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第六章 因縁
認められないこと
「え……?」
あまりにも言葉少なに、しかも唐突であったため、アランは一瞬、何を言われたのか理解が追いつかなかった。
「隊長? 今、なんて──」
「私はお前が邪魔だった。お前を副隊長に任命したことを後悔するばかりの毎日だった。だからお前が利き腕を失い、これで堂々と騎士団から除隊させられると思ったら……喜びしかなかったよ」
口の端に笑みさえ浮かべ、これで良いか? と付け加えられ、アランは呆然とミルドを見つめる。
「そんな……嘘……ですよね? 俺が邪魔だったなんて……俺は、俺は隊長の役に立っていたはず……」
信じられないという気持ちのまま呟いた言葉は、しかしミルドのわざとらしいまでの大きなため息によってかき消されてしまった。
「お前が私の役に立っていただと? 冗談を言うのはよしてくれ。ここ最近だけでも、お前は一体幾つの命令違反をしたと思っている? 手を出すなと言った村人達に暴力を振るい、魔性相手に喧嘩を売って、極め付けはその黒い靄だ。隊長である私の言うことを聞かず、好き勝手に振る舞う隊員など、邪魔でしかないのは当たり前だろう」
せっかく片腕を失くして体良く厄介払いができたのに、とミルドは肩を竦めて見せる。
それを聞いたアランは、激昂して大声を張り上げた。
「ふざけるな! 俺が邪魔だった? 後悔ばかりだったって? そんなはずはない! 俺は十分過ぎる程あんたの役に立ってたはずだ。他の無能どもとは比べものにならないぐらい! なのに何だ、その言い草は!? 俺を馬鹿にするのも大概にしろ!」
だが、ミルドも負けてはいなかった。アランの言い分に対し、真っ向から怒鳴り返してきたのだ。
「だったら命令違反については、どう説明するつもりだ⁉︎ 如何に隊の役に立とうとも、命令を守らず列を乱すお前は、邪魔以外の何者でもない! 隊にとっても、私にとっても。それは紛れもない事実だ!」
「違う! 俺は邪魔者なんかじゃない! そんなのは嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ‼︎」
両腕で頭を抱え、狂ったように「嘘だ」と叫び続けるアランの全身から黒い靄が噴き出し、ミルドと氷依に襲い掛かる。
「無駄よ!」
それは氷依の張った氷の壁によって一旦は阻まれたが、今度は最初の時とは違い一向に引く様子はなく、しつこく氷壁に取り付き、じわじわと氷を侵食するかのように蠢いた。
「俺は……邪魔者なんかじゃない……」
ふらり、と覚束ない足取りで、アランはミルドへ向かい、一歩足を踏み出す。
「妾達に近付くな!」
刹那、氷依が行く手を阻むようにアランの目の前に氷壁を出現させたが、アランが剣を横薙ぎにすると、それは簡単に砕け散った。
「なっ……!」
驚愕の表情を浮かべる女魔性にニヤリとした笑みを浮かべ、アランはもう一歩前へ踏み出──しかけたところで、新たに出現した氷壁に行く手を遮られ、思わず舌打ちした。
「次から次へと……無駄なんだよ!」
滅茶苦茶に剣を振り回し、アランは出現する端から氷壁を砕き、壊して行く。
だが、砕いても砕いてもすぐさま次の氷壁が形成されるため、一向に状況は変わらない。
「隊長……」
俺はどうしても。
「隊長……」
あんたに一太刀浴びせてやらないと気が済まない。
これまでずっと隊に貢献してきた自分を酷い言葉で詰り、アッサリ切り捨てようとした最低な奴に、鉄槌を喰らわせてやりたい。なのにこんな脆弱な氷壁に遮られて、それが敵わないなど到底認めることはできなかった。
「どうして届かないんだよっ!」
激しい怒りと苛立ち、焦燥によってアランが大きく剣を頭上に振り上げた瞬間──声が、聞こえた。
『ならば、我が手を貸してやろう』
それは、利き腕を失くし、騎士団からの除隊を命じられ、絶望に打ちひしがれていたアランを救い上げてくれた、恩人ともいえる者の声だった。
失くしたアランの腕を見つけ、元通りにしてくれた、奇跡の使い手の声。
その声が耳に届くと同時に、これで勝った! とアランは思った。
この声の主が力を貸してくれるのであれば、自分は無敵だ。これでミルドを叩き潰せる。
だからアランは──。
「頼む! 手を貸してくれ!」
