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高校一年生
▽任命された
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三ヶ月後に迫った文化祭に向けて全学年各クラスから四人ずつ実行委員を選出するべく、こうしてロングホームルームを設けられたわけやけど、これがもう一向に進まん。一向にや。
五分程沈黙が流れた時、クラス担任の木梨先生--通称キナセン--の二度目の溜め息が教室の端まで届いた。
そして気力の無い事でお馴染みのキナセンの声がそれを破る。
「よーし、わかった。俺決めるー」
一部の女子生徒が小さく笑い声を上げ、その他の生徒は苦渋の表情。俺も例外やない。
「ホントは男女二人ずつだけどまぁ良いだろ。はい瀬川春生、水藤蓮華、白石清正、岩坂陽呂」
呆然と硬直する俺ら四人にキナセンが「はい前出ろー」と手招きをする。
デンとキヨが潔く……ちゅうか諦めたように立ち上がり、俺と陽呂も釣られて席を離れた。
「俺イヤや」
教壇の横に並ぶや否や俺はキナセンをガン見してそう言うたけど、キナセンは意にも介さず「来週の放課後打ち合わせするってよ」と頭を掻いとる。
嘘やろなんやこの教師。
「生徒の声に耳を傾けんと何が教師やー!」
拳を突き上げる俺を無視してまだ話は進む。
「今日中に出し物決めろって朝礼で言われたからテキトーに案出してけー。もし決まんなかったら俺が決めるからな。明日の朝礼で干されたくないし」
「嘘やろこのクソ教師……」
衝撃を受ける俺の肩に優しく手を置いたキヨが首を振る。
「そんな……諦めるしかないんか……」
「いやちょっと、小芝居やめよう春生」
顔を引き攣らせてそう言うたキヨの影から覗いたのは、呆れた表情を隠す気配も無いデン。
「おい無駄な時間使うな。腹括れや」
いつの間にか俺らに注意を向けとったキナセンがシャクレながら「ハラククレヤ」と頷いた。
--ええ……めっちゃ腹立つんやけど何コレ?
陽呂は下を向いて欠伸を噛み殺す。
長く深い溜め息を吐いて、俺は漸く置かれた現実を受け入れた。
* * *
もう何回目なんかわからん深い溜め息を吐きながら帰路に就く俺の隣でデンが不機嫌そうに顔をしかめる。
「お前もうしつこいねん。決まってもうたんやからしゃーないやろ」
「それでもイヤなもんはイヤやねんから、それこそしゃーないやんけ。文句垂れながらも結局ちゃんとやんねんから愚痴ぐらい許したれや」
「結局やんねやったら黙ってやった方が男らしいけどな」
「うるさいわ! 男や言うても個体差があるんじゃ!」
「ほんで結局やる事同じなんやったら、文句垂れるんやなくて諦めておもろい事探したらええんちゃうか。同じ時間過ごすんやったら笑とる方が百倍有意義や」
「……説教か?」
「俺語りや」
「あっそ。……あー、もうなんでもええわ腹へった」
開き直った俺にデンが「人通るで」と声を掛けたが時既に遅し。
ランニング中やった道着姿の男子生徒と接触した。
「おわっ! すんません、見てへんかった……」
慌てて謝る俺に静止を促して笑う男子生徒はこれまた中々美形で、俺は謎の焦燥感に支配される。
「ごめんね、驚かせて。俺もぼんやりしてたから。怪我はないね、よかった」
軽い会釈をして再びランニングに戻った男子生徒の背中を見送ってから、俺はデンに抗議の声を上げた。
「お前もっとテンション上げて言えや! 何が『人通るで』や! あんな優しいスポーツマンに怪我さしたら俺飯食われへんわ!」
そんな俺を無視して、小さくなる道着の背を見つめるデンは少し寂しそうに言う。
