君を好きになるなんて絶対にありえない!

ジャック

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1章

第29話

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ここから本来は後夜祭になるはずなんだが、それは俺以外の話だ。俺はゴリラをぶん殴ったことで反省文をこの1時間で書いていた。


何を反省すればいいのか全く分からないがとりあえず適当に終わらした。


みんなの後夜祭が、終わるのとほぼ同時に反省文を書き終えた。後夜祭もサボる予定だったから反省文なんて余裕だわ。


そこからは陽と片付けをするんだが、これがまた大変なんだよ。仮面売りは、2人でやってたから2人で片付けないといけない。大変重労働だ。そして片付けしている中で不思議なことが起こっていた。


「なぁ、陽。なんで俺たちこんなに見られてるの?」


そう、周りの人達がすごい片付けしてる俺と陽を見てくるのだ。


「いや、簡単だろ?神楽を見てんだろ?」


「俺?」


なんだ俺なんか変なことでもしたのか?っていうか今日の俺はいつもの俺と何か違うのか?


「髪だよ。髪。月夜さんがお前の髪をワックスで固めてただろ?そのおかげで目がしっかりと見えて、髪もイケてるからな。今の神楽イケメンだぜ?顔もはっきりと見えるし。多分周りのみんなはお前が荒木神楽だって気づいてないんだろう。」


忘れてた。ゴリラに俺だと分からせないために髪もセットしたんだった。それでもイケメンはありえないと思うけどな。っていうか髪あげたぐらいでクラスメイトわからんとかありえんの??


「なるほどな。まぁ、どーでもいいな。さっさと片付けるぞ。」


そうして2時間ぐらいしたら全ての道具が片付いた。意外に仮面は売れたみたい。50個ぐらいあったけど、あと4個しかない。余った仮面は俺と陽で貰うことになった。


偶然にも北風を助けに行った時の仮面が余っていたので、それを貰った。なんかの思い出になるだろう。


クラスのみんなは打ち上げに行く様だけど、今回はパスした。ちょっと、いやかなり文化祭で色々なことがあったので、今日はもう休みたかった。


思い返してみてもなかなかに濃い文化祭だったと思うぞ。


姉ちゃんと会って、姉ちゃんのこと知って、ゴリラぶん殴って、北風慰めて、陽の家族にあって、反省文かいて


うん、かつてないほどの濃い一日だな。本当に一日で起こったこととは思えない。1年をこの1日に凝縮してもいいと思うぐらい。


片付けが終わったらそこで解散となった。ほとんどの人が打ち上げに行くらしい。行かないのは俺ぐらいだと思う。


みんなが帰るのを見てから俺も校門を出ようとした。が、


「待ってよ、荒木くん!」


そんな声がしたので振り返るとそこに居たのは


「探したよ!」


もう"仮面"をつけていない、素の笑顔を浮かべている北風のだった。


「どうしたんだ?こんな時間に。もう帰る時間だぞ。それに打ち上げとかあるんじゃないの?行かなくていいのか?」


「打ち上げはあるけど、今回は断った。色々あったしね。」


まぁ、そうだよな。元カレが襲ってきたのだ。精神的には1番辛いだろうな。


「そうか。それじゃあ、気をつけて帰ろよ。じゃなあ。」


「待ってよ!」


精神を癒す意味でも早く帰った方がいいと思うから、帰るように促したのに!