迷うことなく、そう言った。
あまりにも言葉少なに、しかも唐突であったため、アランは一瞬、何を言われたのか理解が追いつかなかった。
「隊長? 今、なんて──」
「私はお前が邪魔だった。お前を副隊長に任命したことを後悔するばかりの毎日だった。だからお前が利き腕を失い、これで堂々と騎士団から除隊させられると思ったら……喜びしかなかったよ」
口の端に笑みさえ浮かべ、これで良いか? と付け加えられ、アランは呆然とミルドを見つめる。
「そんな……嘘……ですよね? 俺が邪魔だったなんて……俺は、俺は隊長の役に立っていたはず……」
信じられないという気持ちのまま呟いた言葉は、しかしミルドのわざとらしいまでの大きなため息によってかき消されてしまった。
「お前が私の役に立っていただと? 冗談を言うのはよしてくれ。ここ最近だけでも、お前は一体幾つの命令違反をしたと思っている? 手を出すなと言った村人達に暴力を振るい、魔性相手に喧嘩を売って、極め付けはその黒い靄だ。隊長である私の言うことを聞かず、好き勝手に振る舞う隊員など、邪魔でしかないのは当たり前だろう」
せっかく片腕を失くして体良く厄介払いができたのに、とミルドは肩を竦めて見せる。
それを聞いたアランは、激昂して大声を張り上げた。
「ふざけるな! 俺が邪魔だった? 後悔ばかりだったって? そんなはずはない! 俺は十分過ぎる程あんたの役に立ってたはずだ。他の無能どもとは比べものにならないぐらい! なのに何だ、その言い草は!? 俺を馬鹿にするのも大概にしろ!」
だが、ミルドも負けてはいなかった。アランの言い分に対し、真っ向から怒鳴り返してきたのだ。
「だったら命令違反については、どう説明するつもりだ⁉︎ 如何に隊の役に立とうとも、命令を守らず列を乱すお前は、邪魔以外の何者でもない! 隊にとっても、私にとっても。それは紛れもない事実だ!」
「違う! 俺は邪魔者なんかじゃない! そんなのは嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ‼︎」
両腕で頭を抱え、狂ったように「嘘だ」と叫び続けるアランの全身から黒い靄が噴き出し、ミルドと氷依に襲い掛かる。
「無駄よ!」
それは氷依の張った氷の壁によって一旦は阻まれたが、今度は最初の時とは違い一向に引く様子はなく、しつこく氷壁に取り付き、じわじわと氷を侵食するかのように蠢いた。
「俺は……邪魔者なんかじゃない……」
ふらり、と覚束ない足取りで、アランはミルドへ向かい、一歩足を踏み出す。
「妾達に近付くな!」
刹那、氷依が行く手を阻むようにアランの目の前に氷壁を出現させたが、アランが剣を横薙ぎにすると、それは簡単に砕け散った。
「なっ……!」
驚愕の表情を浮かべる女魔性にニヤリとした笑みを浮かべ、アランはもう一歩前へ踏み出──しかけたところで、新たに出現した氷壁に行く手を遮られ、思わず舌打ちした。
「次から次へと……無駄なんだよ!」
滅茶苦茶に剣を振り回し、アランは出現する端から氷壁を砕き、壊して行く。
だが、砕いても砕いてもすぐさま次の氷壁が形成されるため、一向に状況は変わらない。
「隊長……」
俺はどうしても。
「隊長……」
あんたに一太刀浴びせてやらないと気が済まない。
これまでずっと隊に貢献してきた自分を酷い言葉で詰り、アッサリ切り捨てようとした最低な奴に、鉄槌を喰らわせてやりたい。なのにこんな脆弱な氷壁に遮られて、それが敵わないなど到底認めることはできなかった。
「どうして届かないんだよっ!」
激しい怒りと苛立ち、焦燥によってアランが大きく剣を頭上に振り上げた瞬間──声が、聞こえた。
『ならば、我が手を貸してやろう』
それは、利き腕を失くし、騎士団からの除隊を命じられ、絶望に打ちひしがれていたアランを救い上げてくれた、恩人ともいえる者の声だった。
失くしたアランの腕を見つけ、元通りにしてくれた、奇跡の使い手の声。
その声が耳に届くと同時に、これで勝った! とアランは思った。
この声の主が力を貸してくれるのであれば、自分は無敵だ。これでミルドを叩き潰せる。
だからアランは──。
「頼む! 手を貸してくれ!」
迷うことなく、そう言った。
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