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第4話
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私と竜人ヨハンは城から出て行き、数時間後にはラグード国から消えている。
竜の姿に戻ったヨハンの背中に乗り、私は空の景色を眺めていた。
竜のヨハンは人が数人乗れそうなほど大きな銀色の竜で、周囲を竜の群れが飛んでいる。
大人の竜族は人から認識できなくなる魔法が使えるから、誰にも見られず大移動ができているようだ。
今日の出来事は、数ヶ月前に竜人ヨハンと出会った時から決めていたことでもある。
調査の報告を待ちながら、私は今までラグード国から消える準備をしていた。
そして今日――竜人ヨハンと一緒に国を捨てると決めた日、リアス王子が婚約破棄を宣言する。
貴族達や宰相が集まる日に行動すると私が決めていたように、リアスも婚約破棄を今日すると決めていたようだ。
気になることがあり、私は竜の姿になっているヨハンに尋ねる。
「ヨハンには聞きたいことがありますけどけど、いいですか?」
「いいに決まっている。なんでも聞いて欲しい」
「子供の竜もいますけど、人から認識できなくする魔法は大人の竜しか使えないと言いましたよね」
「子供の竜は、大人の竜が認識できなくしている。近くにいれば、1人ぐらいなら認識できなくすることが可能で、今はシンシアも人から認識されていない」
「そうでしたか」
子供よりも大人の竜が多いから、誰も見えなくなっているらしい。
そして私はヨハンが側にいるから、空を飛んでいても見えなくなっているようだ。
「認識魔法は魔力が全快でも30分ぐらいしか使えないが、全力で飛べばルジオ国に20分ほどで到着するから問題ない。竜王の私なら、2時間ぐらいは使える」
「馬車なら1週間以上かかる距離なのに、竜族は凄いですね」
竜族の数は子供を含めて30人ぐらいと少なく、今はルジオ国に向かっている。
ルジオ国は大国で、竜族を受け入れることができたようだ。
「先にルジオ国で暮らしている竜が10人ほどいる。前に話したが、子供が捕まりそうになった者達だ」
ルジオ国は優秀な魔法使いが多く、竜族を受け入れてくれるようだ。
数ヶ月前に竜王ヨハンは相談したいことがあり、ルジオ国へ向かっている。
その時にラグード国の行動を伝えると、ルジオ国で暮らして欲しいと提案されていたようだ。
「ルジオ国に私が行けば、右手に着いている指輪を外せるかもしれなないとヨハンは言いましたね」
「そうだ……最初はシンシアの外れない指輪について相談に行ったが、実物を見ないとわからないらしい」
ヨハンの発言を聞き、私は右手についた指輪を眺める。
これは半年前にリアスから貰った指輪で、着けてから外れなくなってしまう。
そしてデーリカが活躍すると何故か私の魔力が減っていき、なんらかの魔法道具とヨハンは推測していた。
「その指輪はシンシアの魔力を吸収し、デーリカに与える呪いの魔法道具で、私なら壊すことはできるが……壊して問題ないのか、調べてから破壊するべきだろう」
「なるほど。それもそうですね」
「外せれば、何も気にしなくていいのだが……すまない」
「謝らないでください。悪いのは着けるよう命令したリアスです」
「そうだな。今日ルジオ国に行くことは伝えているから、到着してすぐ指輪のことがわかりそうだ」
ルジオ国には優秀な魔法使いが多く、指輪を壊すと私に悪影響が出るようなら外すために協力してくれるらしい。
ヨハンがルジオ国に住む条件の一つに私の呪われた指輪を外すことを約束させたから、これで私は本当に自由となれそうだ。
「ヨハン。ありがとうございます」
「……竜族と暮らすことになるが、衣食住の心配は一切しなくていい」
「それは頼もしいですね」
「シンシアが望むものを必ず用意する。私は、シンシアを愛しているからだ」
発言から、竜王ヨハンが私を溺愛していることがよくわかる。
一目惚れと聞いていて、最初は離れて私を眺めていたらしい。
認識できなくする魔法を私が見破り、竜人を前にしても恐れなかった。
そこから更に好きなったようで、最初はラグード国を滅ぼそうと提案している。
私がやめて欲しいと言い今回の方法になったけど……竜人だからか、提案が過激だ。
「これからは、ヨハンと一緒に暮らせますね」
「そうだな……必ず幸せにしてみせる」