「……お前、ほんまにもう辞めたるんか?」
俺もデンの見つめる先に視線を投げる。
赤い夕陽に向かって白い道着が姿を消した。
「……タイムセール、始まんで」
五分程沈黙が流れた時、クラス担任の木梨先生--通称キナセン--の二度目の溜め息が教室の端まで届いた。
そして気力の無い事でお馴染みのキナセンの声がそれを破る。
「よーし、わかった。俺決めるー」
一部の女子生徒が小さく笑い声を上げ、その他の生徒は苦渋の表情。俺も例外やない。
「ホントは男女二人ずつだけどまぁ良いだろ。はい瀬川春生、水藤蓮華、白石清正、岩坂陽呂」
呆然と硬直する俺ら四人にキナセンが「はい前出ろー」と手招きをする。
デンとキヨが潔く……ちゅうか諦めたように立ち上がり、俺と陽呂も釣られて席を離れた。
「俺イヤや」
教壇の横に並ぶや否や俺はキナセンをガン見してそう言うたけど、キナセンは意にも介さず「来週の放課後打ち合わせするってよ」と頭を掻いとる。
嘘やろなんやこの教師。
「生徒の声に耳を傾けんと何が教師やー!」
拳を突き上げる俺を無視してまだ話は進む。
「今日中に出し物決めろって朝礼で言われたからテキトーに案出してけー。もし決まんなかったら俺が決めるからな。明日の朝礼で干されたくないし」
「嘘やろこのクソ教師……」
衝撃を受ける俺の肩に優しく手を置いたキヨが首を振る。
「そんな……諦めるしかないんか……」
「いやちょっと、小芝居やめよう春生」
顔を引き攣らせてそう言うたキヨの影から覗いたのは、呆れた表情を隠す気配も無いデン。
「おい無駄な時間使うな。腹括れや」
いつの間にか俺らに注意を向けとったキナセンがシャクレながら「ハラククレヤ」と頷いた。
--ええ……めっちゃ腹立つんやけど何コレ?
陽呂は下を向いて欠伸を噛み殺す。
長く深い溜め息を吐いて、俺は漸く置かれた現実を受け入れた。
* * *
もう何回目なんかわからん深い溜め息を吐きながら帰路に就く俺の隣でデンが不機嫌そうに顔をしかめる。
「お前もうしつこいねん。決まってもうたんやからしゃーないやろ」
「それでもイヤなもんはイヤやねんから、それこそしゃーないやんけ。文句垂れながらも結局ちゃんとやんねんから愚痴ぐらい許したれや」
「結局やんねやったら黙ってやった方が男らしいけどな」
「うるさいわ! 男や言うても個体差があるんじゃ!」
「ほんで結局やる事同じなんやったら、文句垂れるんやなくて諦めておもろい事探したらええんちゃうか。同じ時間過ごすんやったら笑とる方が百倍有意義や」
「……説教か?」
「俺語りや」
「あっそ。……あー、もうなんでもええわ腹へった」
開き直った俺にデンが「人通るで」と声を掛けたが時既に遅し。
ランニング中やった道着姿の男子生徒と接触した。
「おわっ! すんません、見てへんかった……」
慌てて謝る俺に静止を促して笑う男子生徒はこれまた中々美形で、俺は謎の焦燥感に支配される。
「ごめんね、驚かせて。俺もぼんやりしてたから。怪我はないね、よかった」
軽い会釈をして再びランニングに戻った男子生徒の背中を見送ってから、俺はデンに抗議の声を上げた。
「お前もっとテンション上げて言えや! 何が『人通るで』や! あんな優しいスポーツマンに怪我さしたら俺飯食われへんわ!」
そんな俺を無視して、小さくなる道着の背を見つめるデンは少し寂しそうに言う。
「……お前、ほんまにもう辞めたるんか?」
俺もデンの見つめる先に視線を投げる。
赤い夕陽に向かって白い道着が姿を消した。
「……タイムセール、始まんで」
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