君を好きになるなんて絶対にありえない!

ジャック

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2章

閑話陽と神楽

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Side川野陽

「おにぃ~!私、もう行くよー」

「おう、今行く~」

俺は初めて着る制服に袖を通し、妹の陽菜と一緒に外に出る。

「っていうかおにぃ大丈夫なの?今日入学式なんでしょ?」

「大丈夫だよ。気にすんな」

本当は全然大丈夫じゃない。このまま行けば遅刻は免れないだろう。

中学2年生になった陽菜と一緒に途中まで同じ道を歩む。俺はともかく陽菜は友達が沢山いるんだが、ここら辺で住んでいる友達は少ないらしくその友達が発熱したため今日は2人で歩いていた。陽菜との兄妹仲は悪くなかった。むしろ良いだろう。

「はぁ~!2年生のクラス…楽しみだな~♪」

陽菜はクラス替えを楽しみにしているらしく先程から浮き足立っている。

「そんなに楽しみか?」

「そりゃ楽しみだよ!年に1回のイベントだよ!はぁ~。雪乃ちゃんと同じクラスだったらいいなぁー。おにぃは楽しみじゃないの?入学式」

「…あんまりだなぁ」

「へぇ?どうして?」

「だってさぁ。中学の頃とは違って知らないやつが沢山いるんだ。そう考えたらなんか…緊張するだろ?」

「う~ん?そう?」

「そういうもんだ。陽菜は結構モテるから陽菜と同じクラスになった男子は喜ぶだろうな~」

陽菜は結構社交的だからわかんないかな。俺も基本的には社交的だし、本当は特に緊張なんてしてない。

でも入学式が楽しみじゃないっていうのは本当だ。

自慢じゃないけど多分俺の家は周りより少しは金持ちだ。だから中学の頃は金目的で遊びに誘われたりもした。その時は俺も純粋だったからなんの疑いもなく金を使っていた訳だが…。

そのせいで今は結構退屈していた。親しい友達はいるし、サッカーは楽しいんだけどな。どこか違う。

でも親の勧めもあって県内でも結構レベルの高い学校に入学することになり、親しい友達とも離れることになった。

新しい環境が嫌いなわけじゃないけど、中学の時の経験もあってはっきり言って好きじゃない。近づいてくるのは金か顔目的ばかりだし。だから高校もあんまり楽しみじゃない。つまんなさそうだし。

「そういうもんだ。陽菜は結構モテるから陽菜と同じクラスになった男子は喜ぶだろうな~」

「どーでもいいー。というかそういう話ウザイ。私はロマンチックな出会いがいいの」

これはお世辞でもなんでもなく陽菜は結構モテる。兄としてはとてつもなく心配なんだが、そういう話になると陽菜は難色を示すので話せない!おにぃはただ心配なだけなのに!

「んじゃあ、私こっちだから」

「おう。気をつけてな」

俺と陽菜は交差点で別れて互いに背を向け、それぞれの通学路を歩き出す。それにしても今から走っても多分間に合わないな。はぁ。遅刻した場合どうなるんだろう?まぁ、どうでもいいか…。

そんなことを考えていたら隣の車道から結構なスピードを出している車が見えた。

おいおい。そんなにスピード出して大丈夫かよ?

その瞬間に横で風が通り過ぎた。どうやら1人の高校生?が走っているようだ。

っていうか俺と同じ制服?そんなことよりはやすぎない?サッカーで鍛えた俺より速い…。

少し気になってそいつとその車の行先を見てしまう。その先には陽菜がいた。

「陽菜っ!!!!」

その事に気づいたら大声を出していた。その車はスピードを緩めない。

ヤバいっ!俺が走っても間に合わない!!

は一切のスピードを緩めることなく陽菜の元に走っていた。そこで気づいた。は早くに事故を察知したのだと。

キィィィッッ!!!

