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⑭
しおりを挟む大城は良くも悪くもクールな顔に似合わず強引だった。キスもコンパの帰りに突然され、その後のデートも濃密な夜も、全部大城にリードされた。今まで全部自分が主導で考えて家事や作業の諸々をしなければならなかった崇には大城の強引さが心地よかった。何を考えなくても、感情に身を任せても誰も困らない。誰も泣いたりしない。泣きたい時は泣いて、眠りたい時に眠れる。大城のわがままに付き合う事も多かったが、それはそれで彼を満たして上げれているようで嬉しかった。
頭が良く専門分野以外についてもよく勉強していた大城は原子の話やよく分からない量子力学を楽しそうに良く話した。本を見せられてもチンプンカンプンだが大城が話すと非現実的なものが具体性を持って身近に感じられて面白かった。雄弁に色々と語る大城の横顔を見るのが崇は好きで、大城に大好きという言葉以上の何かを感じてもいつもどう表現すればうまく伝わるのか分からなくてヤキモキする程ぞっこんだった。何せ生まれて初めてできた恋人。しかも秀才で美形でとても大事にされて幸せで頭がクラクラしそうだった。きっとこれまでの苦労は全部大城に出会うために必要だったのだと思えるほど崇は満たされた大学生活を送っていた。
だがそんな日は延々とは続いてくれなかった。寮の中で土日の人が出払う時間帯に二人でイチャイチャしているところを寮内の先輩に見つかった。
「お前ら、なにしてんの」
「べ、別にじゃれ合って遊んでただけです」
崇はすぐに繕ったが大城は冷たい顔で言い放った。綺麗な造形が冷たい顔をすると怖いのだと崇はこの時知った。
「俺たちが何をしてようと先輩には関係ないでしょ」
「ここは寮だぞ。お前ら前々から妖しかったけどさ、もしそういう類なら他のやつに迷惑掛かるから寮出て行けよ」
「何の類ですか? 俺たちがいつ誰に迷惑を掛けたっていうんですか。教えてください」
「いるだけで迷惑だって言ってんの」
「どうして迷惑なんですか」
「うつんだろ。今まで一緒に風呂入ってたと思うとぞっとするわ」
「男だからって誰彼構わず好きになるわけじゃないし、うつりません。デリカシーなさすぎ。無知すぎ。頭悪すぎ。いつの時代の人なんですか。時代錯誤もいいとこだ。それにこの俺があなたみたいな人に興味持つと思ってるんですか? その性格にそのルックスで?」
「お前!」
「先輩!」
馬鹿にされた先輩は大城を殴ろうと腕を伸ばし、止めに入った崇は大城の代わりに殴られたが、今度は大城がそれにキレて先輩を思いっきり殴った。先輩は口の中を切り、数針縫う事になって事が大きくなった。
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