「打ち上げ、行くの?」


「行かねぇよ。」


「ならさ!私と話さない?ほら!色々あったでしょ!いい場所もあるんだよ!それにお礼もできていなし、あの事で聞きたいことも沢山ある!」


めんどくさいが、まぁ北風からしたらあのゴリラの件で俺に聞きたいことがあるんだろうな。確かになんの説明もしていないから。それに、俺も北風に伝えたいこともあるしな。


「わかった。ついて行くよ。」


「うん♪ありがとう!」


俺は北風の後ろを黙ってついて行く。すると、北風が急に語り出した。


「私ね?中学の時に虐められてたことがあったの。」


「…」


意外だな。と思ったけど何も言わない。まだ続きがあるだろうから。


「最初はみんな仲良かったんだ。でも、私は友達の中でも男子にかなり人気あってさ?たくさん告白された。それを全部フッたの。その中には友達の好きな人がいたり、人気のイケメンもいた。そしたらどんどん友達が離れていったの。みんなが私のことを「可愛いから調子乗ってる」って虐めてきた。私だって可愛くなれるように努力してたし、顔だって好きでこの顔に生まれたわけじゃないのに。それが恐くなって高校は誰も受験しない佐倉高校を受けた。かなり勉強したよ。高校では中学と同じことを繰り返したくなかったから、"仮面"を作ったんだ。何があってもみんなから嫌われないような"仮面"を。」


そこで北風の話は終わった。よく見ると手が震えている。自分の過去を人に言うのは勇気がいる。なら、俺はそれに応える義務がある。正直に答えてやろう。


「お前は高校に入って"仮面"を作る努力したつもりなんだろ?だがな、それは努力とは言わない。現実逃避だ。作るべきなのは"仮面"じゃない。信頼して、自分のことをわかってくれる友達だ。お前の中学の時の友達は知らん。そいつらはお前のことなんもわかってねぇよ。でもな?お前もわかって貰おうと、しなきゃいけないぜ?対立するかもしれない。言い合いになるかもしれない。それでもだ。感情でぶつかったら相手には意外と伝わるもんだ。それで伝わらなかったら諦めればいい。全員に伝わるってことは無い。でも、全員に伝わらないってことは無い。それは辛くて苦しいことかもしれないがな。相手に自分の全部が伝わって、自分の全てを知ってもらうなんて無理だが、ある程度知ってもらってる友達が北風の過去にいたら辛い時間も少しは変わってたかもな。」


こう考えるたびに思うよ。世の中平等じゃないって。それでは容姿も良くて、中身も明るく、コミュ力のたかい人は無敵だ。努力もあるが、天性によるものが大きすぎる。そいつはみんなの憧れで常に眩しい。ついて行きたくなる。真似したくなる。でも、憎めない。


それで自分を偽り、そいつになろうとする。北風みたいにな。悪いことではないと思う。けど、きっとそれは幸せなのかと問われるとわからない。俺は自分を偽ってまで楽に生きるために色んなものを捨てるのは幸せだとは思わない。俺は自分を貫いて生きた方がたとえ辛いことがあっても楽しいし幸せだと思うから。俺が今そうであるように。


「……時が経てば人は変わる。けれど、「自分」の芯は変えてはいけない。俺に誇れる俺でありたいから。少なくとも俺はそう思う。」


「厳しいね、荒木くんは。」


「当たり前だ。甘やかすことほど残酷なことは無い。甘やかせば正しいか悪いかも分からず、本当に大事な時に自分では決められなくなる。俺の自論だがな。」


「心に響くよ。」


「当然だろ?ぼっちの言葉だからな。……俺には陽がいる。対立することもあるが、俺の事を割とわかってくれる友達だ。」


アイコンタクトでは、まだわかってくれないがな。


「でもまぁ、頑張ったな。」


「えっ?」


俺は自然と北風の頭を撫でていた。


「"仮面"外して木村さん達と会うのは勇気がいることだと思うよ。それでも、会ったんだ。頑張ったな。きっと木村さん達なら「お前」を見ても、何かあっても離れたりしないと思うぞ?」


そこまで言ってようやく気づいた。俺が自然と北風の頭を撫でていることに。しかも北風は顔が真っ赤だった。これは怒ってるな。なんかかっこいいこと言ったのにこれでは台無しだな。


「ご…ごめん…。頭を撫でて。もうしないから。」


俺は北風の頭から手を離そうとしたが、それを止められた。


「待って…。怒ってないよ?だからもっと、頭…撫でて?」


上目遣いでそんなこと言われると、めっちゃ可愛く見えるな。しかも俺はノーガード。ダイレクトにダメージが来る。やべぇ、すっげぇ緊張してきた。


「お…おう」


そうして少しの間北風の頭を撫でていたが、俺の胸中は念仏で埋まっていた。

後書き

少し長めです。



「クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える」

もよろしくおねがいします!

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