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第四章
新しい仲間
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夕食後、ユリウスに抱きついたままいつの間にか眠っていたようだ。気がつくとベッドの上で、ユリウスの腕が腰に絡まっていた。
ルカが身じろぐとすぐに目を覚ましたユリウスは、「どうした?」と声をかけてくる。ルカはもぞもぞとユリウスの腕を抜け出した。トイレに行ってくると言えば、ユリウスが連れて行ってやると起き出してくる。ルカは押し留めた。
「一人で大丈夫だから」
ユリウスは不満そうだったが、よく知った屋敷内だ。一日寝ていたせいで、夜中にもかかわらず目も冴えている。ついでに厨房をのぞいて、アントンの仕込みを見てくると言うと、ユリウスは諦めてベッドに戻った。
トイレを終えて厨房をのぞくと、アントンはノートに何事か書きつけているところだった。
「何してるの?」
ひょいとノートを見ると、料理の絵と共に調理工程から材料の分量が事細かに記してある。火は強めに、塩はここで足すなど、注意書きもびっしりだ。
「こうやってな、レシピを記録しておくと、いつも同じ味が出せるからな」
「このノートを見せてもらえれば、わたしでも作れる?」
「作れんことはないが、まぁ練習は必要だな」
「そっか」
アントンみたいに美味しい料理が作れたら楽しいだろうな。王宮にいた頃、林でとれるきのこや野菜は、生か茹でるか焼くかだった。いろんな食材を組み合わせて、上手く調理すればもっとおいしく食べられただろうに。
「なんだ、ルカは料理に興味があるのか?」
「うん。アントンみたいに作れたら楽しいだろうなって」
「いつでも教えてやるぞ」
「ほんとに?」
「ああ。まずは基本からおさえていって。そうだな、ユリウス様のお好きな料理を教えてやるぞ」
それは、ものすごく興味がある。ルカが作った料理を、ユリウスが食べてくれるところを想像すると、こそばゆい感じがする。
「焦らず、少しずつ覚えてけばいい。時間のあるときにいつでも来な」
「うん」
ルカが頷いたところへ、もう一人厨房をのぞく人物がいた。ルカと同じ黒髪黒目の希少種だ。でも知らない顔だ。戸惑っていると、その希少種はすたすたルカのところへ歩いてくる。目の前に立つと、すらりと細身だが意外に背が高い。
「誰?」
ルカが聞いたとき、厨房の入り口から賑やかな声が上がった。
「あー! ラウ! こんなところにいたのか」
ディックだ。ディックは厨房に入ってくるとラウと呼んだ希少種の腕をつかんだ。
「今日も話し合いするって言ってたろ? おまえよぉ、すぐにふらふらとどっかいなくなるよな。―――よお、ルカ」
ディックは早く来いよとラウを引っ張りながら、ルカに軽く手をあげる。不思議そうな顔をして見ていると、ディックは立ち止まった。
「そういやルカは、ラウは初めてだよな。昨日屋敷の人達には、紹介したんだけどな」
アントンは知っているのか、希少種にちらりと視線を向ける。
「ルカも来いよ。他の奴らも紹介する。新しく加わった仲間が、このラウを含めて何人かいるんだ」
ディックはラウをつかんだ反対の手でルカの手を取った。ルカは引かれるままにディックの部屋に連れて行かれた。
ディックの部屋にはフォリスをはじめ見知った顔と、ディックの言う新しく加わった仲間なのだろう。知らない顔がいくつかある。
ディック達は夜中にこうやって集まって今後のことについて話し合っているらしい。もともと盗賊稼業で夜に活動することが多かったディック達だ。この時間が一番集中できる時間帯だという。
