俺が少女プリーストに転生したのは神様のお役所仕事のせい――だけではないかもしれない

ナギノセン

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2 また転生

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『どうであった、第二の人生は?』
(悪くはなかったです)
『あの老人もかつては社畜であった。それを定年までやり遂げてあの生活を手にしたのだ』
(それで?)
 俺は、このじいちゃんの過去に特に感想などない。

『それだけだ』
(は?)
『私は神としてノルマを果たすためにお前を転生させた。そしてお前は再び死んだ。以上だ』
(……じゃあ俺は何でここに?)
 神様(確定)に俺は尋ねた。

『近頃の人間は、霊魂不滅との言葉を知らないのか?』
(聞いたことはあります)
『であれば、お前が存在している理由など尋ねるまでもあるまい』
(か、神様、俺が知りたいのはそこじゃない)
『さっさと列に並ぶが良い』
(いやいやいやいや、言ってる意味がわからないし。最初から思ってるけどここは何処なんだ?)
『どうした? 後がつかえておるから、余計なことを気にせず決まったとおりに動くがよい』
 挙動不審な俺に、神様が少しいらだった声を掛けた。俺の背後には白くポニョポニョしたものの列が続いている。

(あ、あの、俺は何処へ行けばいいのですか?)
『……おお、そうであったな。お前のように自我を持って二度も死後を迎えるものは、なかなかおらぬのでうっかりしておった』
(うっかり?)
『善意転生特権の自我が強いまま、あまりに早く二回目の死が来たために、記憶も何もかも残ってしまったレアケ―スであるのをいい感じで忘れておった』

 おい神っ、て突っ込みたくなるぞ。多分伝わっているだろうけど。
 しかし聞き捨てならない点があった。

(記憶をもって転生しても、いずれ記憶は消えるのですか?)
『お前は2歳や6歳の時にあった一つ一つを克明に覚えているのか?』
(いいえ)
『同じことだ。新しい生の記憶が前の生の記憶を塗り替えるし、それ以前にお前たちは忘れていくのだ。私もお前のことなど忘れていたがな』

 ……この神様は俺に突っ込まれたいのか?

『そうか、死を迎えた老人の方の自我は消えてしまい、お前の自我は残っていることを善意転生特権同等と判断されて、いきなり私の目の前に現れたのだな。お役所仕事のような振り分けをしおって』
 ……あんたがそれを言うな。
『状況は把握したが、こう見えても私は忙しい。だからお前の自我を消す作業は後回しだ』
(そんな適当な)
『だが列に並び直せとは言わぬ。こう見えて私は合理的な神だからな、感謝せよ』
(そもそも列の意味がわかってなかったので、ありがたみなどまったく感じないっす)
『改めて見たら、お前の人生は本当に気概の欠片もなかったようだな』
 俺の返事など無視した神様が、ペラペラと分厚い本をめくりながらブツブツ独り言をつぶやいている。どういう仕組みかわからないが、俺の人生記録を確認しているようだ。

『なるほど、ここまで徹底しているなら少しだけ望みを叶えてやろう。よし、転生先はここだ。前回のお前は、自我及び各種特権有り転生だったが行使しなかった。今回のお前は老人として普通に死んだから、私は規定どおりにお前を転生させる』
(待て待て! 規定どおりと言うなら俺の自我も消してからにしてくださいよ!)
『それがだな、一度の作業で消せるのは一人格まで。つまり今回はその老人分のみだ。そうでないと霊魂への悪影響が出て、本当に消滅させる事態を惹き起こしてしまうからな』
(消滅してもいいんだけど)
『……お前はこれを見てもそう言うのか?』
 ぽつりと本音を漏らした俺に、これまでひょうきんに思えた神様の表情が険しく一変する。俺は、じいちゃんの位牌の前で泣きながら微笑むばあちゃんと、大泣きする孫娘を見させられた。

『今のお前の魂の消滅は、この老人の消滅でもある。この人達から老人のことを奪う権利などお前にはない』
(神様が勝手に俺を転生させたのだろう!)
『違う。お前がその男を助けたから、その者へ入れ替わって転生することになったのだ。死にたければ一人で勝手に死ねばよかったものを。私へ恨み言を言う前に、お前の矯小さを見直すべきであろう』
(こんな決まりになっているなんて知るわけがないだろう!)
『確かにそうだ。しかしお前は生まれてきた経緯や理由を何も知らないで、疑問を持たずに生きてきた。多少の理不尽さや不満は感じていたようだが、いずれにしてもどうして今さらこれだけを知らないとあげつらうのだ?』
 俺はぐうの音も出ない。まったく口の減らない神様だ。

『何も反論しないということは了承したで構わんな? お前の了承などあろうがなかろうが、こちらには関係ないが』
(だったらさっさと何でもやってくれよ!)
『ほい、転生~』

 や、やはり軽い。ここだけはとてつもない不信感が募るな。
 そして俺は何故か木に転生させられていた。正確には、そのことを気づいたのはついさっきだ……ダジャレではない。
 どうして気づいたかといえば、俺の足元――じゃなくて根元へ見知らぬ男達が大勢たかって、斧を立てていたからだ。
 つまり伐採されているのである。

 待て待て待て待て、と俺が言っても言葉にならず、木の枝が少しユサユサ揺れるくらいだ。
 小さな女の子とその飼い犬とおぼしきワンコが泣き(鳴き)ながら俺に抱きつく。どこの世界でもワンコは飼い主に忠実らしい。俺の飼い犬だったポン吉をふと思い出した。
 少女とワンコは阻止を試みてくれていたようだが、あっさり引き剥がされてどこかへ連れて行かれた。
 その後、あっという間に俺は切り倒された。

 これからどうなるんだ?
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