俺が少女プリーストに転生したのは神様のお役所仕事のせい――だけではないかもしれない

ナギノセン

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41 新たな依頼

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 本当のことは知らされていないシギネフは、顔を輝かせて早速代金を払うと言い出した。スーが一つだけ条件を付けると、シギネフは問題ないと請け負って準備を始める。
 机近くに控えていたシギネフの側仕えが鍵を受け取り、しばらくして恭しく持って来た革袋の中身が机の上に広げられた。
 これまでの部屋は特段暗くはなかったが、唐突に天井が虹彩色の輝きに覆われた錯覚に陥りそうになる。

「支払うつもりだった金貨分の蛍光石です。これでいいのか?」
「金貨だとかさばるのでありがたいのです」
「契約成立だ。もしよければ指輪を探す依頼を受けてくれないか? ナイフが見つかった場所の周辺を念入りに調べてもらいたい。この交渉をしたのがあなたなら、きっとナイフを見つけたのもあなただろう?」

 シギネフはスーを真っ直ぐに見て尋ねると、スーが俺に顔を向けた。
 指輪も実際は手に入れたのだがあえて置いて来た。探す必要もない。
 しかし山賊だらけのあの道を戻るのはできれば避けたい。
 躊躇う様子の俺達にシギネフが更に畳み掛ける。

「報酬はこれの三倍出そう。人手が必要ならこの者達を連れて行ってもらっても構わない」
「三倍っ⁉」

 スーが思わず大きな声を上げる。
 俺は蛍光石の価値を厳密に知らないので、厳密にはどの程度の申し出なのか理解していない。
 大慌てのスーが俺を見て、かなりのものとだけわかった。
 危険を冒してまでやる価値があるのか疑問だが、あそこに行けば指輪はあるだろう。それで目が飛び出そうな報酬が手に入る。
 労力と報酬を比べるとやらない手はないのだが、万が一、なくなっていては見つけることはまず不可能。
 そうなると違約になってしまう。
 こんなことなら持って来たら良かったと後悔しても始まらない。
 山賊対策にシギネフの配下を連れて行くこともできるらしいが、いきなり信用できる相手ではない。

「報酬はナイフと同じでいいが、見つからない前提のペナルティなしどうだろう?」
「この町には冒険者ギルドもないからそちらに経験値も提供できない。そのくらいは譲歩するのが当然だろう。だったら引き受けてもらえるのか?」
「ああ。来た時の日数を考えれば二十日くらいが妥当だろう。それで帰って来なければ見つからずにどこかへ去った思ってくれ」
「わかった。お互い後腐れなしで結構な話だ」

 シギネフと俺は握手を交わした。見つけられるとは思うが、なかったのにわざわざ戻って不達成の報告をする手間を省きたかった。
 一度通ってまだ日も浅いのでスーが迷うはずがない。
 一日ゆっくりと休養を取って、元来た道を戻る。同じように注意をしながら進んだが、二日ほど短縮ができて、山賊と戦ったところヘ八日でたどり着いた。
 少し遠巻きに辺りを窺いながら慎重に近づく。木に縛りつけた男の姿はなかったが、逃げたわけではない。本の根元に他の山賊と同じように、体中が噛まれたり引きちぎられた跡のある死体が転がっていた。
 ちょうど腐敗が進んだところらしく辺りの臭気はかなりのもので、死体の下へ指輪を隠したことを一瞬後悔した。
 幸い、お目当ての死体は食いつかれた時に動かされたらしく、土の中から掘り出した袋には泥が付いているだけで臭いも移っていなかった。
 中身を見ると指輪も金鎖も入っている。
 用を済ませて手についた汚れをパタバタとはたいていると、スーがいきなり腰のショートソードを抜いて構えた。

「囲まれている……山賊か⁉」
「ちょっと違うみたいなのです――危ないっ」

 スーが俺を突き飛ばしたところへ目に見えない衝撃波がかすった。

「魔法なのですっ」
「何⁉」
「プリちゃんはできるだけ逃げ回って隠れるのですっ」
「え、ちょっと待て!」

 俺の制止も聞かずに、スーは体を左右へ動かしながら森へ入り込んだ。
 スーにはわかっているのかもしれないが、俺には敵の正体も数もまったくわからない。
 現に今もスーが押してくれなければ、魔法の直撃を受けていただろう。
 足手まといでしかない俺が乱戦へ飛び込んでもスーの邪魔になるだけだ。しかし一人で本当に大丈夫なのか?
 少し向こうの木立の間をスーが素早く移動しながら誰かと剣を交えているのが見える。
 俺は一番近くの木の根元へ這い寄ると、スーの忠告を無視して体の前面を守るように幹へ抱き着いた。
 普通なら愚かすぎる行動に見える。完全に背中が無防備なのだから。
 しかし俺の背中側は異常に堅いし、心強い師匠のマントも巻いている。
 おかげてあっさりと敵が姿を現した。
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