今の時点で幸せだけど、ヨハンは納得していないらしい。
私達はルジオ国に向かい、呪いの魔法道具について知ろうとしていた。
竜の姿に戻ったヨハンの背中に乗り、私は空の景色を眺めていた。
竜のヨハンは人が数人乗れそうなほど大きな銀色の竜で、周囲を竜の群れが飛んでいる。
大人の竜族は人から認識できなくなる魔法が使えるから、誰にも見られず大移動ができているようだ。
今日の出来事は、数ヶ月前に竜人ヨハンと出会った時から決めていたことでもある。
調査の報告を待ちながら、私は今までラグード国から消える準備をしていた。
そして今日――竜人ヨハンと一緒に国を捨てると決めた日、リアス王子が婚約破棄を宣言する。
貴族達や宰相が集まる日に行動すると私が決めていたように、リアスも婚約破棄を今日すると決めていたようだ。
気になることがあり、私は竜の姿になっているヨハンに尋ねる。
「ヨハンには聞きたいことがありますけどけど、いいですか?」
「いいに決まっている。なんでも聞いて欲しい」
「子供の竜もいますけど、人から認識できなくする魔法は大人の竜しか使えないと言いましたよね」
「子供の竜は、大人の竜が認識できなくしている。近くにいれば、1人ぐらいなら認識できなくすることが可能で、今はシンシアも人から認識されていない」
「そうでしたか」
子供よりも大人の竜が多いから、誰も見えなくなっているらしい。
そして私はヨハンが側にいるから、空を飛んでいても見えなくなっているようだ。
「認識魔法は魔力が全快でも30分ぐらいしか使えないが、全力で飛べばルジオ国に20分ほどで到着するから問題ない。竜王の私なら、2時間ぐらいは使える」
「馬車なら1週間以上かかる距離なのに、竜族は凄いですね」
竜族の数は子供を含めて30人ぐらいと少なく、今はルジオ国に向かっている。
ルジオ国は大国で、竜族を受け入れることができたようだ。
「先にルジオ国で暮らしている竜が10人ほどいる。前に話したが、子供が捕まりそうになった者達だ」
ルジオ国は優秀な魔法使いが多く、竜族を受け入れてくれるようだ。
数ヶ月前に竜王ヨハンは相談したいことがあり、ルジオ国へ向かっている。
その時にラグード国の行動を伝えると、ルジオ国で暮らして欲しいと提案されていたようだ。
「ルジオ国に私が行けば、右手に着いている指輪を外せるかもしれなないとヨハンは言いましたね」
「そうだ……最初はシンシアの外れない指輪について相談に行ったが、実物を見ないとわからないらしい」
ヨハンの発言を聞き、私は右手についた指輪を眺める。
これは半年前にリアスから貰った指輪で、着けてから外れなくなってしまう。
そしてデーリカが活躍すると何故か私の魔力が減っていき、なんらかの魔法道具とヨハンは推測していた。
「その指輪はシンシアの魔力を吸収し、デーリカに与える呪いの魔法道具で、私なら壊すことはできるが……壊して問題ないのか、調べてから破壊するべきだろう」
「なるほど。それもそうですね」
「外せれば、何も気にしなくていいのだが……すまない」
「謝らないでください。悪いのは着けるよう命令したリアスです」
「そうだな。今日ルジオ国に行くことは伝えているから、到着してすぐ指輪のことがわかりそうだ」
ルジオ国には優秀な魔法使いが多く、指輪を壊すと私に悪影響が出るようなら外すために協力してくれるらしい。
ヨハンがルジオ国に住む条件の一つに私の呪われた指輪を外すことを約束させたから、これで私は本当に自由となれそうだ。
「ヨハン。ありがとうございます」
「……竜族と暮らすことになるが、衣食住の心配は一切しなくていい」
「それは頼もしいですね」
「シンシアが望むものを必ず用意する。私は、シンシアを愛しているからだ」
発言から、竜王ヨハンが私を溺愛していることがよくわかる。
一目惚れと聞いていて、最初は離れて私を眺めていたらしい。
認識できなくする魔法を私が見破り、竜人を前にしても恐れなかった。
そこから更に好きなったようで、最初はラグード国を滅ぼそうと提案している。
私がやめて欲しいと言い今回の方法になったけど……竜人だからか、提案が過激だ。
「これからは、ヨハンと一緒に暮らせますね」
「そうだな……必ず幸せにしてみせる」
今の時点で幸せだけど、ヨハンは納得していないらしい。
私達はルジオ国に向かい、呪いの魔法道具について知ろうとしていた。
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