ディックは、新入りを順に紹介していき、最後にラウを紹介した。ラウは、男の希少種で、元は王宮にいたのだそうだ。ラウはにこりともせずに冷めた白い頬で、ディックが自分について説明するのを聞いている。
王宮、と聞いてルカはじっくりとラウの顔を見た。王宮奴隷なら何人か顔は知っている。でもラウの顔は見たことがなかった。王宮にはたくさんの希少種の奴隷がいる。普段から別の場所で生活していたルカが、知らない顔があって当然だ。
話は主に今建てている林の小屋に関することだった。設計図を広げて、作業手順の確認や、今後の仕事について役割分担をどうするかなどを話し合っていた。
話し合いが終わり、皆が部屋に戻っていくと、あとにはディック、フォリス、ルカが残った。そろそろルカもユリウスのところに戻ろうとすると、ディックに呼び止められた。
「で? 昨日はどうだった?」
聞かれるかなと思っていたら、やっぱり聞かれた。フォリスもベッドに腰掛けて、興味深そうにルカを見てくる。
昨日いろいろ教えてもらったことでもある。ルカは昨夜のことをディックとフォリスに話した。二人はうんうん言って耳を傾け、時折それでそれで?と先を促す。聞かれるままに正直に答えた。
最後まで聞き終えると、フォリスは「とりあえず上手くいったみたいでよかったよ」と言った。すると、ディックは「いやいやいや」と手を顔の前で大きく振った。
「ユリウスのやつ、一回達っただけなんだろ? 絶対満足できてねぇよ」
「達ったって? セーエキ出したかってこと?」
「そうそう」
「多分、一回かな」
ルカがわかったのは一回だった。
「そんなに何度も出るものなの?」
「まぁ人によるけどよ。ルカとやったのははじめてだったんだ。よく一回で我慢できたなと思ってな」
「それは……」
ルカが眠ってしまったからかもしれない。
ユリウスはもっとしたかったんだろうか。だとしたら悪いことをした。でももし眠らなかったとしても、ルカにはあれを続けて二度もはできなかったとも思う。一度しただけで体は裂けそうだったのだ。
せっかく上手くできたと安心していたのに、ディックにそう言われ、ルカはしゅんと肩を落とした。
「こら、ディック。ルカには精一杯だったんだ。そんなこと言って不安にさせちゃだめだよ」
フォリスが項垂れたルカの頭をぽんぽん撫でた。
「初めてにしてはルカはよくがんばったよ。ちゃんとルカだって達けたんでしょ?」
「……すごく気持ちよくなったときがあった。それのこと?」
「それのこと。初めてでちゃんと達けたんだ。上々だよ。ユリウスだってルカを気持ちよくできて、絶対満足してるよ。自信持って」
「……うん」
フォリスの言葉に少しだけ気持ちを持ち直し、ルカはユリウスの眠る部屋に戻った。ユリウスは眠りが浅い。そっと忍び込んだのに、目を覚ました。
「ずいぶん長かったな」
「ディック達のところにいた」
ルカは新しく加わった希少種を紹介してもらったことを話した。
「ラウっていう王宮から逃げてきた人もいた。ユリウス知ってる?」
「ああ、ここに連れてきた日に一通り顔と名前とどこから逃げてきてのかは一致させたからな」
「王宮から逃げてきた希少種って、わたし以外にもいるんだね。王都で会ったハルムもそうだったし。みんな、王宮騎士団に追われたのかな」
白い軍服の王宮騎士団に追われるのは怖かった。みんな腰に剣を佩いていたし、同じ軍服の集団が自分一人を標的に追い込んでくる。二度とあんな目に遭うのは嫌だ。
逃げてきた時のことを思い出していると、ユリウスにベッドの中へ引きずりこまれた。
「もう少し眠ろう、ルカ。思い出すなと言っても無理だろうが、俺の側にいる限り、二度と同じ目に遭わせたりせん」
「……うん」
ルカはユリウスの胸に頬を寄せた。そうだ。この腕の中だけは絶対だ。どんなに不安なことがあっても、ユリウスの腕の中だけはいつも必ずルカを優しく受け止めてくれる。それだけが他の何よりもルカにとっての真実だ。
ルカが身じろぐとすぐに目を覚ましたユリウスは、「どうした?」と声をかけてくる。ルカはもぞもぞとユリウスの腕を抜け出した。トイレに行ってくると言えば、ユリウスが連れて行ってやると起き出してくる。ルカは押し留めた。
「一人で大丈夫だから」
ユリウスは不満そうだったが、よく知った屋敷内だ。一日寝ていたせいで、夜中にもかかわらず目も冴えている。ついでに厨房をのぞいて、アントンの仕込みを見てくると言うと、ユリウスは諦めてベッドに戻った。
トイレを終えて厨房をのぞくと、アントンはノートに何事か書きつけているところだった。
「何してるの?」
ひょいとノートを見ると、料理の絵と共に調理工程から材料の分量が事細かに記してある。火は強めに、塩はここで足すなど、注意書きもびっしりだ。
「こうやってな、レシピを記録しておくと、いつも同じ味が出せるからな」
「このノートを見せてもらえれば、わたしでも作れる?」
「作れんことはないが、まぁ練習は必要だな」
「そっか」
アントンみたいに美味しい料理が作れたら楽しいだろうな。王宮にいた頃、林でとれるきのこや野菜は、生か茹でるか焼くかだった。いろんな食材を組み合わせて、上手く調理すればもっとおいしく食べられただろうに。
「なんだ、ルカは料理に興味があるのか?」
「うん。アントンみたいに作れたら楽しいだろうなって」
「いつでも教えてやるぞ」
「ほんとに?」
「ああ。まずは基本からおさえていって。そうだな、ユリウス様のお好きな料理を教えてやるぞ」
それは、ものすごく興味がある。ルカが作った料理を、ユリウスが食べてくれるところを想像すると、こそばゆい感じがする。
「焦らず、少しずつ覚えてけばいい。時間のあるときにいつでも来な」
「うん」
ルカが頷いたところへ、もう一人厨房をのぞく人物がいた。ルカと同じ黒髪黒目の希少種だ。でも知らない顔だ。戸惑っていると、その希少種はすたすたルカのところへ歩いてくる。目の前に立つと、すらりと細身だが意外に背が高い。
「誰?」
ルカが聞いたとき、厨房の入り口から賑やかな声が上がった。
「あー! ラウ! こんなところにいたのか」
ディックだ。ディックは厨房に入ってくるとラウと呼んだ希少種の腕をつかんだ。
「今日も話し合いするって言ってたろ? おまえよぉ、すぐにふらふらとどっかいなくなるよな。―――よお、ルカ」
ディックは早く来いよとラウを引っ張りながら、ルカに軽く手をあげる。不思議そうな顔をして見ていると、ディックは立ち止まった。
「そういやルカは、ラウは初めてだよな。昨日屋敷の人達には、紹介したんだけどな」
アントンは知っているのか、希少種にちらりと視線を向ける。
「ルカも来いよ。他の奴らも紹介する。新しく加わった仲間が、このラウを含めて何人かいるんだ」
ディックはラウをつかんだ反対の手でルカの手を取った。ルカは引かれるままにディックの部屋に連れて行かれた。
ディックの部屋にはフォリスをはじめ見知った顔と、ディックの言う新しく加わった仲間なのだろう。知らない顔がいくつかある。
ディック達は夜中にこうやって集まって今後のことについて話し合っているらしい。もともと盗賊稼業で夜に活動することが多かったディック達だ。この時間が一番集中できる時間帯だという。
ディックは、新入りを順に紹介していき、最後にラウを紹介した。ラウは、男の希少種で、元は王宮にいたのだそうだ。ラウはにこりともせずに冷めた白い頬で、ディックが自分について説明するのを聞いている。
