15 / 21
⑮
しおりを挟む先輩は希望していた就職先に受かる事ができずモヤモヤしていたと突っかかった理由を話したが大城は度が過ぎる暴力を振るったとして停学処分を受けた。数週間の停学だったが大城は実家に帰るようにと言われた。三人とも寮生であったので停学中の大城を隔離するのがいいと大学側に判断されたからだ。
停学中の大城に毎日電話をしていたが、大城はマイノリティに対する理不尽さに憤りを膨らませていた。
「どうして俺たちは恋人同士なのにイチャイチャしてるだけで文句言われるんだ。納得いかない。大体向こうが俺たちを迷惑だとか言ってきた事が間違いなのに」
「そうだね、でもこの国はまだそういうの容認する傾向が薄いし」
「欧米はもっと進んでる」
「だね。でも俺たちまだ大学生だし、海外に行けないし、ね……」
「俺ずっと考えてたんだけど、大学辞めようかと思ってる」
「え? なんで!」
寝耳に水の話だ。どうしてそんなところにまで話が飛んでいったのか崇は狼狽えた。
「どうして辞めるだなんてことになったん。後二年で卒業なのに勿体ないじゃろ。学部は違うけど俺は大城と一緒に大学卒業したい。辞めるなんて言わんで……」
恋人同士と思われないからデートしている時に大城がナンパされるのが嫌だ。表で大っぴらに手を繋げないことも悲しいし、キスしたい時は誰も見ていない所じゃないとできないのも残念に思う。
それでも大城と一緒に過ごせる時間はとても幸せで、楽しくてずっと続いて欲しくてつらい事も多いけど、自分が今の自分だからこそ大城の恋人になれたと思う。つらいことも含めて全部一緒に分かち合って生きていきたい。そう思っていた。目の前に広げてくれた青春の風呂敷をはいこれで終わりと勝手に包んで終止符を打たれたようで鳩尾がぎゅうっと締め付けられた。
「人と違う事って罪かな。皆同じような原子で出来ているただの人間なのに」
「そんなことない」
「なんで俺たちは苦しまないといけないのかな」
「それは……」
差別はなくならない。男女間だって差別がある。アメリカに行けば移民が。インドに行けば階級差が。母親がいない事でさえ差別視された。見た目の差別、セクシャリティの差別、貧富の差別。言い出せばきりがないし公平な世の中なんてどこにもないような気がする。だから一緒に乗り越えていこうと思った。それほど大城がくれたものは崇の中では大きかった。
「大城……俺、」
「ごめん、色々当たっちゃって。少しの間一人で考えたい」
「でも、俺大城の事、好きだよ、だから」
「分かってる。また」
終わらしたくないのに通話は切れてしまった。大城の苦しみに寄り添えるはずなのに寄り添えない。同じ方向に向かっている筈なのに本当は同じじゃない気がして崇は涙が零れた。苦しんでいる恋人に何をしてあげたらいいのか分からなかった。感情論でしか答えてあげられない。この時ほど自分の頭が大城と同じくらい良ければいいのにと願ったことはない。
停学処分が明けた後も大城は学校には戻らなかった。
「大城君、休学するんだって~」
「うそぉ。イケメンがまた一人いなくなるなんて耐えられない」
「あれだけルックスいいならもしかして芸能界からスカウトされたりして」
学食で女子たちが噂話をしているのを聴いてまさかと思いSNSをチェックした。大城は顔のアップの写真数枚と風景を上げているだけでフォロワーが一万人近い。普段から街に出かけるとすぐにナンパされるのでもしかしたらスカウトもありうる。そう思った矢先に大城からメッセージが届いた。
『夜話せる?』
『うん』
『じゃぁ八時頃に連絡する』
『OK』
何気ない返事をしたが心臓はバクバクしていた。もしかして学校を辞める話は本格化したのだろうか。八時まで気が気ではなかった。
0
あなたにおすすめの小説
聖者の愛はお前だけのもの
いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。
<あらすじ>
ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。
ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。
意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。
全年齢対象。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
偽りの聖者と泥の国
篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」
自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。
しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。
壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。
二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。
裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。
これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。
-----------------------------------------
『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ
この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。
本編に救いはありません。
セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。
本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
青龍将軍の新婚生活
蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。
武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。
そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。
「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」
幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。
中華風政略結婚ラブコメ。
※他のサイトにも投稿しています。
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる