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第1話
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「新しい聖女デーリカの方が優秀だから、いらない聖女となったシンシアとの婚約を破棄する!」
玉座のある広い部屋に私シンシアは呼び出されて、婚約者だったリアス・ラグード王子が婚約破棄を宣言する。
2つある玉座には国王と王妃が座り、周囲には宰相や貴族達、そして最近新しく聖女となったデーリカの姿があった。
「当然ですわね! 表に立つ聖女は私1人で十分。聖女シンシアを敬う者なんてどこにもいません!」
デーリカが笑顔でそんなことを言うけど、それは私の功績を全て自分のものにしているからだ。
2年前までは教会で人々を治療していた平民の私が聖女になったことを、この場にいる貴族達は望んでいない。
そして半年前に公爵家の令嬢デーリカが治療魔法を扱えると知り、すぐに新しい聖女として公表した。
婚約者のリアス王子は、私よりデーリカを愛している。
私との婚約を破棄してから、新しい聖女デーリカと婚約するつもりでいるのは知っていた。
私が聖女になって2年間の活躍を全て実はデーリカによるものと思わせたようで、国民は聖女デーリカを称える。
宰相や貴族達がそう思わせるために行動し、国民は信じ切っているようだ。
そして今まで手柄を横取りしていた悪女シンシアと、私は国民から非難されてしまう。
人々から悪女と思われても、私は聖女として半年我慢する。
今ではいらない聖女と呼ばれているから、消えようと思っていた。
出て行く前に聞きたいことがあり、私はリアス王子に尋ねる。
「婚約の破棄はわかりましたけど、リアス殿下には聞きたいことがあります」
「なんだ? 婚約を破棄する理由なら話しただろう。貴様が何を言っても婚約は破棄するぞ」
「わかっています。私が聞きたいのは、ラグード国に住む竜を捕えようとした人達の調査についてです」
ラグード国は竜が住む山地があり、数百年以上も国を守り続けていたとされている。
今まで百年もの間は姿を現していないから、竜の存在を信じている人は少ないようだ。
私が聖女になってから2年間でモンスターの被害が更に減り、平和になったことも関係していそう。
そして平和になったことで今度は竜を捕えようとする人達が現れたから、私はその人達を調査して欲しいと頼んでいた。
国を守ることを条件に竜達に住む場所を与えて、昔の王家は竜に干渉しないと約束している。
今の状況だとその約束を破ることになりそうで、手を打つ必要があった。
それなのに一切報告を聞いていないから、私は尋ねる。
リアスは返答せず、玉座に座る国王を眺めて言う。
「そのことか。俺は竜を見たことがないから父上に任せた」
「竜を捕らえようとしている者達の調査だが……ラグード国は平和になったのだから、竜のことは気にしなくてよい」
「国王は何を言っているのですか?」
「竜は山地から出ることはないからな。誰が何をしても、俺達が気にすることはないということだ」
それはつまり、竜を捕えようとする人達の調査をしていないのでしょう。
聞きたかったことを聞けたから、ラグード国のことはどうでもよくなる。
いらない聖女と言うのなら、こんな国から出ていくだけだ。
「……そうですか。いらない聖女の私は聖女を辞めて、城から出ていくことにします」
「いや、お前が聖女を辞めたと公表するつもりだが、聖女の魔法は使ってもらう」
「どういうことですか?」
「城の地下にお前の部屋を用意した。これからお前はそこで暮らし、王家の指示で聖なる魔法を使ってもらう」
元婚約者のリアス王子が、今後の予定を話してくる。
聖女デーリカに余裕があったのは、私の力をずっと利用するつもりでいたらしい。
追い出したら聖女として大変と理解はしていたようだけど、この提案を聞くと思っているのだろうか?
