現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

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「兄ちゃん済まない。先に謝っておく。こいつを俺を信じて持って来てくれたと思うが、こいつは俺一人で何とかなる物じゃない。持主の兄ちゃんに先に聞いておくが、支部長を呼んでもいいか?こいつは兄ちゃんの身の安全を確保する為にも、支部長の同席が必要不可欠になるようなヤバイ代物だ」

 今まで見せた事が無いような真剣な顔で俺に尋ねて来る。

 おじさんに迷惑を掛けられないので、俺は頷いて支部長の同席を認めた。

 俺の頷きを見て、おじさんはスマホを取り出すと、どこかに電話を掛け始めた。

 恐らく支部長だろう。

「もしもし、俺だ。ちょっと職員用の入口から武器屋に来てくれないか?・・・・・・、いや、緊急事態だ。今さっき探索者の手で特Sが持ち込まれた。・・・・・・・・・・・、あぁ探索者には許可を取ってある。それと万が一を考えて、俺の判断で店は臨時休業にしたが問題無いか?・・・・・・・、急ですまんが急いで来てくれ」

 通話を終えたおじさんはスマホをポケットにしまうと、冷蔵庫からペットボトルのお茶を3本持って来てカウンターに置いた。

「兄ちゃんお茶でいいか?って言ってもここにはお茶しかないがな」

 笑いながらそう言って、俺にお茶を渡してくれた。

 俺は礼を言ってからお茶を受け取り、「いただきます」と言ってからキャップを開けてお茶を一口飲んだ。

 すると、奥から誰かが走って入って来た。

 青笹さんだ。

「山本さん、特Sの持ち込みって本当ですか!誰が持ち込んだんですか!?」

 って言いながら俺とバッチリ目が合った、青笹さんは支部長だったんだ・・・。

「安達君ですか・・・。納得と言う
か、やっぱりと言うか・・・」

 俺を見て残念そうにするのはやめて欲しい・・・。

「それで持ち込まれた特Sはどこですか?」

 青笹さんがそう言うと、おじさん改め山本さんは、カウンターに置かれた多角形の瓶を指さした。

「まさか・・・、山本さんまさかこれは・・・」

「間違いなくエリクサーだ。俺も現物は初めて見るが、瓶の色と瓶の角の数、瓶の形と中身の色、全てが過去に発見された物のデータと一致している。これは世界がひっくり返る事になるぞ」

 山本さんがそう言うと、青笹さんはコメカミを指で解しながら、「次から次へと・・・」と呟いていた。

「安達君、このエリクサーはどこで、どうやって、どれくらいの数を発見したのですか?」

 と質問をして来たので、俺は申し訳なかったが本数は2本と嘘をつき、本数以外は本当の事を伝えた。

「兄ちゃんこれはな、エリクサーって呼ばれる貴重な薬でな。死んだ人間を生き返らせる事以外は全て出来る貴重な薬だ。例え手足を失っていようが、例え両目が潰れていようが、例え不治の病に罹っていようが、全ての法則を無視して治してしまう、夢のような薬だ。それで兄ちゃんはこいつをどうしたい?」

 山本さんはエリクサーの効果を説明してから、ここに持ち込んだエリクサーをどうしたいか聞いて来た。

 実はあと9本あるからどうでもいいです、なんて答えられない空気を破る様に青笹さんが割り込んで来た。

「協会としては買取らせて貰うか、委託販売権をいただきたいと思います。表立って流通させる事はエリクサーの性質上出来ませんが、これの価値は安く見積もっても最低数十億、本当に欲しい人なら百億でも出すでしょう。それにエリクサーを個人が所有していると知られれば、良くて誘拐か暗殺、悪くて戦争になってもおかしくない代物です」

 青笹さんはそう言って来た。

「過去にエリクサーが見つかった時はどうしたんですか?」

 俺が質問すると、青笹さんが答えてくれた。

「過去に見つかった時は、手足を欠損し癌に犯された探索者が、エリクサーの効能を知らずに飲んで、失った手足は元通りに再生し、末期状態だった癌は綺麗に無くなっていたと記録にあります。そしてその空き瓶と中に僅かに残った液体は厳重に保管され、今も成分の研究が続けられています。因みに成分の研究に関しては、協会だけでなく、国家も投資する程の重要案件となっています」

 俺は考えた。

 まさか願っても無いのに出て来た物がこれ程の価値があるなんて、誰が思う?

 青笹さんはまだ言葉を続けた。

「委託販売権だと、エリクサーがある事が公になってしまうので、やはり買取になるでしょう。勿論これは安達さんの所有物になるので、安達さんがこのまま所有されても良いのですが、個人で所有されるには余りにも危険な物という事は覚えておいてください。買取になったとしても価値が価値ですし、金額が想像を絶する金額になると思われるので、結論が出るまで日数が掛かる事は間違いあひません」

 俺はどうするか決めた。

「ではこの2本を買取っていただけますか?金額は協会を信用してお任せします。ただこのまま持っているのは正直怖いので、結論が出るまでは協会の方で厳重に保管していただけると助かります」

 俺がそう言うと、山本さんが俺に話し掛けて来た。

「本当にいいのか?兄ちゃんも探索者をやってれば、いずれエリクサーが必要な怪我をするかもしれないんだぞ?支部長は欲しい欲しいと言っているが、兄ちゃんの将来を考えたら手元に残しておくか、どこかの銀行の貸金庫にでも預けておく事だって出来るんだぞ!」

 山本さんは心配して売らない方向の話をしてくれた。

「でも、エリクサーが2本存在している事が知られた以上、それを個人所有しますなんて言えないじゃないですか。おじさんはともかく、青笹さんは俺が手放すまで俺を解放してくれないような気がします」

 俺がそう言うと「すみません・・・」と青笹さんが呟いたのが聞こえて来た。

「今回は手放すとして、俺に何かあったら協会が全力でバックアップしてくれると約束していただけるなら、今回見つけた2本は販売させていただきます」 

 実はこれを手放しても手元には8本残る。

 この2本で協会に恩を売っておけば、これから色々と便宜を図ってくれるだろう。

 まだまだ幼いながらも、俺は自分の利が最大化する様に話を仕向けた。

「協会は安達君の提案を受け入れる方向で色々と調整します。結論が出るまではエリクサーを協会で預かるのではなく、銀行の貸金庫に預けるとしましょう。費用は協会で出しますが、貸金庫は安達君の名義で契約しましょう。善は急げです。銀行に連絡をするので、山本さんは護衛を兼ねてご同行いただいてもよろしいですか?」

「任せとけ。エリクサーはどうなっても知らないが、兄ちゃんは俺の大事な客だ。何があっても守ってやるさ」

 山本さんはそう言いながら、カウンターの後ろにあるロッカーを開けて、自分の武器を装備し始めた。

 今日はまだまだ帰れそうにありません。

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