小さな幸せ

自室

 一人暮らしをしているこの部屋には、何人もの人が訪れた。
仲のいい友達や、その当時恋人関係だった人とか。
でも、ついさっきまで、とっても大切な人がいたはずのこの部屋は、とても静かで、洗濯機の音だけが聞こえてくる。
本気で好きで、この人と結婚するんだって思ってた人を、自分の言葉で失いました。
彼はたくさんの素敵な言葉をくれる、すごい人でした。
僕はそんな彼に救われたんです。
嘘か本当か分からないけど、彼の発した言葉で、救われたのでした。
しかし、私は今、あまり人には言ってませんが、ストレスなのか、分からないけれど、沢山食べてしまったり(空腹でなくても)、唐突な吐き気に襲われたり、わけも分からず泣いたりと、不安定な感じなのです。
でも、不安定だからと言って、外に出ないでいる方が塞ぎ込んでしまうので、彼と付き合っていた期間はかなり外出をしていました。
一緒に行きたいところがあったので。
記憶力は無いので、楽しかったことを忘れないように沢山写真を撮りました。
記憶に蓋をする癖がついてしまったようで、蓋を開けるための鍵とした写真を見るようにしているのですが、上手く蓋が開かなかったり、勝手に蓋が開いてしまう記憶があることが最近わかりました。
それのせいで、お酒を飲んだ時に暴れてしまったり泣いてしまうのです。
でも、私は上手く言葉を紡ぐことが出来ないので、人に伝えられずにいました。
その結果、きっと無理だから、きっと出来ない、そんな気持ちで人と接してしまうことが多くなりました。
頑張りたい気持ちと、ふとした瞬間に思い出す嫌な記憶とのバランスが上手くいかず、壊れかけていたのです。

 だから、そんな時に出会った彼にはとても感謝したのです。
出会えてよかった、好きになってもらえてよかったと。
しかし、付き合ってからというものの、私は関係性を保つため、かなり金遣いが荒くなりました。
年上だから、お金がある振りをしなければ。
そう思ってしまったのです。
そんな事しなくても彼は好きでいてくれるのは分かっていたのに。
でも、お金を使うと、一緒にいられると刷り込まれてる私は、それを辞められなかったのです。


そんなことをしていた私でも、愛してくれた彼を。
私は自分の言葉で二度と会えないようにしてしまったのでした。
これはきっと、最後の幸せだったのです。
彼がいなくなった途端になにかしようとするのは、幸せにしがみつきたいからなのかもしれません。


 もう一度、彼と一緒に過ごせるのなら、彼への気持ちを上手く言葉にできるようになりたいものです。


さあ、頭痛が治るまで、眠りましょう。
いくつもの幸せが破裂する音と共に眠りにつくのです。