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第2話
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婚約破棄を聞き城から出て行くことにすると、リアス王子は私を捕らえようとしてきた。
兵士達に囲まれていたけど、誰も迫ろうとしない。
なにもなかった私の前に、1人の美青年が現れたからだ。
私の目の前には、頭部の左右に短く黒い角を生やした美青年が立っている。
竜人の姿を見て、私を囲んでいる兵士達は恐怖していた。
「なんだ……いきなり現れたぞ!?」
「私はずっとこの場にいたが、魔法で認識できなくしていた。竜王である私の姿が見えていたのは聖女だけだ」
人から認識できなくする魔法は竜だけが扱えるようで、知っている人は少ないらしい。
姿が透明になり音も聞こえないようだけど、魔力の消費が多く長時間は使えないようだ。
魔法使いとして優秀な人は魔力が多いから、その影響で認識できなくしても見えると聞いている。
私にはずっと竜人の姿が見えているし、兵士達が取り囲んできても冷静でいられた。
驚愕した人達の反応から、竜の扱う高度な魔法が信じられない様子だ。
そんな中でも、聖女デーリカは竜人の発言が気に入らなかったようで叫ぶ。
「聖女は見える!? 私はなにも見えなかったわ!?」
「それなら新しい聖女デーリカより、シンシアの方が優れていると証明できたな」
自らを竜王と言った長い銀髪の美青年は、デーリカに呆れながら言う。
もしデーリカが本当に聖女として優秀なら、城に侵入した竜人を誰かに報告していたはずだ。
竜王は認識できなくする魔法で城に侵入して、私は何度も出会っている。
城の人は誰も発見できず、話を聞いてデーリカが取り乱す。
「私の方がシンシアよりも聖女として優秀よ! この無礼者はなんなの!?」
「竜王か……いや、俺に挨拶した竜王とは、別の者か?」
いきなり現れて竜王と名乗った人物を知っているのは、この場で私と国王だけらしい。
動揺しながらも角を見て竜王と言った国王に対し、リアス王子が叫ぶ。
「竜王!? 父上は何を言っているのですか!?」
リアス王子の発言に対して、国王ではなく竜人が返答する。
「事実だ。ラクード王が会った竜王は私の父で、今は私ヨハンが新たな竜王となった」
「……俺が若い頃、王となった時に竜王は一度だけ姿を見せた。リアスが生まれる前のことだ」
「亡くなった父と何を話したのか私は知らないし興味もない。私がここに来た理由は、言いたいことがあったからだ」
竜人ヨハンが振り向いて、私と目が合う。
これからの行動は事前に聞いていたけど、決意できているか知りたいようだ。
私はラグード国から出て行く決意ができていて、ヨハンに対して頷く。
そうするとヨハンは国王を眺め、玉座のある部屋まで来た理由を話した。
「竜族はラグード国を捨てることにした。これからは他国で、シンシアと一緒に暮らすとしよう」
「なっっ――」
「――待ってください! 竜族が出て行く!? どうしてですか!?」
唖然としていた国王の発言は、取り乱しながら理由を聞く宰相の叫び声にかき消されている。
他の人達は何が起きているのかわからない様子だけど、国王と宰相の反応から不安そうだ。
理由を聞かれて、ヨハンは宰相を睨む。
激怒しているのがよくわかり、その理由を話そうとしていた。
「私はお前達が竜族を滅ぼそうとしていることを知った。契約を破る理由としては十分だ」
これは数ヶ月前にヨハンから聞いたことで、真実を知るため竜の住む山地に乗り込む人達の調査を私はリアス王子に頼んでいた。
調査の報告を一度も聞いていなかったのは、王家が関わっているからと私は推測している。
竜王ヨハンの発言に国王や宰相が取り乱したことで、推測が正しかったと確信することができていた。
兵士達に囲まれていたけど、誰も迫ろうとしない。
なにもなかった私の前に、1人の美青年が現れたからだ。
私の目の前には、頭部の左右に短く黒い角を生やした美青年が立っている。
竜人の姿を見て、私を囲んでいる兵士達は恐怖していた。
「なんだ……いきなり現れたぞ!?」
「私はずっとこの場にいたが、魔法で認識できなくしていた。竜王である私の姿が見えていたのは聖女だけだ」
人から認識できなくする魔法は竜だけが扱えるようで、知っている人は少ないらしい。
姿が透明になり音も聞こえないようだけど、魔力の消費が多く長時間は使えないようだ。
魔法使いとして優秀な人は魔力が多いから、その影響で認識できなくしても見えると聞いている。
私にはずっと竜人の姿が見えているし、兵士達が取り囲んできても冷静でいられた。
驚愕した人達の反応から、竜の扱う高度な魔法が信じられない様子だ。
そんな中でも、聖女デーリカは竜人の発言が気に入らなかったようで叫ぶ。
「聖女は見える!? 私はなにも見えなかったわ!?」
「それなら新しい聖女デーリカより、シンシアの方が優れていると証明できたな」
自らを竜王と言った長い銀髪の美青年は、デーリカに呆れながら言う。
もしデーリカが本当に聖女として優秀なら、城に侵入した竜人を誰かに報告していたはずだ。
竜王は認識できなくする魔法で城に侵入して、私は何度も出会っている。
城の人は誰も発見できず、話を聞いてデーリカが取り乱す。
「私の方がシンシアよりも聖女として優秀よ! この無礼者はなんなの!?」
「竜王か……いや、俺に挨拶した竜王とは、別の者か?」
いきなり現れて竜王と名乗った人物を知っているのは、この場で私と国王だけらしい。
動揺しながらも角を見て竜王と言った国王に対し、リアス王子が叫ぶ。
「竜王!? 父上は何を言っているのですか!?」
リアス王子の発言に対して、国王ではなく竜人が返答する。
「事実だ。ラクード王が会った竜王は私の父で、今は私ヨハンが新たな竜王となった」
「……俺が若い頃、王となった時に竜王は一度だけ姿を見せた。リアスが生まれる前のことだ」
「亡くなった父と何を話したのか私は知らないし興味もない。私がここに来た理由は、言いたいことがあったからだ」
竜人ヨハンが振り向いて、私と目が合う。
これからの行動は事前に聞いていたけど、決意できているか知りたいようだ。
私はラグード国から出て行く決意ができていて、ヨハンに対して頷く。
そうするとヨハンは国王を眺め、玉座のある部屋まで来た理由を話した。
「竜族はラグード国を捨てることにした。これからは他国で、シンシアと一緒に暮らすとしよう」
「なっっ――」
「――待ってください! 竜族が出て行く!? どうしてですか!?」
唖然としていた国王の発言は、取り乱しながら理由を聞く宰相の叫び声にかき消されている。
他の人達は何が起きているのかわからない様子だけど、国王と宰相の反応から不安そうだ。
理由を聞かれて、ヨハンは宰相を睨む。
激怒しているのがよくわかり、その理由を話そうとしていた。
「私はお前達が竜族を滅ぼそうとしていることを知った。契約を破る理由としては十分だ」
これは数ヶ月前にヨハンから聞いたことで、真実を知るため竜の住む山地に乗り込む人達の調査を私はリアス王子に頼んでいた。
調査の報告を一度も聞いていなかったのは、王家が関わっているからと私は推測している。
竜王ヨハンの発言に国王や宰相が取り乱したことで、推測が正しかったと確信することができていた。
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