桜の窓辺で。

ましゅまろくっきー

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第10話『あたしがあたしでいる理由』凛side

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私は、教室の窓際でひとり、外を見ていた。
伊織が体調を崩して保健室に運ばれていった日から、ずっと、何かが胸の奥にのこっていた。

ー無理して笑っている人を見ると、なんか放っておけない。
理由なんてない。ただ、そういう性分なのかもしれない。
……でも、ほんとは知ってる。
それは、昔の自分がそうだったから。


中学2年生の春。
凛は、親に転勤で地方の中学に転校した。
最初の頃は明るく振る舞っていたけれど、なかなか「輪」に入れなかった。

「藤咲さんってさ、なんかちょっと空気読めないよね」

ふとした一言で、席の周りから話しかけてくれる子はいなくなった。

「……あたしが何か悪いことした?」

そう聞ける相手もいなかった。


帰宅しても、家は両親が共働きで誰もいない。
勉強も運動も平均点。特別な特技もなかった。
だからこそ、誰かの役に立ちたかった。
誰かの「味方」でいたかった。

ーそれで、やっとじぶんが〝いていい〟と思えた。


高校に入って、伊織や美羽と出会った。
二人の優しさと、どこか抱えている影に、凛は自然と惹かれていった。

「たぶんあたあい、この子たちのそばにいたいって、思ったんだよね」

保健室で渡した飴玉。
あれは、過去の自分がもらいたかった優しさだったのかもしれない。


放課後の帰り道。
私はふと思いついて言った。

「ねぇ、これからもっといろんなとこ行こうよ。無理ない範囲で、さ」

伊織と美羽は顔を見合わせて頷いた。

「じゃぁ、今度一緒に……桜、見に行こっか」

伊織がそう言った。
私はそう言ってもらえて嬉しかった。

「うん。いいじゃん、それ」
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