体を少し捩る。
「どうしたんですか?」
「ちょっとくすぐったいんだよ・・・」
顔を赤くして笑った。そして胸元を差し出す。
レナードは目を逸らしてしまった。ほとんど全裸のエリアスと戯れていたが、こう真正面から胸を突き出されて、少し寒さでとがった二つのピンクの突起を見せられると堪らない。
「ぬ、塗りますね。沁みないとは思いますが、痛ければおっしゃって下さい」
胸に少し冷たい軟膏を塗ると、エリアスの心臓はドキドキしだした。軟膏を塗っているレナードにもそれが分かるほどに…。
「ドキドキしていますね」
「あまり…人に触られた事がないから……。そんなところを触られると緊張してしまうだけさ」
真っ赤になった顔を逸らしたのはエリアスだった。
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