桜の窓辺で。

ましゅまろくっきー

文字の大きさ
11 / 19

第9話『小さなつまずき』伊織side

しおりを挟む
入学から2週間。
高校生活にも少しずつ慣れてきたはずだった。
けれど、私に身体は、静かに悲鳴をあげていた。


朝の通学ラッシュ。
中学よりも少し遠くなった電車と、坂道の通学路。
それに、教室移動の多さ。
新しい時間割は、思った以上に身体にこたえていた。

「だいじょうぶ、まだ……いける」

そう自分に言い聞かせ得るのが、いつもの癖。

でも、その日は違った。
5時間目の現代文の途中、頭の奥がずきりと痛んだ。

視界がふわふわと揺れて、ペンを持つ手が止まる。


「伊織、大丈夫……?」

隣の席の凛が、すぐに気づいてくれた。

その声で、先生がこちらに気づく。

学校の内線で、「柏木です。生徒が体調を崩しました、今保健室に連れていきます」と保健室に連絡。
先生の声は落ち着いていたけれど、どこかに焦りもにじんでいた。


保健室。
ベッドに横たわる私の頬に、美羽がそっと手を当ててくれた。

「……言ったでしょ。無理しすぎちゃダメだって」

「でも、高校生になったんだよ……できるだけ、普通に通いたいって……」

言いかけて、私は涙が出そうになった。
情けない自分を見せたくなかった。でも、心のどこかで、本当は誰かに甘えたかった。


そのとき、凛がそっと扉を開けた。

「ちょっとだけ、顔見に来ただけ。……無理してたの、たぶん気づいてた。あたしさmすごい鈍いけど、友達の元気くらいは見てるよ。」

凛は手に飴玉をふたつ持っていた。

「はい。伊織と、美羽の分。」

「……ありがとう、凛」

「ま、恩着せがましくする気はないけどさ。元気になって、またバカな話してくれないとつまんないし。」

私はそっと笑った。


放課後、帰り道。
3人で並んで歩くいつもに風景。
ほんの少しずつ、心の距離が縮まっていく。

「無理しなくても、大丈夫だよ。伊織は伊織のペースでやればいいんだから」

美羽の声が、優しく風に溶けていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...