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第1話
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伯爵令嬢の私ミモザ・サーノラには、他の人にはない「物の声が聞こえる」スキルがあった。
この世界で魔法を使える人は多いけど、スキルを持つ人は希少とされている。
私が通う魔法学園には誰一人いないほどで、証明する方法も存在していなかった。
学園の授業が終わって放課後になり、私は婚約者のドルクの席へ向かう。
ドルクとは婚約しているけど、学園でしか会う機会がない。
そのために話しておきたいことは、時間に余裕のある昼休みか放課後だけだ。
席を立とうとしていたドルクは、婚約者の私を不快そうに眺めてくる。
嫌われているのはわかっているけど、私は言いたいことがあった。
「ドルク様。右手に着けている指輪の魔法道具の修理をするので、私に預けてもらえませんか?」
「その必要はない。見た目はどこも問題ないし、無駄なことをしたくないからな」
そう言ってドルクが右手につけている魔石のついた指輪を見せつけるけど、確かに見た目は綺麗な指輪だ。
それでも私には指輪の形をした魔法道具の効力と、このまま使い続けると壊れることを知っている。
「私には、ドルク様がつけている指輪の声が聞こえます。このままだと壊れますよ」
事実を話すけど、ドルクは激怒して叫ぶ。
「物の声など聞こえるわけないだろ! ミモザは自分がスキルを持っていると思い込んでいるようだが、スキルを持っているという妄想はやめろ!」
「妄想ではありません。私は物の声が聞こえるスキルがあり、魔法道具の声が聞こえます」
婚約した後にスキルが発現したけど、それを婚約者ドルクは信じようとしない。
信じないのなら放置しておくべきだけど、それができない理由があった。
私の持つスキルは、魔力の宿した道具である「魔法道具」の声を聞くことができる。
どうやら高性能な魔法道具には魂があるのか、私にしか聞こえない声で話してくれる物が存在していた。
ドルクの指輪からも声が聞こえて、私は指輪から「直して欲しい」と助けを求められてしまう。
指輪の力になろうとするけど、婚約者のドルクは何を言っても私に預けようとしない。
侯爵家の令息ドルクが信じないから、私の発言を信じる人がほとんどいなかった。
「またミモザ様は、物の声が聞こえると嘘をついているのですか」
私とドルクが話していると、そこに1人の女性がやって来る。
彼女は男爵令嬢のエイダで、ドルクは私よりエイダの方が好きだった。
婚約者ドルクがエイダと浮気していることを、私は指輪の声を聞き知っている。
そのことも話したけど、信じたくないようで否定してきた。
ドルクは隣に立ったエイダの肩に手を置き、私に向かって言う。
「困ったものだ……この教室には俺と同じようにミモザの発言を迷惑に思っている者が多い、物の声が聞こえるスキルなど存在しないと認めて欲しいものだな」
「そうですわね。スキルなんて希少な力を、ミモザ様が持っているわけありません」
そう言いドルクとエイダは、教室から去って行く。
2人が密会して楽しい時間を過ごすことを、私はドルクの指輪から聞いている。
屋敷に来るなと私はドルクから命令を受けているから、婚約者と話せる場所は学園しかなかった。
ドルクとエイダが教室から出て行く姿を眺めて、立ちつくしながら私は呟く。
「……私のやっていることは、余計なことなのでしょうか?」
私が通う魔法学園は貴族が多く、高価な魔法道具を所持している人も多い。
スキルは常に使われているから、高性能な魔法道具が近くにあると声が聞こえるようになる。
そして「使い方が悪い」や「困っているけど主が何もしない」と助けを求められて、私は助言をしていた。
助言を聞いてくれれば力になれるけど、ほとんどの人は信じようとしない。
婚約者のドルクが「ミモザの言う通りにしたら魔法道具が壊れた」と嘘を広めているからで、信用されなくなってしまったからだ。
「そんなことはない。俺はミモザの助言を聞き、聖剣を正しく使うことができた」
そう言い、私の元に公爵令息のカインが来てくれる。
カインは短い黒髪で長身の美青年で、腰には白い剣が着けられていた。
「カイン様、ありがとうございます」
「礼を言うのは俺の方だ……ミモザの助言に意味があると話しても、ドルクは俺の勘違いだと思いたいようだな」
そう言い、カインが腰にさしている聖剣の鞘に手を触れる。
使い方が間違っていると助言すると、カインは否定せず試してくれた。
そして効果があったようで、私がスキルを持っていることを信じてくれる。
聖剣も私に感謝しているようだから、行動したのは間違いではなかった。
「スキルを持っている人は希少なので、仕方ないことです」
「ミモザが受け入れているのなら、俺は何も言えないが……困っていることがあれば、力になろう」
「ありがとうございます」
ドルクと婚約していることもあり、異性のカインは私とあまり関わらない方がいいと考えてくれる。
それでも力になってくれることが嬉しくて、私は気が楽になっているのを実感した。
私のスキルを婚約者が信じなくても、今まで通り生きていこう。
