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第6話

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ランダ視点

 聖女に決まったというのに、決まる前よりもザリカの評判は下がっていた。

 鑑定魔法は1日に数回しか使えない上級魔法で、グーリサ伯爵家の薬草畑は毒草が増え続けている。
 全て毒草と鑑定結果が出てしまい、薬草の取引を中止するしかなくなっていた。

 そして毒草が生え続けたせいか、聖女ザリカ以外のグーリサ伯爵家の人々は苦しむこととなる。
 それを回復魔法でザリカが治すようになり、使用人達は辞めていなくなっているようだ。

 俺の部屋に疲弊しているザリカがやって来て、グーリサ伯爵家で起きている出来事を話してくれる。
 エステルがいなくなって2週間しか経っていないのに、様々な問題が発生していた。
 俺の前にいるザリカが、苦しそうな表情を浮かべて言う。

「薬草畑は消すことにしました……取引していた人達に反対されましたけど、仕方ありません」
「屋敷の人達を回復魔法で治していたせいで、聖女として活躍できなくなっている。薬草畑を諦めるのは当然だ」
「そのことですが、何故か私が扱う聖魔法の力が弱まっているようです」
「なっっ……」

 ザリカの発言に、俺は唖然とするしかない。
 聖女に選ばれたことで加護を宿し更に強くなるはずなのに、何故か力が徐々に失われているようだ。

「エステルがいなくなってからだ……ザリカには、姉が必要だったのではないか?」

 不機嫌になるかもしれないが、エステルというよりザリカが原因ということにする。
 俺の発言を聞いて、ザリカは激昂して叫ぶ。

「そんなわけないでしょう! エステルは何もしていません! ランダ様も私の発言を信じてくれたから、エステルとの婚約を破棄してくれたじゃないですか!!」
「そ、そうだな……それでも今まで発生している問題は、エステルを追い出した後に起きている」

 普段ならザリカが取り乱した時点で話を止めていたが、今日は違う。
 俺は間違いなくエステルが必要だと考えていて、ザリカにも納得して欲しい。
 そうすればエステルを捜索して連れ戻せると考えていたが、ザリカは認めなかった。

「今まで私が聖魔法で結果を出してきたのに、エステルが必要だったとランダ様は言いたいのですか!」
「いや、しかし――ー」
「――エステルが戻って来ても、解決することは何もありません! 私が今まで以上にやる気になればいいだけです!」

 ザリカは俺のことが昔から好きで、婚約していた姉のエステルを妬んでいた。

 聖魔法がザリカにだけ扱えると知った際は、とにかく活躍することでエステルとの差を見せつけていく。
 そして計画通り俺と婚約できたから、追い出したエステルは戻って来て欲しくないようだ。
 
 やる気になると言ったが、その後ザリカは活躍できていない。
 結果を出せていないことで、本当はエステルが聖女ではないかと噂になっているようだ。
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