スケアクローと白いシャツ

小鷹りく

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 先輩は希望していた就職先に受かる事ができずモヤモヤしていたと突っかかった理由を話したが大城は度が過ぎる暴力を振るったとして停学処分を受けた。数週間の停学だったが大城は実家に帰るようにと言われた。三人とも寮生であったので停学中の大城を隔離するのがいいと大学側に判断されたからだ。


 停学中の大城に毎日電話をしていたが、大城はマイノリティに対する理不尽さに憤りを膨らませていた。


「どうして俺たちは恋人同士なのにイチャイチャしてるだけで文句言われるんだ。納得いかない。大体向こうが俺たちを迷惑だとか言ってきた事が間違いなのに」

「そうだね、でもこの国はまだそういうの容認する傾向が薄いし」

「欧米はもっと進んでる」

「だね。でも俺たちまだ大学生だし、海外に行けないし、ね……」

「俺ずっと考えてたんだけど、大学辞めようかと思ってる」

「え? なんで!」


 寝耳に水の話だ。どうしてそんなところにまで話が飛んでいったのか崇は狼狽えた。


「どうして辞めるだなんてことになったん。後二年で卒業なのに勿体ないじゃろ。学部は違うけど俺は大城と一緒に大学卒業したい。辞めるなんて言わんで……」


 恋人同士と思われないからデートしている時に大城がナンパされるのが嫌だ。表で大っぴらに手を繋げないことも悲しいし、キスしたい時は誰も見ていない所じゃないとできないのも残念に思う。

 それでも大城と一緒に過ごせる時間はとても幸せで、楽しくてずっと続いて欲しくてつらい事も多いけど、自分が今の自分だからこそ大城の恋人になれたと思う。つらいことも含めて全部一緒に分かち合って生きていきたい。そう思っていた。目の前に広げてくれた青春の風呂敷をはいこれで終わりと勝手に包んで終止符を打たれたようで鳩尾がぎゅうっと締め付けられた。


「人と違う事って罪かな。皆同じような原子で出来ているただの人間なのに」

「そんなことない」

「なんで俺たちは苦しまないといけないのかな」

「それは……」


 差別はなくならない。男女間だって差別がある。アメリカに行けば移民が。インドに行けば階級差が。母親がいない事でさえ差別視された。見た目の差別、セクシャリティの差別、貧富の差別。言い出せばきりがないし公平な世の中なんてどこにもないような気がする。だから一緒に乗り越えていこうと思った。それほど大城がくれたものは崇の中では大きかった。


「大城……俺、」

「ごめん、色々当たっちゃって。少しの間一人で考えたい」

「でも、俺大城の事、好きだよ、だから」

「分かってる。また」


 終わらしたくないのに通話は切れてしまった。大城の苦しみに寄り添えるはずなのに寄り添えない。同じ方向に向かっている筈なのに本当は同じじゃない気がして崇は涙が零れた。苦しんでいる恋人に何をしてあげたらいいのか分からなかった。感情論でしか答えてあげられない。この時ほど自分の頭が大城と同じくらい良ければいいのにと願ったことはない。


 停学処分が明けた後も大城は学校には戻らなかった。


「大城君、休学するんだって~」

「うそぉ。イケメンがまた一人いなくなるなんて耐えられない」

「あれだけルックスいいならもしかして芸能界からスカウトされたりして」


 学食で女子たちが噂話をしているのを聴いてまさかと思いSNSをチェックした。大城は顔のアップの写真数枚と風景を上げているだけでフォロワーが一万人近い。普段から街に出かけるとすぐにナンパされるのでもしかしたらスカウトもありうる。そう思った矢先に大城からメッセージが届いた。


『夜話せる?』

『うん』

『じゃぁ八時頃に連絡する』

『OK』

 何気ない返事をしたが心臓はバクバクしていた。もしかして学校を辞める話は本格化したのだろうか。八時まで気が気ではなかった。



 
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