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第九章 魔力を吸う札
戦う理由
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私室に戻ってからというもの、ルーチェはひたすら魔力封じの札を作っていた。
といっても、然程時間が経ったわけではないため、完成したのはまだ三枚だけだ。
本来であれば、同じだけの時間を使って作成できるのは一枚だけなのだが、今回は魔力封じの力の籠め方を一枚作るごとに少しずつ増やしていくという実験的な作り方をしているせいか、いつもよりは作成時間が短く済んでいる。
これまでは、どの札にも一律同じ量の力を籠めていたが、札に封じられた分の魔力は何故だか回復ができないと氷依に言われたため、より強い状態で魔性を捕らえられるよう、封じる魔力量を調節できないかと考えたのだ。
「僕の考えが正しければ、魔性の強さに合わせて適切な札を使うことで、ほぼ完璧に近い状態の魔性を使役することができるはずなんだ……」
問題は、魔性の強さをどうやって見抜くかということなのだが、そればっかりは現場でなんとかしてもらうしかない。何せルーチェは魔性の研究をしていつつも、氷依以外の魔性の姿を見たことは過去一度としてないのだから。
自分の役割はあくまで札の作成のみであり、魔性を捕まえるのは騎士達の領分だ。
「そのために高い給金を払っているわけだし……ね」
これで無理などと言おうものなら、クビ──若しくは減給されても文句は言えないだろう。
何故なら彼等の価値はその生命にしかなく、命を懸けた任務を熟すからこそ王宮に勤める他の者達よりも高い給金を受け取っているのだ。良い思いだけしてそれに見合った働きをしないなど、許されるはずがない。
「今度の任務に失敗したら給金を減らすと言ったら、死に物狂いで任務にあたってくれるかな? ……それとも、逆に成功したら多額の報奨を与えると言った方が正解かな……?」
どうしたら騎士達が死ぬ気で働くだろうかと、ルーチェは考えを巡らせる。
誰だって命は惜しい──それはそうだろう。しかしそれでは魔性を捕らえることなどできない。
今までのやり方では手緩かった。だからこそ未だ駒となる魔性は氷依しかおらず、自分の真に求めるものは手に入っていないのだ。
手っ取り早い方法として、騎士達全員を操り人形と化せば可能ではあると思う。しかしそれはルーチェにとってかなりの負担を強いられることになるため、現実的とは言えなかった。
「ここが考えどころだよね……」
休憩を兼ねてじっくり考えようと、ルーチェは一旦札作りの手を止め、飲み物を持って来るよう申し付けようと席を立つ。
その時、不意に騒々しい足音が遠くの廊下から近付いてきて、それはすぐにルーチェの私室の真ん前までやって来ると、そこでピタリと止まった。
「なんだ?」
一体誰が──。
不審に思ったのも束の間、此方が声を掛けるより早く、もの凄い勢いで扉が外側から強く叩かれた。
「ルーチェ様! 大変です! ルーチェ様!」
声から察するに、どうやら扉の前にいるのはミルドであるらしい。
聞き慣れた──けれど大嫌いな──声が、扉の外側からハッキリと聞こえてくる。
「ルーチェ様! ことは一刻を争います! ですからどうか、どうか入室の許可をお願いします!」
ただでさえ札作りをして疲れているこの時に、大嫌いな男の顔など見たくもない。けれど彼の様子からして真実切羽詰まっていることは伝わってくるから、無下にすることもできなかった。
「……何があったんだい?」
結果、ルーチェは扉を開けることなくミルドに内容を問おうとしたのだが──それに答えたのは、別の声だった。
しかもその声は、彼のすぐ側から聞こえたのだ!
といっても、然程時間が経ったわけではないため、完成したのはまだ三枚だけだ。
本来であれば、同じだけの時間を使って作成できるのは一枚だけなのだが、今回は魔力封じの力の籠め方を一枚作るごとに少しずつ増やしていくという実験的な作り方をしているせいか、いつもよりは作成時間が短く済んでいる。
これまでは、どの札にも一律同じ量の力を籠めていたが、札に封じられた分の魔力は何故だか回復ができないと氷依に言われたため、より強い状態で魔性を捕らえられるよう、封じる魔力量を調節できないかと考えたのだ。
「僕の考えが正しければ、魔性の強さに合わせて適切な札を使うことで、ほぼ完璧に近い状態の魔性を使役することができるはずなんだ……」
問題は、魔性の強さをどうやって見抜くかということなのだが、そればっかりは現場でなんとかしてもらうしかない。何せルーチェは魔性の研究をしていつつも、氷依以外の魔性の姿を見たことは過去一度としてないのだから。
自分の役割はあくまで札の作成のみであり、魔性を捕まえるのは騎士達の領分だ。
「そのために高い給金を払っているわけだし……ね」
これで無理などと言おうものなら、クビ──若しくは減給されても文句は言えないだろう。
何故なら彼等の価値はその生命にしかなく、命を懸けた任務を熟すからこそ王宮に勤める他の者達よりも高い給金を受け取っているのだ。良い思いだけしてそれに見合った働きをしないなど、許されるはずがない。
「今度の任務に失敗したら給金を減らすと言ったら、死に物狂いで任務にあたってくれるかな? ……それとも、逆に成功したら多額の報奨を与えると言った方が正解かな……?」
どうしたら騎士達が死ぬ気で働くだろうかと、ルーチェは考えを巡らせる。
誰だって命は惜しい──それはそうだろう。しかしそれでは魔性を捕らえることなどできない。
今までのやり方では手緩かった。だからこそ未だ駒となる魔性は氷依しかおらず、自分の真に求めるものは手に入っていないのだ。
手っ取り早い方法として、騎士達全員を操り人形と化せば可能ではあると思う。しかしそれはルーチェにとってかなりの負担を強いられることになるため、現実的とは言えなかった。
「ここが考えどころだよね……」
休憩を兼ねてじっくり考えようと、ルーチェは一旦札作りの手を止め、飲み物を持って来るよう申し付けようと席を立つ。
その時、不意に騒々しい足音が遠くの廊下から近付いてきて、それはすぐにルーチェの私室の真ん前までやって来ると、そこでピタリと止まった。
「なんだ?」
一体誰が──。
不審に思ったのも束の間、此方が声を掛けるより早く、もの凄い勢いで扉が外側から強く叩かれた。
「ルーチェ様! 大変です! ルーチェ様!」
声から察するに、どうやら扉の前にいるのはミルドであるらしい。
聞き慣れた──けれど大嫌いな──声が、扉の外側からハッキリと聞こえてくる。
「ルーチェ様! ことは一刻を争います! ですからどうか、どうか入室の許可をお願いします!」
ただでさえ札作りをして疲れているこの時に、大嫌いな男の顔など見たくもない。けれど彼の様子からして真実切羽詰まっていることは伝わってくるから、無下にすることもできなかった。
「……何があったんだい?」
結果、ルーチェは扉を開けることなくミルドに内容を問おうとしたのだが──それに答えたのは、別の声だった。
しかもその声は、彼のすぐ側から聞こえたのだ!
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