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2話:ぼくらの運命
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まっ暗な部屋でハルイチのベッドに寝転がり、ハルイチのタオルケットにくるまると、ハルイチのにおいに包まれる。
(なんで……ハルのにおいで安心してんだよ……むかつく)
ささくれだった心が、体に染み付いた条件反射的に凪いでいくのがわかる。
ハルイチの部屋は小さい頃からずっと、ぼくの逃げ場だった。
親に怒られたり、嫌なことがあると、決まってここに逃げ込んで、こうして布団にくるまっていた。ハルイチは何
か特別なことを言ってくれるわけではないけれど、そんなぼくを絶対に否定しないのがわかっていたから。
目をぎゅっとつぶると、しばらくして、階下から階段を登ってくる足音が伝わってきた。
ハルイチはドアを(自分の部屋なのに)なぜか遠慮がちに開く。
「……アオ? 大丈夫?」
ドアから漏れてくる廊下の電灯の光量で一瞬目がなれず、ハルイチの顔がぼやけて見えた。
しかしぼくはベッドの上でタオルケットにくるまりながら、顔だけ出して、むーっとむくれた顔をハルイチにむけてやる。
「久々に見た、アオのミノムシ」
「ハルが外堀埋めすぎなせいだし。この策士」
「外堀って……」
「そーだろ? あれじゃ、断ったらぼくだけ悪者感すごいじゃん」
ぼくの言葉に、ハルイチはすこし傷ついたような苦笑いを浮かべる。
「……アオはさ、やっぱり断りたいんだ?」
「ーーっ! だ、だからそれはまだーー」
急に核心に踏み込んできたハルイチの口調が沈んでいるように聞こえて、ぼくは焦って脊髄反射な反応をしてしまった。
「……ハル?」
けれど、見るとハルイチはそっぽを向いていて、指で口元を隠すような仕草をしていた。
明らかに、笑っているのをぼくに見せまいとしている。
「そ、そういうとこだよ!」
ぼくは涙目になりながら、精いっぱい反抗してやった。
「……アオのほうこそ策士じゃん。俺のこと、そうやっていつも煽ってくる」
「はぁ!? い、いまのどこで! お前がへんたいなだけだろ!」
ぼくは、ハルイチのことが直視できなくなり、タオルケットにくるまったまま背を向けた。
「……もう」
と、ひとつため息をつくと、ハルイチはいきなりベッドにぎっと座った。
重みで少しマットレスが沈み込む。
「……なんだよ」
「俺、この前測ったら、身長183センチになってたんだけどさ」
「ハル、また伸びたのかよ……てか、なんの話……自慢か?」
「カップルの理想の身長差、15センチって言われてるの知ってる?」
「15……?」
ハッとする。
ぼくの身長は現在168センチ……ということは、ハルイチとの身長差が、今ちょうど15センチ差になってしまっているではないか。
「ま、まさかそれも”運命”だとか言い始めるんじゃーー」
と、ぼくが言いかけたときだった。
「……!!」
いきなり、力強い腕がぼくの背後から伸びてきて、身動ぎ一つできなくなる。
ハルイチが、ぼくのことを後ろから抱きしめていたのだ。
「こうやって、ハグするときに一番ちょうどいいんだって」
ベッドの上で、いわゆる「バックハグ」されているような格好だ。
ぼくはタオルケットにくるまったままではあるけれど。
「な、なに……してんだよ」
心拍数が、とんでもないことになっている。
いくら子供の頃からの幼馴染だって、こんなことをしたことは今までにない。
どれだけ時間がたったのだろうか。
ぼくが、願っていることはただ、このドキドキがどうかハルイチに伝わらないようにーーということだけだ。
「……ねえ、アオいまどんな顔してるのか見たい」
「やだ……」
どさっ。
「は? ちょーー」
と、ハルイチがぼくに覆いかぶさったかと思うと、今度は強い力でぼくのことを仰向けに引き寄せた。
……あれ?
これ、ぼく押し倒されちゃってる?
