鬼の心臓は闇夜に疼く

藤波璃久

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協力者16(現在編②)

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客間にヤマトとナオの父、鬼澤組の組長が入ってきた。
小太郎は頭を下げた。

「ナオがいじめられていたと、ヤマトから聞いた。気づいてやれなくてすまなかったな」
「ううん。小太郎さんが助けてくれた。お母さんのペンダントも、取り返してくれた」
ナオは、制服の内側に隠していたペンダントを見せた。

「ああ、あいつの形見か。確かナオが小学生の時、母の日にあげたものだったよな?」
「うん。お母さんいつもつけてくれてた」
ナオは懐かしそうに話す。

「ナオさんがあげたペンダントだったのか。だから、いみ…いみて?」
小太郎が言うと、ナオは吹き出す。

「イミテーション。小学生じゃ高いものは買えないもの。お母さん亡くなったの、去年だったんだ。私が高校生になるの楽しみにしてくれてたのに」
ナオは、そっと涙を拭った。

「お礼をしたいんだけど、小太郎さん、何かある?」
「え? えっと」
「なんでもいいぞ」
組長が笑って言う。

《小太郎、仕事を紹介してもらえば?》
朱丸が割り込んできた。
『え? 仕事?』
《ナオさんだったらきっと小太郎の事、他の人に言いふらしたりしないし。ここいらで一人くらい、人間の協力者を作っておくのもいいと思う》
『この町を拠点にするってことか?』
《小太郎といろんな町に行くのも楽しいけど、普通にご飯食べるためにお金稼がないといけないし、オイラはいいけど、小太郎には毎日のご飯が必要だもんね》
小太郎はうーんと考える。
《寝床もご飯もない時もあったしさ。小太郎の外見が変わらないから、長くは一つの場所にいれないけど、5~6年くらいならいいんじゃない?》
「仕事を紹介してもらえますか?」
「仕事か…。うちの組に入るか?」
「え⁉︎」
「お父さん…」
「…オレ、その…」
「得意なことはなんだ?」
「あ! 小太郎さん、悪意を持ってる人がわかるんだって」
「ほう…」
ナオの言葉に、組長は感心したように頷いた。
「あ、まあ」
「腕っぷしは強い方か?」
「まあ強い方だとは思います(鬼だし…)」
「なら、ボディガードとかいいんじゃないか?」
「ボディガード?」
「悪意を持ってるやつがわかるなら、誰が対象を狙ってるかわかるしな。裏の世界じゃ、狙う、狙われるなんて日常茶飯事だから」
ナオの言葉に「余計なことを」と思ったが、いいかもしれないと思った。

《いいんじゃない? 悪意を持ってるやつがすぐ近くにいる環境なんて、妖力の補給にちょうどいいよ》
朱丸が嬉々として語る。
「やってみます」
「そうか」
「あとできれば、住む場所も…」
「そうか。紹介してやる」
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