代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです

第２６話

アシェル視点

　キアラと話をした翌日――俺は城の応接室で、アリード家の領主エドンを待っていた。
　昨日の出来事が不安になって、１人になった俺は応接室で呟く。

「キアラは何か言いたそうにしていたが、俺に言わなかった。いったいなんだ……？」

　何度も発言を躊躇って、エドンが話すと言っている。
　そして今日はエドンと会う日だから、キアラが言いたかったことを知るだろう。
　エドンが部屋に入り、俺は尋ねることにした。

「緊急の用らしいが、何があった？」

　部屋の外に護衛はいるが、話の内容は外に漏れない。
　俺が真っ先に尋ねたのは、エドンが明らかに焦っていたからだ。

「そ、その……キアラが聖女として活躍していたことで、私は思い違いをしていたようです」

「お前は何を言っている？」

「今までは……予備のポーションでなんとかしていましたけど、もう限界です」

　顔を青ざめて俯くエドンを見ても、俺は何が言いたいのかわからない。

「予備のポーションだと！？　お前は何が言いたい！？」

「雇った調合魔法使いが、ポーション作りを失敗するようになりました――どうやらアリード領の力ではなく、エミリーの力だったようです」

「なっっ――はぁぁっっ！？」

　エドンの発言を聞いて、俺は頭が真っ白になる。
　居場所かわからないエミリーの代わりは、どこにも存在しないようだ。