【青春BL】この恋は、運命なんかにしたくない

古橋いつき

文字の大きさ
2 / 4

2話:ぼくらの運命

しおりを挟む
 まっ暗な部屋でハルイチのベッドに寝転がり、ハルイチのタオルケットにくるまると、ハルイチのにおいに包まれる。

(なんで……ハルのにおいで安心してんだよ……むかつく)

 ささくれだった心が、体に染み付いた条件反射的に凪いでいくのがわかる。

 ハルイチの部屋は小さい頃からずっと、ぼくの逃げ場だった。

 親に怒られたり、嫌なことがあると、決まってここに逃げ込んで、こうして布団にくるまっていた。ハルイチは何
か特別なことを言ってくれるわけではないけれど、そんなぼくを絶対に否定しないのがわかっていたから。

 目をぎゅっとつぶると、しばらくして、階下から階段を登ってくる足音が伝わってきた。
 
 ハルイチはドアを(自分の部屋なのに)なぜか遠慮がちに開く。

「……アオ? 大丈夫?」

 
 ドアから漏れてくる廊下の電灯の光量で一瞬目がなれず、ハルイチの顔がぼやけて見えた。

 しかしぼくはベッドの上でタオルケットにくるまりながら、顔だけ出して、むーっとむくれた顔をハルイチにむけてやる。




「久々に見た、アオのミノムシ」
「ハルが外堀埋めすぎなせいだし。この策士」
「外堀って……」
「そーだろ? あれじゃ、断ったらぼくだけ悪者感すごいじゃん」

 ぼくの言葉に、ハルイチはすこし傷ついたような苦笑いを浮かべる。

「……アオはさ、やっぱり断りたいんだ?」
「ーーっ! だ、だからそれはまだーー」

 急に核心に踏み込んできたハルイチの口調が沈んでいるように聞こえて、ぼくは焦って脊髄反射な反応をしてしまった。

「……ハル?」

 けれど、見るとハルイチはそっぽを向いていて、指で口元を隠すような仕草をしていた。
 明らかに、笑っているのをぼくに見せまいとしている。

「そ、そういうとこだよ!」

 ぼくは涙目になりながら、精いっぱい反抗してやった。

「……アオのほうこそ策士じゃん。俺のこと、そうやっていつも煽ってくる」

「はぁ!? い、いまのどこで! お前がへんたいなだけだろ!」

 ぼくは、ハルイチのことが直視できなくなり、タオルケットにくるまったまま背を向けた。

「……もう」

 と、ひとつため息をつくと、ハルイチはいきなりベッドにぎっと座った。
 重みで少しマットレスが沈み込む。

「……なんだよ」

「俺、この前測ったら、身長183センチになってたんだけどさ」

「ハル、また伸びたのかよ……てか、なんの話……自慢か?」

「カップルの理想の身長差、15センチって言われてるの知ってる?」

「15……?」

 ハッとする。
 ぼくの身長は現在168センチ……ということは、ハルイチとの身長差が、今ちょうど15センチ差になってしまっているではないか。

「ま、まさかそれも”運命”だとか言い始めるんじゃーー」

 と、ぼくが言いかけたときだった。

「……!!」




 いきなり、力強い腕がぼくの背後から伸びてきて、身動ぎ一つできなくなる。
 ハルイチが、ぼくのことを後ろから抱きしめていたのだ。

「こうやって、ハグするときに一番ちょうどいいんだって」

 ベッドの上で、いわゆる「バックハグ」されているような格好だ。
 ぼくはタオルケットにくるまったままではあるけれど。

「な、なに……してんだよ」

 心拍数が、とんでもないことになっている。
 いくら子供の頃からの幼馴染だって、こんなことをしたことは今までにない。

 どれだけ時間がたったのだろうか。
 ぼくが、願っていることはただ、このドキドキがどうかハルイチに伝わらないようにーーということだけだ。

「……ねえ、アオいまどんな顔してるのか見たい」

「やだ……」

 どさっ。

「は? ちょーー」

 と、ハルイチがぼくに覆いかぶさったかと思うと、今度は強い力でぼくのことを仰向けに引き寄せた。


 ……あれ?
 これ、ぼく押し倒されちゃってる?




「あと、キスするときにも、ちょうどいいって」

 ハルイチは、今にも触れあってしまいそうな距離で、やさしい口調なのに、とんでもないことを口走ってくる。

「それ、スタンディングポジションの話だろ!? この態勢で関係なくない!?」

 そんな反論にもならない反論をしてドギマギしているうちに、イケメンすぎるハルイチの顔が、本当にすぐ近くまで近づいてきた。


「アオ、もういい加減認めて? これが運命だってーー」

 その言葉は、目を覆いたくなるほどにまっすぐな星の光みたいでーー

「は……る……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。 そう思って、失恋の悲しみを猫カフェで埋めていたある日のこと。 僕は“彼“に出逢った。 その人は僕に愛を教えてくれる人でした。 失恋の先にある未来では、僕は幸せになっているのかな。

【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

処理中です...