王宮、と聞いてルカはじっくりとラウの顔を見た。王宮奴隷なら何人か顔は知っている。でもラウの顔は見たことがなかった。王宮にはたくさんの希少種の奴隷がいる。普段から別の場所で生活していたルカが、知らない顔があって当然だ。
話は主に今建てている林の小屋に関することだった。設計図を広げて、作業手順の確認や、今後の仕事について役割分担をどうするかなどを話し合っていた。
話し合いが終わり、皆が部屋に戻っていくと、あとにはディック、フォリス、ルカが残った。そろそろルカもユリウスのところに戻ろうとすると、ディックに呼び止められた。
「で? 昨日はどうだった?」
聞かれるかなと思っていたら、やっぱり聞かれた。フォリスもベッドに腰掛けて、興味深そうにルカを見てくる。
昨日いろいろ教えてもらったことでもある。ルカは昨夜のことをディックとフォリスに話した。二人はうんうん言って耳を傾け、時折それでそれで?と先を促す。聞かれるままに正直に答えた。
最後まで聞き終えると、フォリスは「とりあえず上手くいったみたいでよかったよ」と言った。すると、ディックは「いやいやいや」と手を顔の前で大きく振った。
「ユリウスのやつ、一回達っただけなんだろ? 絶対満足できてねぇよ」
「達ったって? セーエキ出したかってこと?」
「そうそう」
「多分、一回かな」
ルカがわかったのは一回だった。
「そんなに何度も出るものなの?」
「まぁ人によるけどよ。ルカとやったのははじめてだったんだ。よく一回で我慢できたなと思ってな」
「それは……」
ルカが眠ってしまったからかもしれない。
ユリウスはもっとしたかったんだろうか。だとしたら悪いことをした。でももし眠らなかったとしても、ルカにはあれを続けて二度もはできなかったとも思う。一度しただけで体は裂けそうだったのだ。
せっかく上手くできたと安心していたのに、ディックにそう言われ、ルカはしゅんと肩を落とした。
「こら、ディック。ルカには精一杯だったんだ。そんなこと言って不安にさせちゃだめだよ」
フォリスが項垂れたルカの頭をぽんぽん撫でた。
「初めてにしてはルカはよくがんばったよ。ちゃんとルカだって達けたんでしょ?」
「……すごく気持ちよくなったときがあった。それのこと?」
「それのこと。初めてでちゃんと達けたんだ。上々だよ。ユリウスだってルカを気持ちよくできて、絶対満足してるよ。自信持って」
「……うん」
フォリスの言葉に少しだけ気持ちを持ち直し、ルカはユリウスの眠る部屋に戻った。ユリウスは眠りが浅い。そっと忍び込んだのに、目を覚ました。
「ずいぶん長かったな」
「ディック達のところにいた」
ルカは新しく加わった希少種を紹介してもらったことを話した。
「ラウっていう王宮から逃げてきた人もいた。ユリウス知ってる?」
「ああ、ここに連れてきた日に一通り顔と名前とどこから逃げてきてのかは一致させたからな」
「王宮から逃げてきた希少種って、わたし以外にもいるんだね。王都で会ったハルムもそうだったし。みんな、王宮騎士団に追われたのかな」
白い軍服の王宮騎士団に追われるのは怖かった。みんな腰に剣を佩いていたし、同じ軍服の集団が自分一人を標的に追い込んでくる。二度とあんな目に遭うのは嫌だ。
逃げてきた時のことを思い出していると、ユリウスにベッドの中へ引きずりこまれた。
「もう少し眠ろう、ルカ。思い出すなと言っても無理だろうが、俺の側にいる限り、二度と同じ目に遭わせたりせん」
「……うん」
ルカはユリウスの胸に頬を寄せた。そうだ。この腕の中だけは絶対だ。どんなに不安なことがあっても、ユリウスの腕の中だけはいつも必ずルカを優しく受け止めてくれる。それだけが他の何よりもルカにとっての真実だ。
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