そう考えていたのに――私は、ドルクから婚約破棄を言い渡されることとなる。
この世界で魔法を使える人は多いけど、スキルを持つ人は希少とされている。
私が通う魔法学園には誰一人いないほどで、証明する方法も存在していなかった。
学園の授業が終わって放課後になり、私は婚約者のドルクの席へ向かう。
ドルクとは婚約しているけど、学園でしか会う機会がない。
そのために話しておきたいことは、時間に余裕のある昼休みか放課後だけだ。
席を立とうとしていたドルクは、婚約者の私を不快そうに眺めてくる。
嫌われているのはわかっているけど、私は言いたいことがあった。
「ドルク様。右手に着けている指輪の魔法道具の修理をするので、私に預けてもらえませんか?」
「その必要はない。見た目はどこも問題ないし、無駄なことをしたくないからな」
そう言ってドルクが右手につけている魔石のついた指輪を見せつけるけど、確かに見た目は綺麗な指輪だ。
それでも私には指輪の形をした魔法道具の効力と、このまま使い続けると壊れることを知っている。
「私には、ドルク様がつけている指輪の声が聞こえます。このままだと壊れますよ」
事実を話すけど、ドルクは激怒して叫ぶ。
「物の声など聞こえるわけないだろ! ミモザは自分がスキルを持っていると思い込んでいるようだが、スキルを持っているという妄想はやめろ!」
「妄想ではありません。私は物の声が聞こえるスキルがあり、魔法道具の声が聞こえます」
婚約した後にスキルが発現したけど、それを婚約者ドルクは信じようとしない。
信じないのなら放置しておくべきだけど、それができない理由があった。
私の持つスキルは、魔力の宿した道具である「魔法道具」の声を聞くことができる。
どうやら高性能な魔法道具には魂があるのか、私にしか聞こえない声で話してくれる物が存在していた。
ドルクの指輪からも声が聞こえて、私は指輪から「直して欲しい」と助けを求められてしまう。
指輪の力になろうとするけど、婚約者のドルクは何を言っても私に預けようとしない。
侯爵家の令息ドルクが信じないから、私の発言を信じる人がほとんどいなかった。
「またミモザ様は、物の声が聞こえると嘘をついているのですか」
私とドルクが話していると、そこに1人の女性がやって来る。
彼女は男爵令嬢のエイダで、ドルクは私よりエイダの方が好きだった。
婚約者ドルクがエイダと浮気していることを、私は指輪の声を聞き知っている。
そのことも話したけど、信じたくないようで否定してきた。
ドルクは隣に立ったエイダの肩に手を置き、私に向かって言う。
「困ったものだ……この教室には俺と同じようにミモザの発言を迷惑に思っている者が多い、物の声が聞こえるスキルなど存在しないと認めて欲しいものだな」
「そうですわね。スキルなんて希少な力を、ミモザ様が持っているわけありません」
そう言いドルクとエイダは、教室から去って行く。
2人が密会して楽しい時間を過ごすことを、私はドルクの指輪から聞いている。
屋敷に来るなと私はドルクから命令を受けているから、婚約者と話せる場所は学園しかなかった。
ドルクとエイダが教室から出て行く姿を眺めて、立ちつくしながら私は呟く。
「……私のやっていることは、余計なことなのでしょうか?」
私が通う魔法学園は貴族が多く、高価な魔法道具を所持している人も多い。
スキルは常に使われているから、高性能な魔法道具が近くにあると声が聞こえるようになる。
そして「使い方が悪い」や「困っているけど主が何もしない」と助けを求められて、私は助言をしていた。
助言を聞いてくれれば力になれるけど、ほとんどの人は信じようとしない。
婚約者のドルクが「ミモザの言う通りにしたら魔法道具が壊れた」と嘘を広めているからで、信用されなくなってしまったからだ。
「そんなことはない。俺はミモザの助言を聞き、聖剣を正しく使うことができた」
そう言い、私の元に公爵令息のカインが来てくれる。
カインは短い黒髪で長身の美青年で、腰には白い剣が着けられていた。
「カイン様、ありがとうございます」
「礼を言うのは俺の方だ……ミモザの助言に意味があると話しても、ドルクは俺の勘違いだと思いたいようだな」
そう言い、カインが腰にさしている聖剣の鞘に手を触れる。
使い方が間違っていると助言すると、カインは否定せず試してくれた。
そして効果があったようで、私がスキルを持っていることを信じてくれる。
聖剣も私に感謝しているようだから、行動したのは間違いではなかった。
「スキルを持っている人は希少なので、仕方ないことです」
「ミモザが受け入れているのなら、俺は何も言えないが……困っていることがあれば、力になろう」
「ありがとうございます」
ドルクと婚約していることもあり、異性のカインは私とあまり関わらない方がいいと考えてくれる。
それでも力になってくれることが嬉しくて、私は気が楽になっているのを実感した。
私のスキルを婚約者が信じなくても、今まで通り生きていこう。
そう考えていたのに――私は、ドルクから婚約破棄を言い渡されることとなる。
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