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第7話

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 私が家を追い出されてスピラト国に来てから、1ヶ月が経っていた。

 マグリス王子はバルラサ国について調べたようで、何が起きているのか話してくれる。
 聖女のザリカは私がいた時よりも活躍できなくて、実はエステルが聖女だったのではないかと思われているようだ。

 部屋でマグリスから報告を聞き、私は思案して言う。

「追い出される前の私は聖魔法が使えませんでしたけど、聖女と思われているのですか」
「聖女に決まってすぐに追い出すと問題が発生したから、今までのザリカの活躍はエステルによるものだと考えてしまうようだ」

 今までザリカが活躍していたのは間違いないのに、私の功績を奪っていたのではないかと疑われているらしい。
 活躍を目撃している人がいるし、グーリサ伯爵家はエステルが薬草畑の世話をしていたと証言したようだ。
 問題は他にもあって……薬草畑で発生している問題は、出ていく前に私は見ていた。

「今までエステルが世話をしていた薬草畑も、出て行った後は消すことにしたらしい」
「採取できるのが薬草だけだったのに、毒草が生えるようになったからですね」
「そうだ。エステルがいなくなって起きた出来事で、陰でザリカは偽聖女と呼ばれているようだ」
「活躍できていないのなら、当然だと思います」

 ザリカが聖女と公表したから、私が真の聖女と認めることはできないはず。
 それでもバルラサ国は、私を捜索しているらしい。
 戻る気はなくて、今はマグリス王子と出会えてよかったと思っていた。

 もうザリカのことは忘れたくて、今はやりたいことがある。
 スピラト国の力になりたい私は、マグリスに提案した。

「ザリカのことよりも……マグリス様、スピラト国に薬草畑を作ってもよろしいでしょうか?」
「そうしてくれると助かるが、エステルは大丈夫か?」
「精霊達が薬草畑を望んでいますから、作りたいと思っています」

 心配してくれるマグリスに、私は本心を話す。

 私が植物魔法で作った薬草畑に惹かれて、精霊達はやって来た。
 精霊達のためにも、薬草畑は早く作っておきたい。
 そのことを話すと、マグリスは頷いてくれる。

「わかった。バルラサ国がエステルがいると把握しそうだが、城にいれば安全だ」
「マグリス様、ありがとうございます」

 バルラサ国は私が亡くなったと公表しているから問題ないと思っていたけど、マグリスは警戒しているらしい。
 私はスピラト国のために活動することにして――その後、聖女と呼ばれるようになっていた。
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