「拒否権はない。いらない聖女だが捨てるのは惜しいからな!」
私の正面にいたリアス王子が手で合図を出すと、武装した兵士達が私を取り囲む。
兵士の人達も私がいなくなると、怪我をした時にすぐ治らずデーリカの治療魔法で治されることとなる。
デーリカは面倒だからと数人しか治さないから、私の力が必要と身をもって知っていた。
「シンシアにはこれからも俺達の治療をしてもらう!!」
「そうすれば、デーリカ様は他の者に聖女の魔法が使えるからな!!」
城に幽閉して目立たず聖女として活動するのなら、活動の一つに兵士達の治療も入りそう。
兵士達が躍起になっている理由を推測して、私は言う。
「聖女の魔法は回復や強化と支援魔法ばかりなので、私だけでは城から出ていくことができませんね」
「その通りだ! これからお前は地下室で暮らしてもら!」
「いいえ――私はラグード国から消えて、竜人と暮らします」
リアス王子の宣言に対して、私も宣言する。
それと同時に――人の姿をした竜が、私の前に現れた。
玉座のある広い部屋に私シンシアは呼び出されて、婚約者だったリアス・ラグード王子が婚約破棄を宣言する。
2つある玉座には国王と王妃が座り、周囲には宰相や貴族達、そして最近新しく聖女となったデーリカの姿があった。
「当然ですわね! 表に立つ聖女は私1人で十分。聖女シンシアを敬う者なんてどこにもいません!」
デーリカが笑顔でそんなことを言うけど、それは私の功績を全て自分のものにしているからだ。
2年前までは教会で人々を治療していた平民の私が聖女になったことを、この場にいる貴族達は望んでいない。
そして半年前に公爵家の令嬢デーリカが治療魔法を扱えると知り、すぐに新しい聖女として公表した。
婚約者のリアス王子は、私よりデーリカを愛している。
私との婚約を破棄してから、新しい聖女デーリカと婚約するつもりでいるのは知っていた。
私が聖女になって2年間の活躍を全て実はデーリカによるものと思わせたようで、国民は聖女デーリカを称える。
宰相や貴族達がそう思わせるために行動し、国民は信じ切っているようだ。
そして今まで手柄を横取りしていた悪女シンシアと、私は国民から非難されてしまう。
人々から悪女と思われても、私は聖女として半年我慢する。
今ではいらない聖女と呼ばれているから、消えようと思っていた。
出て行く前に聞きたいことがあり、私はリアス王子に尋ねる。
「婚約の破棄はわかりましたけど、リアス殿下には聞きたいことがあります」
「なんだ? 婚約を破棄する理由なら話しただろう。貴様が何を言っても婚約は破棄するぞ」
「わかっています。私が聞きたいのは、ラグード国に住む竜を捕えようとした人達の調査についてです」
ラグード国は竜が住む山地があり、数百年以上も国を守り続けていたとされている。
今まで百年もの間は姿を現していないから、竜の存在を信じている人は少ないようだ。
私が聖女になってから2年間でモンスターの被害が更に減り、平和になったことも関係していそう。
そして平和になったことで今度は竜を捕えようとする人達が現れたから、私はその人達を調査して欲しいと頼んでいた。
国を守ることを条件に竜達に住む場所を与えて、昔の王家は竜に干渉しないと約束している。
今の状況だとその約束を破ることになりそうで、手を打つ必要があった。
それなのに一切報告を聞いていないから、私は尋ねる。
リアスは返答せず、玉座に座る国王を眺めて言う。
「そのことか。俺は竜を見たことがないから父上に任せた」
「竜を捕らえようとしている者達の調査だが……ラグード国は平和になったのだから、竜のことは気にしなくてよい」
「国王は何を言っているのですか?」
「竜は山地から出ることはないからな。誰が何をしても、俺達が気にすることはないということだ」
それはつまり、竜を捕えようとする人達の調査をしていないのでしょう。
聞きたかったことを聞けたから、ラグード国のことはどうでもよくなる。
いらない聖女と言うのなら、こんな国から出ていくだけだ。
「……そうですか。いらない聖女の私は聖女を辞めて、城から出ていくことにします」
「いや、お前が聖女を辞めたと公表するつもりだが、聖女の魔法は使ってもらう」
「どういうことですか?」
「城の地下にお前の部屋を用意した。これからお前はそこで暮らし、王家の指示で聖なる魔法を使ってもらう」
元婚約者のリアス王子が、今後の予定を話してくる。
聖女デーリカに余裕があったのは、私の力をずっと利用するつもりでいたらしい。
追い出したら聖女として大変と理解はしていたようだけど、この提案を聞くと思っているのだろうか?
「拒否権はない。いらない聖女だが捨てるのは惜しいからな!」
私の正面にいたリアス王子が手で合図を出すと、武装した兵士達が私を取り囲む。
兵士の人達も私がいなくなると、怪我をした時にすぐ治らずデーリカの治療魔法で治されることとなる。
デーリカは面倒だからと数人しか治さないから、私の力が必要と身をもって知っていた。
「シンシアにはこれからも俺達の治療をしてもらう!!」
「そうすれば、デーリカ様は他の者に聖女の魔法が使えるからな!!」
城に幽閉して目立たず聖女として活動するのなら、活動の一つに兵士達の治療も入りそう。
兵士達が躍起になっている理由を推測して、私は言う。
「聖女の魔法は回復や強化と支援魔法ばかりなので、私だけでは城から出ていくことができませんね」
「その通りだ! これからお前は地下室で暮らしてもら!」
「いいえ――私はラグード国から消えて、竜人と暮らします」
リアス王子の宣言に対して、私も宣言する。
それと同時に――人の姿をした竜が、私の前に現れた。
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