レンタルおかんと私

関塚衣旅葉

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なぁ、聞いて。

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 あのなぁって言って私は話し始める。
オカンは静かに聞いてくれる。
座椅子に座ってみかん向いてるオカンに向かって、私はゴロゴロしながら語り始める。
ここ最近はオカンを呼ばなかった。
生理が来てもオカンは呼ばずに彼氏と過ごしてたから。
彼氏がオカンみたいなので。
オカンのようにご飯作ってくれるし話聞いてくれるし。
洗濯物を干してくれるし。
でもオカンはオカンのいい所があるから、こうしてまた呼んでるんだけどさ。
でも、彼氏がいるとお腹撫でてくれるから痛いの弱まるの。
他にもね、一緒にいると時間がすぐ流れるから痛い時間もすぐ終わるの。
それに今回は近所でイベントがあったから気合いでお出かけしたりしててね。
私、今までで1番楽しいのよ。
オカンには色々話してたけど、今が1番。
「あんた、それ毎回言ってるわよ」
まあ、そうなんだけどね。
でも今回は本当に今がいちばん楽しいし、幸せ。
「具体的にどう楽しいのよ」
うーんとね、小学生女子みたいな気持ちで過ごしてもOKだし、年相応の気持ちで生きててもOK。
寛容な人だと思う。
それからね、これまでと本当に違うところは。
「なによ、勿体ぶらないでよ」
へへへ。
足は臭いけど、脇汗は悶絶ものだけど、この時期の背中はびちゃびちゃで冷たいけど、手を離したくないなって。
どこか繋がってないとはぐれちゃうかもって。
今までははぐれたら、まあ、仕方ないとか思ってた。
たぶんね、相手も私を見てるし私も相手を見てるなって感じ。
本当に両思い。
私を見てなんて言わなくてもちゃんと見ててくれてて。
未来も見てくれてる気がするの。
高校生の時に好きになった人たちはその瞬間しか見えてなさそうだった。
私も見てなかったかもだけど、相手も見てないって感じ。
お互いに違うところ見てるって感じかな。
つまり、オカンに話すと楽になるし、彼氏とも話してて楽だから、オカンも彼氏も好きだなってことさ。
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