「あと、キスするときにも、ちょうどいいって」
ハルイチは、今にも触れあってしまいそうな距離で、やさしい口調なのに、とんでもないことを口走ってくる。
「それ、スタンディングポジションの話だろ!? この態勢で関係なくない!?」
そんな反論にもならない反論をしてドギマギしているうちに、イケメンすぎるハルイチの顔が、本当にすぐ近くまで近づいてきた。
「アオ、もういい加減認めて? これが運命だってーー」
その言葉は、目を覆いたくなるほどにまっすぐな星の光みたいでーー
「は……る……」
(なんで……ハルのにおいで安心してんだよ……むかつく)
ささくれだった心が、体に染み付いた条件反射的に凪いでいくのがわかる。
ハルイチの部屋は小さい頃からずっと、ぼくの逃げ場だった。
親に怒られたり、嫌なことがあると、決まってここに逃げ込んで、こうして布団にくるまっていた。ハルイチは何
か特別なことを言ってくれるわけではないけれど、そんなぼくを絶対に否定しないのがわかっていたから。
目をぎゅっとつぶると、しばらくして、階下から階段を登ってくる足音が伝わってきた。
ハルイチはドアを(自分の部屋なのに)なぜか遠慮がちに開く。
「……アオ? 大丈夫?」
ドアから漏れてくる廊下の電灯の光量で一瞬目がなれず、ハルイチの顔がぼやけて見えた。
しかしぼくはベッドの上でタオルケットにくるまりながら、顔だけ出して、むーっとむくれた顔をハルイチにむけてやる。
「久々に見た、アオのミノムシ」
「ハルが外堀埋めすぎなせいだし。この策士」
「外堀って……」
「そーだろ? あれじゃ、断ったらぼくだけ悪者感すごいじゃん」
ぼくの言葉に、ハルイチはすこし傷ついたような苦笑いを浮かべる。
「……アオはさ、やっぱり断りたいんだ?」
「ーーっ! だ、だからそれはまだーー」
急に核心に踏み込んできたハルイチの口調が沈んでいるように聞こえて、ぼくは焦って脊髄反射な反応をしてしまった。
「……ハル?」
けれど、見るとハルイチはそっぽを向いていて、指で口元を隠すような仕草をしていた。
明らかに、笑っているのをぼくに見せまいとしている。
「そ、そういうとこだよ!」
ぼくは涙目になりながら、精いっぱい反抗してやった。
「……アオのほうこそ策士じゃん。俺のこと、そうやっていつも煽ってくる」
「はぁ!? い、いまのどこで! お前がへんたいなだけだろ!」
ぼくは、ハルイチのことが直視できなくなり、タオルケットにくるまったまま背を向けた。
「……もう」
と、ひとつため息をつくと、ハルイチはいきなりベッドにぎっと座った。
重みで少しマットレスが沈み込む。
「……なんだよ」
「俺、この前測ったら、身長183センチになってたんだけどさ」
「ハル、また伸びたのかよ……てか、なんの話……自慢か?」
「カップルの理想の身長差、15センチって言われてるの知ってる?」
「15……?」
ハッとする。
ぼくの身長は現在168センチ……ということは、ハルイチとの身長差が、今ちょうど15センチ差になってしまっているではないか。
「ま、まさかそれも”運命”だとか言い始めるんじゃーー」
と、ぼくが言いかけたときだった。
「……!!」
いきなり、力強い腕がぼくの背後から伸びてきて、身動ぎ一つできなくなる。
ハルイチが、ぼくのことを後ろから抱きしめていたのだ。
「こうやって、ハグするときに一番ちょうどいいんだって」
ベッドの上で、いわゆる「バックハグ」されているような格好だ。
ぼくはタオルケットにくるまったままではあるけれど。
「な、なに……してんだよ」
心拍数が、とんでもないことになっている。
いくら子供の頃からの幼馴染だって、こんなことをしたことは今までにない。
どれだけ時間がたったのだろうか。
ぼくが、願っていることはただ、このドキドキがどうかハルイチに伝わらないようにーーということだけだ。
「……ねえ、アオいまどんな顔してるのか見たい」
「やだ……」
どさっ。
「は? ちょーー」
と、ハルイチがぼくに覆いかぶさったかと思うと、今度は強い力でぼくのことを仰向けに引き寄せた。
……あれ?
これ、ぼく押し倒されちゃってる?
「あと、キスするときにも、ちょうどいいって」
ハルイチは、今にも触れあってしまいそうな距離で、やさしい口調なのに、とんでもないことを口走ってくる。
「それ、スタンディングポジションの話だろ!? この態勢で関係なくない!?」
そんな反論にもならない反論をしてドギマギしているうちに、イケメンすぎるハルイチの顔が、本当にすぐ近くまで近づいてきた。
「アオ、もういい加減認めて? これが運命だってーー」
その言葉は、目を覆いたくなるほどにまっすぐな星の光みたいでーー
「は……る……」
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