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第3話
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竜人ヨハンが、聖女の私と一緒に国を出て行くと宣言した。
この場にいる人達のほとんどが、竜族と関わったことがない。
それでも国王と宰相が取り乱している姿を目にして、動揺している様子だ。
「竜族が出ていくだと!? どうしてそうなる!?」
「私の父は優しすぎた……争いを好まず、新たな国王に爪や牙を渡して応援したことで、愚かな国王は年をとり欲が出てしまったようだな」
「ぐつっ……」
ラグード王とヨハンの父――前の竜王の会話をヨハンは知らないけど、爪や牙を渡したことは記録に残っていたらしい。
そこからラグード国が平和になり竜を捕らえようと行動した理由を推測したようで、私は思案する。
竜を捕らえようとしている人達について王家が調査しなかったのは、王家が関わっていたから。
証拠はなかったけど、国王の反応から間違いなさそうだ。
発言に怯んだ国王は何も言えなくなり、ヨハンはリアス王子を眺めて告げる。
「そんな国王の子供は更に愚かだ。私欲でデーリカを新しい聖女にして、シンシアを捕らえ利用する気でいたとは……こんな男が、シンシアの婚約者だとはな」
会うのは今日がはじめてだけど、竜王ヨハンはリアス王子を嫌悪している。
その反応が気に入らなかったのか、リアスは怒り叫び出す。
「この俺を愚かだと!? 兵士達はさっさとそこの化物を斬り、シンシアを拘束しろ!!」
「はっ、はい!」
怒声を聞いて兵士達が焦り、ヨハンに迫る。
剣を振るうけどヨハンの体に触れることすらできず、斬りかかった兵士達が吹き飛び倒れていた。
一瞬の出来事で、理解ができていないリアスが叫ぶ。
「な、なにが起きた!?」
「体から魔力を出すことで剣を防ぎ、その魔力で押し飛ばしただけだ。力の差が離れていなければできないが、この程度の雑兵なら余裕で対処できる」
「うっっ……シンシアは何をしている!? 聖女なら兵士を強化しろ!!」
「いらない聖女の私より、聖女デーリカ様に頼むべきでしょう」
「なっっ――」
「――それに私はもう聖女ではありません。これからは竜人と暮らします」
焦って私に頼り命令するリアス王子だけど、もう言うことを聞く気は一切ない。
この場で竜王ヨハンを止めることができる人はいないし、後はここから出て行くだけだ。
玉座のある部屋から私とヨハンが出て行こうとすると、背後で宰相が叫ぶ。
「待ってください! 竜を捕らえようとした連中と王家は関係ありません!!」
「私は先ほどの会話も聞いていた。シンシアが調査を頼んでいたのに、国王が気にするなと行った理由はなんだ?」
「そ、それは――」
「――貴様達の反応を見れば、国王や宰相の発言が嘘だとよくわかる」
「ならもう二度と捕らえようとはしない! お前達のような化物が住める場所などここ以外にはないだろう! 考え直せ!!」
「もう新たに住む場所は決めている」
「馬鹿な!? 今まで暮らしてきたラグード国よりも信用できるというのか!?」
「それは暮らしてみないとわからないが、滅ぼそうとした国より間違いなく信用できるだろう」
そう言い、ヨハンと共に私は去っていく。
これから王家は後悔することとなるけど、私には関係ないことだ。
この場にいる人達のほとんどが、竜族と関わったことがない。
それでも国王と宰相が取り乱している姿を目にして、動揺している様子だ。
「竜族が出ていくだと!? どうしてそうなる!?」
「私の父は優しすぎた……争いを好まず、新たな国王に爪や牙を渡して応援したことで、愚かな国王は年をとり欲が出てしまったようだな」
「ぐつっ……」
ラグード王とヨハンの父――前の竜王の会話をヨハンは知らないけど、爪や牙を渡したことは記録に残っていたらしい。
そこからラグード国が平和になり竜を捕らえようと行動した理由を推測したようで、私は思案する。
竜を捕らえようとしている人達について王家が調査しなかったのは、王家が関わっていたから。
証拠はなかったけど、国王の反応から間違いなさそうだ。
発言に怯んだ国王は何も言えなくなり、ヨハンはリアス王子を眺めて告げる。
「そんな国王の子供は更に愚かだ。私欲でデーリカを新しい聖女にして、シンシアを捕らえ利用する気でいたとは……こんな男が、シンシアの婚約者だとはな」
会うのは今日がはじめてだけど、竜王ヨハンはリアス王子を嫌悪している。
その反応が気に入らなかったのか、リアスは怒り叫び出す。
「この俺を愚かだと!? 兵士達はさっさとそこの化物を斬り、シンシアを拘束しろ!!」
「はっ、はい!」
怒声を聞いて兵士達が焦り、ヨハンに迫る。
剣を振るうけどヨハンの体に触れることすらできず、斬りかかった兵士達が吹き飛び倒れていた。
一瞬の出来事で、理解ができていないリアスが叫ぶ。
「な、なにが起きた!?」
「体から魔力を出すことで剣を防ぎ、その魔力で押し飛ばしただけだ。力の差が離れていなければできないが、この程度の雑兵なら余裕で対処できる」
「うっっ……シンシアは何をしている!? 聖女なら兵士を強化しろ!!」
「いらない聖女の私より、聖女デーリカ様に頼むべきでしょう」
「なっっ――」
「――それに私はもう聖女ではありません。これからは竜人と暮らします」
焦って私に頼り命令するリアス王子だけど、もう言うことを聞く気は一切ない。
この場で竜王ヨハンを止めることができる人はいないし、後はここから出て行くだけだ。
玉座のある部屋から私とヨハンが出て行こうとすると、背後で宰相が叫ぶ。
「待ってください! 竜を捕らえようとした連中と王家は関係ありません!!」
「私は先ほどの会話も聞いていた。シンシアが調査を頼んでいたのに、国王が気にするなと行った理由はなんだ?」
「そ、それは――」
「――貴様達の反応を見れば、国王や宰相の発言が嘘だとよくわかる」
「ならもう二度と捕らえようとはしない! お前達のような化物が住める場所などここ以外にはないだろう! 考え直せ!!」
「もう新たに住む場所は決めている」
「馬鹿な!? 今まで暮らしてきたラグード国よりも信用できるというのか!?」
「それは暮らしてみないとわからないが、滅ぼそうとした国より間違いなく信用できるだろう」
そう言い、ヨハンと共に私は去っていく。
これから王家は後悔することとなるけど、私には関係ないことだ。
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