その瞬間に俺も走り出した。車は先程まで陽菜のいたところの寸前の場所で止まっていた。肝心の陽菜はと反対側の歩道へと渡りきってきた。

周囲が激しくなり、俺も急いで陽菜の元に駆け寄る。

はまたも走って俺とすれ違い、周囲の喧騒を気にもせず自分のバックを拾って走り出していた。行先は俺が通う高校の道だった。

「大丈夫か!?陽菜!怪我は!?」

「う、うん…。さっきの人が助けてくれた…。おにぃと同じ制服の人。でも、その人…怪我してたと思うけど…」

それから警察が来たり親や色々な人が来たり、大変だった。おれも陽菜と一緒に付き添って結局その日、入学式に行ったのは12時ぐらいで既に終わっていた。

「初日から遅刻とはどういうことだ!?それでもうちの生徒の自覚はあるのか!?全く2人も遅刻とは今年の生徒は自覚が足りとらん!」

長々と説教を受けた。事情は説明せず、寝坊したということにした。

「そこでそいつと反省文でも書いてろ!」

両面刷りの反省文を2枚渡され、指示された場所に向かった。そこには頭を悩ませているが既にそこにいた。

後ろ姿だけしか見てないけどすぐにわかった。

「よう!あんたも遅刻したの?」

俺は興味があったので話しかけてみた。お礼も言おうと思ってたし。

「ん?あ、えーと、そうだけど……、俺が知ってる人?」

「いいや?俺も入学式で遅刻してさ。先生にここで反省文書けって言われたから」

「へー。そうなんだ」

「俺は寝坊したんだけど、お前はなんで遅刻したの?」

「俺?俺もねぼうした。ついでに道に迷ってさ…マジでここまで来るの大変だった」

足の方を見るとやっぱり膝のところは破けていて血が出ている。陽菜が言ってた通りでやっぱりこの人はだと確信を持った。
 
「足、どうしたの?怪我してるじゃん」

「あ、えーと…、石につまづいた」

その言葉を聞いた瞬間に笑ってしまった。それは陽菜の情報どおりの言葉だったからだ。てっきり自慢でもすると思ってたからな。まさかここでそんなこと言うとは思わなかった。だって誤魔化す必要なんかどこにもないだろ?

「け、結構でかい石だったんだよ!聞いての!?」

「あっはっは。ごめん。そうだったのか。それ、俺が直してやろうか?俺の家結構金あるからさ」

「はぁ?何言ってんだ?俺の怪我をなんでお前に償って貰うんだよ?」
 
その言葉を聞いてもう1回笑っしまった。俺の姿を見ては訝しんでいた。
 
「そうだよな~。悪い。俺、川野陽。気軽に陽って呼んでくれ」

俺が名乗って手を出すと同じようにしてくれた。
 
「お、俺は荒木神楽」

「そうか。じゃあ神楽だな。これからよろしくな!」

「お、おう!これって友達か!?」  
 
「え?違うの?」

変なこと聞くやつだなって思ってしまった。

「い、いやなんでもない。よろしくな!」  

神楽の反省文を見るとまだ1枚目で全然かけてなかった。

「神楽は反省文書いたことないの?」

「あんまりな」

「反省文のうまい書き方があるんだけど教えてやろうか?」

「マジで!?」

「おう。反省文も文章だからな。起承転結がいるんだよ」

「なるほど」

「だから、同じように経過、反省、課題、決意っていう風に書いたら割と字数稼げるし、結構書きやすいぜ」

「なるほどな!!助かったよ!」

神楽はそれまでの文章を消して書き直していた。俺も神楽の隣に座って自分の文章を書き始めた。

「そういや、神楽は何組か知ってるのか?」

「あぁ。一応な。さっき説教されながら教えてもらった。3組だってさ」

「マジか!?俺と同じクラスじゃねぇか!ラッキーだわ!」

この時は本当に幸運だと思った。神楽は結構面白そうだし、何より良い奴だから。
 
「マジか。じゃあ、これからもよろしく」

「おう」

これが俺と神楽の出会いだった。
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